就業規則を変更すべきケースとは?変更の際の注意点も解説

就業規則 変更するべき場合とは

昔に作成した就業規則をずっと利用し続けていると、社内で適切にトラブルを予防するのが難しくなってしまうケースが多々あります。

状況に応じて就業規則の変更を検討しましょう。

この記事ではどういった状況となったら就業規則を変更すべきなのか、弁護士がお伝えします。

長らく就業規則の見直しを行っていない企業の方は是非参考にしてみてください。

就業規則とは?

就業規則とは、会社内のルールを定めた書面です。

労働基準法に沿って、労働時間、賃金、休日等の労働条件に関する事項を規定しています。

常時10人以上の労働者(パート・アルバイトを含む)を使用する場合には、事業所ごとに就業規則を作成し、その事業所の住所地を管轄する労働基準監督署長に届け出なければなりません。

就業規則の変更のポイント

就業規則は、労働者の労働条件を定めたルールであり、労働者との雇用契約の内容になるものです。

しかし、就業規則を一度作成さえすれば、その後は変更することなく、そのまま放置しても良いということではありません。

就業規則を作成した後も、状況が変われば、それに合わせて就業規則を適宜変更しなければなりません。

就業規則を変更するポイント

  • 法改正が行われた
  • 賃金や労働時間を変更するとき
  • 新しい労働時間制を導入するとき
  • 就業規則の形骸化
  • 経営状況が悪化した
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法改正が行われたとき

就業規則は、法改正が行われたタイミングで改定すべきです。

労働関係法令は、頻繁に改正されています。

労働基準法などの労働関係法令が改正されると、現在の就業規則が法改正内容に適合しない状態になってしまうケースも多々あります。

たとえば最近ではパートタイム労働法や育児介護休業法などが改正されています。

そんなときには就業規則を改正法の内容に合わせて改定しなければなりません。

会社経営をする場合、労働関係の法改正内容には常に気を配っておく必要があるでしょう。

なお、労働関係法令の改正は毎年のように行われています。

そのたびに就業規則を変更するのは大変な場合もあるでしょう。

その場合には、大規模な法改正が行われた際などにまとめて対応する方法も検討できます。

主な労働法令の改正

平成20年以降の労働法の主要な改正等は、以下のとおりです。その他にも労働関連法令の改正等は多数存在していますので、各業種に応じて、法改正の動向をチェックしておく必要があります。

平成20年

1か月に60時間を超える時間外労働について割増賃金率を5割以上へ引上げ(中小事業主の事業については当分の間、適用を猶予)

平成25年

有期労働契約から無期労働契約への転換、雇止め法理の法定化、不合理な労働条件の禁止

平成27年

差別的取扱いが禁止されるパートタイム労働者の対象範囲の拡大、パートタイム労働者の待遇と正社員の待遇の相違は、不合理なものであってはならない(短時間労働者の待遇の原則)、パートタイム労働者を雇入時の説明義務

平成30年

時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とし、臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、 単月100時間未満とする、中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%以上)を2023年4月以降適用する。罰則付。

令和2年

同一労働同一賃金(正社員とパート・有期・派遣で働く労働者との間で、不合理な待遇差の禁止、労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備)

令和4年

中小企業に対するパワハラ防止法の適用、出生時育児休業の新設(育児介護休業法)

TIPS! 電子申請の活用

就業規則の変更は、管轄の労働基準監督署宛に変更届、就業規則、意見書及びその他添付書類を提出することで行います。
従業員が10人を超える事業所が複数ある場合には、事業所ごとに届出をしなければなりません(原則)。
ただし、一定の要件を満たす場合には、本社と他の事業場の 就業規則が同じ内容であれば、本社で一括して届出をすることはできます。
しかし、先ほど解説したように、労働法関連の改正は、毎年のように行われます。
そのため、郵送の手間やコストは省くため、就業規則の変更は電子申請を利用することをおすすめします。
当事務所では、事業者様に代わって、電子申請の代行を行っています。

