就業規則の記載事項を弁護士が解説します

更新日: 2026.08.21
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結論

就業規則の記載事項は①絶対的必要記載事項 ②相対的必要記載事項 ③任意的記載事項の3つに整理されます。絶対的必要記載事項は必ず書かなければならないもので、始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制の就業時転換に関する事項/賃金の決定・計算・支払の方法、締切りと支払の時期、昇給/退職に関する事項(解雇の事由を含む)の3分野です。相対的必要記載事項は、退職金・賞与・安全衛生・表彰と制裁など、制度を設けるなら必ず書かなければならないもの。とくに懲戒処分は就業規則に定めがなければ行えません。常時10人以上を使用する事業場は作成・届出が義務です。

この記事のポイント

  • 記載事項は「絶対的必要記載事項・相対的必要記載事項・任意的記載事項」の3つに整理される
  • 絶対的必要記載事項は、労働時間関係・賃金関係・退職関係(解雇の事由を含む)の3分野
  • 相対的必要記載事項は、制度を設けるのであれば必ず記載しなければならない事項
  • 懲戒処分は就業規則に定めがなければ行えない。事由と種類を具体的に列挙する
  • 常時10人以上の労働者を使用する事業場は、作成と労働基準監督署への届出が義務
  • 作成・変更の際は過半数代表者等の意見書を添付し、周知して初めて効力が生じる
「就業規則にはどのような内容を記載すれば良いのでしょうか?」 といった疑問を持つ方が少なくありません。 就業規則の記載事項には必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」、該当する場合に記載しなければならない「相対的必要記載事項」、記載するかどうかは自由な「任意的記載事項」の3つがあります。 それぞれどういった内容が該当するのか把握して、適法な方法で就業規則を作成しましょう。 この記事では就業規則の記載事項を弁護士がわかりやすく解説します。これから就業規則の作成・変更を行う場合にはぜひ参考にしてみてください。
この記事のポイント
  • 就業規則の記載事項は「絶対的必要記載事項」「相対的必要記載事項」「任意的記載事項」の3種類に分かれる
  • 絶対的必要記載事項は法律で必須と定められており、記載漏れがあると就業規則に不備が生じる
  • 相対的必要記載事項は該当する制度を導入する場合にのみ記載義務が生じる
  • 就業規則は労働基準法等の最低基準を下回る内容を定めても、その部分は無効となる

1.絶対的必要記載事項

絶対的必要記載事項とは、必ず就業規則に記載しなければならない事項です。 法律上、絶対的必要記載事項は決められています。もしも絶対的必要記載事項が記載されていないと、その就業規則には法律上の不備が生じます。 就業規則を作成する際には、必ず絶対的必要記載事項を漏れなく盛り込みましょう。 絶対的必要記載事項となっているのは以下の事項です。
  • 始業、終業時刻
  • 休憩時間、休日、休暇
  • 労働者を2組以上に分けて交替して就業させる場合、就業時転換に関する事項
  • 賃金の決定、計算の方法
  • 賃金の支払の方法
  • 賃金の締切り及び支払の時期
  • 昇給に関する事項
  • 退職に関する事項や解雇事由

2.相対的必要記載事項

相対的必要記載事項とは、制度を設ける場合に必ず記載しなければならない事項です。 対象となる制度を導入するなら記載しなければ違法となりますが、対象となる制度がない会社の場合、相対的必要記載事項を書き入れる必要はありません。 相対的必要記載事項とされている事項は以下のとおりです。
  • 退職金制度がある場合は退職金に関する事項
  • 賞与や最低賃金額の定めを置く場合、それらに関する事項
  • 従業員に食費、作業用品その他の負担をさせる場合は、それに関する事項
  • 安全及び衛生に関する定めをする場合、それに関する事項
  • 職業訓練に関する定めをする場合、それに関する事項
  • 災害補償や業務外の傷病扶助に関する定めをする場合、それに関する事項
  • 表彰及び制裁の定めをする場合、その種類及び程度に関する事項
  • その他、事業場の全従業員に適用される定めを置く場合、それらに関する事項
社内に相対的必要記載事項に該当する制度がある場合、雇用契約書や覚書だけではなく、就業規則にも記載しなければならないので注意しましょう。 退職金制度の有無やその支払義務について詳しく知りたい方は「退職金規定がない場合に退職金を支払う必要があるのか?企業側が取るべき対策を弁護士が解説」もあわせてご覧ください。制裁(懲戒)に関する手続きを整備する際には「顛末書と始末書の違いとは?顛末書の目的や注意点を弁護士が解説」も参考になります。
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3.任意的記載事項

任意的記載事項は、就業規則に記載してもしなくても良い事項です。 内容も記載するかどうかも自由なので、会社によって書く内容は大きく異なる可能性があります。 一般的には以下のような内容を記載する例があります。

3-1.服務規律

勤務時間中には業務へ専念すべきこと、セクハラやパワハラ行為の禁止、機密事項の取り扱いなど、職場内での服務規律を定める例があります。

3-2.休職

休職について定める企業も多数あります。たとえば私的な事情による傷病で一定期間仕事を休む際に適用される手続き、復職する際の手続き、復職できない場合の取扱いなどを定めるケースが挙げられます。

3-3.採用

従業員を採用する際の手続きや採用後の提出書類などを定めるケースがあります。

3-4.異動や転勤

異動や転勤、職務内容を変更する際の手続きなどについて定めます。 転勤命令を拒否された場合の対応については「転勤を拒否した社員の対応は?解雇する前に確認しておきべき注意点を弁護士が解説」で詳しく解説しています。

