アルバイト・パートにも、残業代(割増賃金)は正社員と同じように発生します。「バイトだから」「時給だから」出ない、というのは誤りです。
労働基準法は雇用形態を問わず適用され、1日8時間・週40時間を超えれば1.25倍以上の割増賃金が必要です。さらに残業時間は1分単位が原則で、15分・30分での切り捨ては違法です。どんなときに・いくら発生するのか、1分単位のルール、掛け持ちの考え方までを、企業経営者の視点で弁護士が解説します。
アルバイト・パートに残業代は出ますか?
出ます。労働基準法は雇用形態を問わず適用され、1日8時間・週40時間を超えて働けば、正社員と同じように残業代(割増賃金)が発生します。
いくら払う必要がありますか?
法定労働時間を超える時間外は1.25倍以上、深夜(22〜5時)は1.25倍以上、法定休日は1.35倍以上です。割増率は正社員と同じです。
15分単位で切り捨ててよいですか?
いいえ。残業は1分単位が原則で、日々の15分・30分での切り捨ては違法です。1か月合計の端数調整のみ例外的に許容されます。
掛け持ちのバイトはどうなりますか?
労働時間は事業場が異なっても通算されます(労働基準法38条1項)。合計で8時間・週40時間を超えると割増賃金の問題が生じ得ます。
- 労働基準法32条(法定労働時間=1日8時間・週40時間)
- 労働基準法37条(時間外・休日・深夜労働の割増賃金)
- 労働基準法38条1項(事業場が異なる場合の労働時間の通算)
- 労働基準法24条(賃金の全額払いの原則)/114条(付加金)/119条(罰則)
アルバイト・パートにも残業代は出る(雇用形態は問わない)
労働基準法は、正社員・契約社員・アルバイト・パートといった雇用形態を区別せず適用されます。したがって、アルバイトやパートであっても、法律で定められた労働時間を超えて働けば、正社員と同じように残業代(割増賃金)が発生します。「非正規だから」「時給制だから」という理由で残業代を支払わなくてよい、ということはありません。
どんなときに・いくら出る?(割増賃金の種類と割増率)
アルバイト・パートの残業代(割増賃金)は、次の場合に発生します。割増率は正社員と同じです。
| 種類 | 割増率 | 内容 |
|---|---|---|
| 時間外労働 | 1.25倍以上 | 1日8時間・週40時間(法定労働時間)を超える労働 |
| 月60時間超の時間外 | 1.5倍以上 | 1か月の時間外が60時間を超えた部分(中小企業も2023年4月から適用) |
| 深夜労働 | 1.25倍以上 | 午後10時〜午前5時の労働(時間外と重なれば合算) |
| 法定休日労働 | 1.35倍以上 | 週1日の法定休日の労働 |
残業代はいくら?日給・月給でも「時給」に換算して計算する
アルバイト・パートの残業代は、時給を基礎に計算します。求人で「時給◯円」と示されていればその時給が基礎ですが、「日給制」「月給制」でも残業代は発生し、次のように時給に換算して計算します。
| 賃金の形 | 1時間あたりの賃金(基礎)の出し方 |
|---|---|
| 時給制 | 時給の額がそのまま基礎になる |
| 日給制 | 日給 ÷ 1日の所定労働時間 = 時給換算 |
| 月給制 | 月給 ÷ 1か月の平均所定労働時間(1日の所定労働時間 × 月の所定労働日数)= 時給換算 |
「日給制だから」「決まった日給を払っているから」という理由で残業代を払わないのは誤りです。日給を時給に換算したうえで、法定労働時間を超えた分には割増(1.25倍)を付けて支払う必要があります。
残業代は1分単位が原則(切り捨ては違法)
労働時間は、1分単位で正確に計算するのが原則です。「15分未満は切り捨て」「30分単位で切り捨て」といった、日々の労働時間を会社に都合よく切り捨てる処理は、賃金の全額払いの原則(労働基準法24条)に反し違法です。タイムカードの打刻を分単位で管理していれば、その分をきちんと支払う必要があります。
掛け持ちの場合は労働時間を通算する
アルバイトを掛け持ちしている(複数の勤務先で働いている)場合、労働基準法では、事業場が異なっても労働時間を通算するとされています(労働基準法38条1項)。そのため、複数の勤務先の労働時間を合計して1日8時間・週40時間を超えると、割増賃金の問題が生じ得ます。
自社より後に労働契約を結んだ事業主などが割増賃金の支払義務を負うと整理されるのが一般的で、採用時に他社での勤務状況を確認しておくことがトラブル防止になります。
「残業代が出ない」は違法 ── 会社のリスク
「アルバイトには残業代を出さない」「割増賃金はつけない」といった運用は違法です。残業代の未払いがあると、会社は次のようなリスクを負います。
- 未払いの残業代を、時効にかからない直近3年分までさかのぼって請求される
- 訴訟では、未払額と同額を上限とする付加金を命じられることがある
- 労働基準法違反として労基署の是正勧告を受け、悪質な場合は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金
会社がとるべき対応
アルバイト・パートの残業代トラブルを防ぐには、正社員と同じく次の対応が基本です。
① 労働時間を1分単位で記録・管理する
タイムカード等で労働時間を分単位で正確に把握し、割増賃金を適切に計算して支払います。切り捨て処理はしません。
② 残業の事前申請制で不要な残業を抑える
残業を事前申請・許可制にすることで、不要な残業を抑え、労働時間を適正に管理できます。
③ 就業規則・雇用契約書で扱いを明確化
労働時間や割増賃金の扱いを就業規則・雇用契約書で明確にしておくことが、紛争予防につながります。
よくある質問(FAQ)
アルバイト・パートの残業代対応は弁護士にご相談ください
雇用形態を問わず残業代は発生し、未払いは付加金・罰則のリスクにつながります。労働時間管理・割増計算・就業規則の整備から、実際に残業代を請求されたときの対応まで、企業経営者の立場で弁護士がサポートします。大阪・なんば/心斎橋の難波みなみ法律事務所へ。
※本記事は一般的な解説であり、個別の事案では残業代の要否・計算は具体的な事情により異なります。実際のアルバイト・パートの残業代対応は、監修弁護士(難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝/大阪弁護士会)にご相談ください。