賃金体系や労働時間を変更するとき

社内の賃金体系や始業終業時刻などの労働時間を変更する際には、就業規則を変更しなければなりません。

就業規則を改定し、変更内容を労働基準監督署へ届け出しなければなりません。

ただ、賃金体系や労働時間の変更が従業員の労働条件を不利益に変更する場合が多いため、慎重な対応が必要です。

新しい労働時間制度を導入するとき

在宅ワークや固定残業代(みなし残業代)など、これまでと異なる労働時間制度を導入する場合には就業規則を変更しなければならないケースが多数です。

そのほかにも、変形労働時間制を採用する場合にも、就業規則の変更が必要となります。

就業規則を改定しないと従業員に新しい労働時間制度を適用できない可能性があるので、注意しましょう。

また、これら労働時間制を廃止する場合にも、就業規則の変更は必要となりますので、注意が必要です。

現在の就業規則が形骸化している

創業の古い会社の場合、創業当時に就業規則を作成したまま改定していないと、現状と就業規則が一致しないケースが多々あります。

就業規則は法改正内容や時勢の状況、従業員の価値観などに合ったものにしなければ、価値が半減します。

就業規則と現状との間に隔たりがあると、トラブルにつながる可能性もあります。

長年変更しておらず就業規則が形骸化してしまっている場合には、抜本的な見直しを行うべきです。

経営状況が変化したとき

会社を取り巻く経営状況が変化した場合にも就業規則を変更すべきケースがあります。

たとえば経営状況が悪化し倒産の危機的状況にある場合に、従業員の賃金体系等の労働条件の変更をすることで、組織構造の抜本的に変革させる必要が生じます。

ただし従業員にとって不利益となる変更については、企業が自由にできるわけではありません。

不利益変更をするためには、変更内容を従業員へ周知しなければなりませんし、変更内容は合理的でなければなりません。

たとえば会社側が就業規則を変更する必要性が高く、従業員の受ける不利益性が小さい場合、就業規則を変更する合理性が認められやすいと考えられます。

助成金を申請する場合

助成金を申請する際、就業規則の添付が必須となるケースがよくあります。

その場合、助成制度が適用されるために就業規則を助成金の要件に沿って変更しなければならない可能性があります。

企業が助成金を利用できると、返済が不要なので大きなメリットを得られます。

自社にどのような助成金を適用できるか調べた上で就業規則を必要に応じて変更し、適用できるものを申請すると良いでしょう。

就業規則の提出が必要な助成金

助成金の申請時に就業規則の提出が必要な助成金は以下のものがあります。

就業規則が必要な主な助成金一覧
  • キャリアアップ助成金(正社員化コース)
  • キャリアアップ助成金(諸手当制度共通化コース)
  • キャリアアップ助成金(健康診断制度コース)
  • キャリアアップ助成金(賃金規定等共通化コース)
  • 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)
  • 働き方改革推進支援助成金(職場意識改善特例コース)
  • 働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバール導入コース)
  • 働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)
  • 人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)
  • 両立支援等助成金(子育てパパ支援助成金、出生時両立支援コース)
  • 両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)
  • 両立支援等助成金(育児休業等支援コース)
  • 両立支援等助成金(再雇用者評価処遇コース)

