サービス残業の強要はNG!サービス残業で降りかかる会社側の損失

「サービス残業を従業員に強要してしまっているが、どのような事態を招くことになるのだろうか」

「サービス残業はどの会社にもあると考えているが、もしも問題になると、どうなるのだろうか」

と気になりませんか。

結論から申し上げますと、サービス残業の強要は違法行為となる可能性が非常に高いです。訴訟に至った場合、利息を含めて高額な残業代を請求される可能性が高いです。また、従業員が残業過多により過労死に至った場合、安全配慮義務違反に問われる可能性もあります。

今回は、サービス残業の強要に関するリスクについてと、企業側が取れる対策について解説します。

サービス残業の強要は違法となる

サービス残業を社員に強要することは、違法行為となります。

なぜなら、労働基準法に違反するからです。例えば、1日8時間、週40時間以上労働した場合、残業代は1分間単位での支給をすることが求められています。

また、残業には、社員が遠慮をしてしまい、残業代請求をしない、残業を勝手にやっていたというケースも含まれます。しかしながら、これも上司が中止するよう指示していない場合には、黙示的な指示があったと判断される可能性があります。もし残業申請を抑圧するような指示をしていないと主張しても、実際に残業が発生し、労働者が自主的に記録を取り、これが裁判で立証された場合には、残業代を支払う義務が発生するということです。

また、裁判に移行する前に労働基準監督署から是正勧告が発せられるなどした場合にも、書類送検される等のリスクを負うことになります。

サービス残業の強要の形態3つ

サービス残業の強要の形態例として、以下があります。

  • 固定残業代を理由に残業代を支払わない
  • タイムカードを定時に打刻させる
  • 持ち帰り残業させる

それぞれについて解説します。

固定残業代を理由に残業代を支払わない

固定残業代を支払っていることを理由に、実態に即した残業代を支払わないケースがあります。すでに残業代を払っているからこれ以上は支払義務がないという主張をする会社もあります。これは、サービス残業の強要となる可能性があります。

なぜなら、固定残業代を支給していても、みなし残業時間を超えて残業した場合には、残業代を支給する必要があるからです。また、固定残業代を支給しているからといって、労働時間を把握しないことも違法行為となります。労働時間の把握義務は経営者に課せられているからです。

基本的には、正確な残業時間を把握して、残業代を支払う必要性があります。

タイムカードを定時に打刻させる

定時になったら、社員が退勤しないにもかかわらずタイムカードを打刻させるケースがあります。

定時でタイムカードを打刻させて、定時後も当たり前のように仕事をさせる行為は、サービス残業の強要となる可能性があります。会社に有利な残業時間の記録を意図的に作り出している場合には、会社側に否定的な判断が示されることになるでしょう。

持ち帰り残業させる

持ち帰り残業は、労働者にとってサービス残業の強要となるおそれがあります。例えば、定時までに終わらないような仕事量を労働者に押し付ける行為や、家で自主的に仕事に関する勉強をするように指示することです。労働者は、仕事のオンオフを切り替えず、大きなストレスを抱える可能性があります。

サービス残業が横行する理由は

サービス残業が横行する理由には、厳格な解雇規制と終身雇用が原因の一つとなっている可能性が高いです。

日本では原則として正社員を解雇することができません。その理由は、解雇規制が強固であり、ほぼ認められないためです。そのため、会社は定年まで社員を雇用しなければならない代わりに、社員にサービス残業をお願いして、人件費を節約しようとします。

一方、労働者側も定年まで生活の面倒を見てもらえるのだから、権利を主張せずに定年まで無難にやり過ごそうと考えます。その結果、お互いの権利の部分が曖昧な状態になり、サービス残業が広まってしまうのです。

サービス残業の放置による企業側のデメリット

サービス残業の放置による企業側のデメリットは、以下の通りです。

  • 残業代の経済的な負担
  • 長時間労働による労働者の心身の負荷
  • 罰則を受けるリスク
  • 評判の低下

それぞれについて解説します。

残業代の経済的な負担

サービス残業の放置による企業側のデメリットとして、残業代の経済的な負担があります。

なぜなら、支払いを命じられた際の金銭負担が非常に大きいからです。例えば、従業員に残業代未払いで訴訟を起こされて裁判に敗訴した場合、その未払いが悪質と裁判官に判定されると、未払い残業代と同額の付加金の支払いを命じられることになります。800万円の未払い残業代の場合、合計で1600万円の残業代支払いを命じられる可能性があるということです。

