就業規則の記載事項を弁護士が解説します

「就業規則にはどのような内容を記載すれば良いのでしょうか?」

といった疑問を持つ方が少なくありません。

就業規則の記載事項には必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項」、該当する場合に記載しなければならない「相対的必要記載事項」、記載するかどうかは自由な「任意的記載事項」の3つがあります。

それぞれどういった内容が該当するのか把握して、適法な方法で就業規則を作成しましょう。

この記事では就業規則の記載事項を弁護士がわかりやすく解説します。これから就業規則の作成・変更を行う場合にはぜひ参考にしてみてください。

1.絶対的必要記載事項

絶対的必要記載事項とは、必ず就業規則に記載しなければならない事項です。

法律上、絶対的必要記載事項は決められています。もしも絶対的必要記載事項が記載されていないと、その就業規則には法律上の不備が生じます。

就業規則を作成する際には、必ず絶対的必要記載事項を漏れなく盛り込みましょう。

絶対的必要記載事項となっているのは以下の事項です。

  • 始業、終業時刻
  • 休憩時間、休日、休暇
  • 労働者を2組以上に分けて交替して就業させる場合、就業時転換に関する事項
  • 賃金の決定、計算の方法
  • 賃金の支払の方法
  • 賃金の締切り及び支払の時期
  • 昇給に関する事項
  • 退職に関する事項や解雇事由

2.相対的必要記載事項

相対的必要記載事項とは、制度を設ける場合に必ず記載しなければならない事項です。

対象となる制度を導入するなら記載しなければ違法となりますが、対象となる制度がない会社の場合、相対的必要記載事項を書き入れる必要はありません。

相対的必要記載事項とされている事項は以下のとおりです。

  • 退職金制度がある場合は退職金に関する事項
  • 賞与や最低賃金額の定めを置く場合、それらに関する事項
  • 従業員に食費、作業用品その他の負担をさせる場合は、それに関する事項
  • 安全及び衛生に関する定めをする場合、それに関する事項
  • 職業訓練に関する定めをする場合、それに関する事項
  • 災害補償や業務外の傷病扶助に関する定めをする場合、それに関する事項
  • 表彰及び制裁の定めをする場合、その種類及び程度に関する事項
  • その他、事業場の全従業員に適用される定めを置く場合、それらに関する事項

社内に相対的必要記載事項に該当する制度がある場合、雇用契約書や覚書だけではなく、就業規則にも記載しなければならないので注意しましょう。

スマート顧問

3.任意的記載事項

任意的記載事項は、就業規則に記載してもしなくても良い事項です。

内容も記載するかどうかも自由なので、会社によって書く内容は大きく異なる可能性があります。

一般的には以下のような内容を記載する例があります。

3-1.服務規律

勤務時間中には業務へ専念すべきこと、セクハラやパワハラ行為の禁止、機密事項の取り扱いなど、職場内での服務規律を定める例があります。

3-2.休職

休職について定める企業も多数あります。たとえば私的な事情による傷病で一定期間仕事を休む際に適用される手続き、復職する際の手続き、復職できない場合の取扱いなどを定めるケースが挙げられます。

3-3.採用

従業員を採用する際の手続きや採用後の提出書類などを定めるケースがあります。

3-4.異動や転勤

異動や転勤、職務内容を変更する際の手続きなどについて定めます。

3-5.試用期間に関する規定

本採用前に試用期間を置く場合に記載します。

3-6.身元保証に関する規定

採用時に身元保証人を用意してもらう場合に規定を置くケースがあります。

3-7.知的財産権の帰属に関する規定

従業員が業務の最中に発明したり著作権の認められるものを作成したりした場合の定めです。そういった状況になると、生成された知的財産権の帰属を決めておかないとトラブルになる可能性があります。

3-8.残業(時間外労働)に関する規定

所定の労働時間を超えてはたらいた場合の手当などについても記載しておくことができます。

3-9.会社から従業員に損害賠償を求める場合の規定

従業員が会社に迷惑をかけた場合に会社から従業員へ損害賠償請求できることなどを規定します。

4.法律で定められた最低基準を下回ってはいけない

就業規則を作成する際には注意点があります。それは、就業規則で労働基準法などの法律で定められる基準を下回ってはならないことです。

労働協約で示された内容にも違反できません。

労働基準法で定められた基準を下回る労働条件を就業規則で定めても、下回る部分について無効になってしまいます。

就業規則を作成する際には、法律による規制内容もきちんと理解しておく必要があるといえるでしょう。

まとめ

就業規則に記載すべきことは法律で決まっているので、漏れのないように対応しましょう。書き方がわからない場合などには弁護士が就業規則作成のサポートを行います。

難波みなみ法律事務所では中小企業の支援に力を入れていますので、就業規則の作成・変更はお気軽にご相談ください。