3-5.試用期間に関する規定

本採用前に試用期間を置く場合に記載します。

3-6.身元保証に関する規定

採用時に身元保証人を用意してもらう場合に規定を置くケースがあります。

3-7.知的財産権の帰属に関する規定

従業員が業務の最中に発明したり著作権の認められるものを作成したりした場合の定めです。そういった状況になると、生成された知的財産権の帰属を決めておかないとトラブルになる可能性があります。

3-8.残業(時間外労働)に関する規定

所定の労働時間を超えてはたらいた場合の手当などについても記載しておくことができます。 残業代請求への具体的な対応方法は「残業代請求を受けたときの会社側対応|初動・証拠・反論・解決までの実務フロー」で解説していますので、あわせてご確認ください。

3-9.会社から従業員に損害賠償を求める場合の規定

従業員が会社に迷惑をかけた場合に会社から従業員へ損害賠償請求できることなどを規定します。
種類 記載義務 該当する内容の例
絶対的必要記載事項 必ず記載しなければならない 始業・終業時刻、賃金、退職に関する事項など
相対的必要記載事項 該当する制度がある場合は記載しなければならない 退職金、賞与、安全衛生、表彰・制裁など
任意的記載事項 記載するかどうかは自由 服務規律、休職、採用、異動、残業など

4.法律で定められた最低基準を下回ってはいけない

就業規則を作成する際には注意点があります。それは、就業規則で労働基準法などの法律で定められる基準を下回ってはならないことです。 労働協約で示された内容にも違反できません。 労働基準法で定められた基準を下回る労働条件を就業規則で定めても、下回る部分について無効になってしまいます。 就業規則を作成する際には、法律による規制内容もきちんと理解しておく必要があるといえるでしょう。

就業規則の記載事項に関するよくある質問

Q. 絶対的必要記載事項が抜けている就業規則は無効になりますか?

絶対的必要記載事項の記載漏れがあっても、就業規則自体が直ちに無効になるわけではありませんが、労働基準法違反として是正勧告や罰則の対象となる可能性があります。記載漏れに気付いた場合は速やかに追記・変更しましょう。

Q. 相対的必要記載事項はどの範囲まで記載すればよいですか?

退職金や賞与など、該当する制度を実際に社内で運用している場合は、その制度の内容を具体的に就業規則へ記載する必要があります。制度を設けていない事項については記載義務はありません。

Q. 任意的記載事項を記載しないとどうなりますか?

任意的記載事項は記載しなくても法律上の問題はありません。ただし、服務規律や異動、残業などのルールを明文化しておくことで、トラブル発生時の判断基準が明確になり、労使間の紛争予防につながります。

まとめ

就業規則に記載すべきことは法律で決まっているので、漏れのないように対応しましょう。書き方がわからない場合などには弁護士が就業規則作成のサポートを行います。 難波みなみ法律事務所では中小企業の支援に力を入れていますので、就業規則の作成・変更はお気軽にご相談ください。
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就業規則の記載事項に関するよくある質問(FAQ)

就業規則に必ず書かなければならない事項は何ですか?

絶対的必要記載事項と呼ばれる3分野です。①始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制勤務の就業時転換に関する事項 ②賃金の決定・計算・支払の方法、賃金の締切りと支払の時期、昇給に関する事項 ③退職に関する事項(解雇の事由を含む)。これらを欠くと、届出を受理されないことがあります。

相対的必要記載事項とは何ですか?

その制度を設けるのであれば、必ず記載しなければならない事項です。退職手当、臨時の賃金(賞与)や最低賃金額、労働者の食費・作業用品などの負担、安全衛生、職業訓練、災害補償・業務外の傷病扶助、表彰および制裁、その他事業場の全労働者に適用される事項が該当します。制度を設けないのであれば記載は不要です。

懲戒処分は就業規則がなくてもできますか?

できません。懲戒は、就業規則に懲戒の事由と処分の種類が定められ、それが周知されて初めて行えます。規定のない事由で処分したり、規定にない種類の処分をしたりすれば無効です。「けん責・減給・出勤停止・降格・諭旨解雇・懲戒解雇」といった段階を具体的に定めてください。なお減給には1回の額が平均賃金の1日分の半額を超えず、総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならないという制限があります。

何人から作成義務がありますか?

常時10人以上の労働者を使用する事業場です(労働基準法89条)。この人数は企業単位ではなく事業場単位で数え、パートやアルバイトも含みます。10人未満でも、労働条件を明確にしトラブルを防ぐ観点から作成をおすすめします。

作成したらどんな手続きが必要ですか?

①労働者の過半数で組織する労働組合、それがなければ過半数を代表する者の意見を聴き、意見書を添付 ②所轄労働基準監督署へ届出 ③労働者へ周知——この3つです。周知は、見やすい場所への掲示・備付け、書面の交付、電子データでの提供などによります。周知を欠くと就業規則としての効力が認められません。

ひな形をそのまま使ってもよいですか?

おすすめしません。ひな形は最低限の枠組みにすぎず、自社の実態と合わない規定は、かえって会社を縛ります。たとえば、実際には支給していない手当が書かれている、制裁の事由が自社の業務実態を反映していない、退職金制度がないのに規定だけ残っている、といったケースは実務でよく見られます。労働時間制度・賃金体系・懲戒事由の3点は、必ず自社仕様に作り込んでください。

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