さらに、未払残業代には遅延損害金が発生します。会社に在籍中であれば年3%ですが、退職後は年14.6%の遅延損害金が発生します。

長時間労働による労働者の心身の負荷

長時間労働による労働者の心身の負荷は、生産性の大幅な低下のリスクをもたらす可能性があります。

なぜなら、長時間働き続けることによって、ストレスや運動不足、睡眠不足などが原因で健康問題が増える可能性があるからです。

健康問題が発生すると、仕事への集中力が低下し、生産性が減少します。また、法律的な側面からも、長時間労働の結果、社員が精神疾患に罹患することや、過労死や過労自殺することにより、安全配慮義務違反に問われる可能性があります。特に過労死や過労自殺が原因となって起こる裁判では、億単位の支払いを命じられることがあります。

罰則を受けるリスク

サービス残業を放置することにより、罰則を受けるリスクがあります。

その理由は、労働基準法37条によって時間外労働と休日労働には割増賃金の支払いが義務付けられているためです。

労基法に違反すると、懲役6ヶ月以下または30万円以下の罰金が科される可能性があります。刑事罰に関しては、労働基準監督署の指導や是正勧告を繰り返し無視するなど、悪質な場合に課せられる可能性があります。

評判の低下

サービス残業を放置することによるデメリットは、企業の評判が悪くなることです。

なぜなら、サービス残業が横行している企業は、労働環境が過酷であるとの世間の批判を受ける可能性があるからです。労働者の負担が増加し、ワークライフバランスが損なわれます。従業員や関係者のSNSや掲示板を通じた情報の拡散を招き、企業のイメージを悪化させる原因となります。この影響は大きなものであり、最終的には優秀な人材が企業に応募しなくなる可能性があります。

サービス残業に対して企業側が取るべき対策

サービス残業に対して企業側が取るべき対策として、以下の対策があります。

  • 残業を許可制にする
  • 業務効率を改善する
  • 固定残業代を導入する
  • 人員の配置を整理する

それぞれについて解説します。

残業を許可制にする

サービス残業の対策として、残業を許可制にする方法があります。

なぜなら、残業は上司の許可を得て行われるべきだからです。定時になる前に、部下は上司に対して残業申請を行い、上司は必要性を判断します。必要がない場合は、定時になったら帰宅するように指示します。この方法により、残業時間の把握と削減の両方が可能となります。

また、勤怠管理システムを導入すると、残業申請のフローを作る機能が備わっていることもありますので、これを活用する方法もあります。

業務効率を改善する

残業時間を減らすためには、業務効率を改善する方法があります。

例えば、会議の時間を30分までに制限するといったルールを設けることが重要です。特に事務職においては、1時間や2時間の会議を当たり前のように行っている会社も少なくありません。その時間を実務に充てることで、作業時間を増やす方法があります。

また、業務分掌を作成し、人事部門や経営者が各部署の業務をチェックすることも欠かせません。現場の仕事に口を出しにくい場合、業務改善指示の部分は、部課長職に任せても良いでしょう。仕事の優先順位を決めて、定時以降にしなくても良い仕事は翌営業日に回す習慣を会社全体で身につけましょう。

固定残業代を導入する

固定残業代を支給する方法によって、サービス残業をなくすことができます。まず、会社全体の残業時間を集計し、本当に必要な残業時間の分だけを固定残業代として支給します。そして、固定残業代を超える残業時間がある場合は、社員に申請してもらい、残業代を支給します。

また、職種ごとに切り分けて固定残業代を決めて支給する方法も有効です。例えば、営業職は45時間、事務職は20時間、技術職は35時間といった具体的な時間を設定します。各職種に必要な固定残業代を支給し、適正な支払いを行いましょう。

ただし、36協定の上限時間の関係上、45時間以上の固定残業時間の設定は避けることが重要です。繁忙期等の特別な事情がない場合、45時間以上の残業は本来行われるべきではありません。

人員の配置を整理する

人員の配置を整理することによって残業代を削減する方法があります。

例えば、繁忙期には特定の部署に他の部署の社員が応援で入るといった対応が考えられます。定時退社ができている部署の人員を残業が多い職場に配置することも一つの手段です。人事異動として発令する方法もありますが、一時的な職場応援の規定を作り、柔軟に運用できる体制を整えることで、スムーズな動きが期待できます。

また、人事異動で注目すべき点は部署の構成です。例えば、人数が多く見えても課長代理や部長代理といった実務に従事しない従業員が多い部署は人数が多くても実質的に人手不足状態にある可能性が高いです。その場合、一般社員を人事異動でその部署に異動させることを検討しましょう。

残業代の問題は弁護士に相談を

残業代の問題は事前の準備が大事です。

従業員から請求された後の対策は限られており、ある程度の経済的な負担を覚悟しなければなりません。労働者1人だけの請求ではなく複数人からの請求を受けるケースもあり、企業側のダメージは甚大です。

あらかじめ賃金設計も含め弁護士に相談することをおすすめします。当事務所では初回相談30分を無料で実施しています。面談方法は、ご来所、zoom等、お電話による方法でお受けしています。お気軽にご相談ください。対応地域は、難波、大阪市、大阪府全域、奈良県、和歌山県、その他関西エリアとなっています。