就業規則がない場合の問題

労働基準法では、常時の従業員が10人以上の事業所に対して、就業規則の作成と届出を義務付けています。

逆に言えば、従業員が10人に達しない場合には、就業規則の作成義務はありません。

しかし、10人に達しない場合でも、以下で述べるようなリスクがあることから、就業規則は作成しておくべきでしょう。

懲戒できない

就業規則を作成しておかないと、問題社員を懲戒処分に付すことができません。

会社が従業員に対して懲戒処分を行うためには、懲戒の対象となる非違行為と、これに対応する処分内容(戒告、減給、降格、解雇等)を具体的に定めておく必要があります。

しかし、懲戒の規定を置いた就業規則がなければ、問題行為を起こした従業員を放置することにもなりかねず、適切ではありません。

問題社員を放置することは、他の従業員のモチベーションを低下させるだけでなく、取引先との関係悪化、取引先や従業員からの損害賠償請求を受けるリスクがあります。

適切な労務管理をするためにも就業規則は作成しておきましょう。

就業規則を作成して、問題社員に対する適切な対応を行うべきです。

欠勤時の際の計算方法が不明瞭となる

従業員が欠勤したり、遅刻、早退した場合に、就業規則がなければ、給与の計算方法についてトラブルとなることがあります。

欠勤や遅刻早退したのであれば、その時間に対応する労働を提供していない以上、これに対応する給与も支払う必要はありません(ノーワークノーペイ)。

しかし、このような場合に、どのような計算方法で給与を控除とするべきかは、法令に具体的な定めがありません。

そのため、就業規則において、具体的な欠勤控除の計算方法を明示しておくことが必要となります。

しかし、就業規則がなければ、欠勤控除の計算方法が周知されていないため、従業員と対立してしまうリスクがあります。

ルールが不明瞭となりトラブルを招く

就業規則は、労働条件全般に関する社内ルールです。

就業規則がなければ、これら社内ルールが明確になりません。

そのため、会社側の労働条件に関する認識と労働者側の認識とのズレが生じてしまい、トラブルを招いてしまいます。

就業規則を変更するときの注意点・手続き

就業規則を変更する際には以下の点や流れに注意しましょう。

不利益になる変更は原則禁止

従業員にとって不利益となる就業規則の変更は労働契約法によって原則的に禁止されています。

従業員の同意を得られない場合、一方的な不利益変更はできないと考えましょう。

ただし、労働者全員の合意をとれなくても、合理的な範囲の就業規則の変更であれば認められるケースもあります。

労働契約法第10条

使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。

就業規則の変更に伴う不利益の程度が大きい場合には、変更の必要性が高いことが必要となります。

特に、従業員の給与の減額、退職金の減額や不支給、労働時間の変更といった事項は、従業員の生活に直結する重大な労働条件となります。

そのため、変更の必要性が高いことに加えて、従業員への影響を緩和させる措置を講じることが求められます。

また、従業員に不利益に就業規則を変更するなら事前に理解を得るため、従業員に説明を尽くして協議を行うことが重要となります。

就業規則の変更案の作成

まず、会社に実態に応じて、就業規則の変更案を作成します。

これまで解説したように、従業員の受ける不利益の程度を十分に踏まえながら変更案を練っていきます。

就業規則の変更案の作成には、専門的な知識を要しますので、弁護士や社会保険労務士に相談するようにしましょう。

事業場ごとに変更届を作成

複数の事業所のある企業の場合、就業規則は「事業場ごと」に作成しなければなりません。

変更についても同様の手順となります。

就業規則を変更する場合にはすべての事業所の就業規則を変更し、それぞれ管轄の労働基準監督署へ「変更届」を提出する必要があります。

ただし法改正に対応する場合など、すべての事業場において同内容の就業規則変更を行う際には「本社一括届出制度」を利用できます。

本社一括届出制度を利用すると、各事業所において就業規則を提出しなくても、本社が一括して届出を行えます。

厚生労働所の変更届の様式は、こちら

労働者の意見聴取が必要

就業規則を変更する場合には、労働者側の意見を聴取しなければなりません。

労働者側の意見は、労働者の過半数で組織する労働組合、労働組合がない場合は民主的に選ばれた労働者の過半数を代表する者から聴取する必要があります。

労働者の意見は「意見書」にまとめて労働基準監督署へ提出する必要があります。

所轄労働基準監督署に届出する

就業規則の変更案、変更届、従業員代表者の意見書を準備できれば、所轄の労働監督署をこれら資料を提出します。

届出の方法は2種類あります。
①窓口申請
②電子申請(単一事業場届出か本社一括届出)

電子申請は、郵便や窓口に出向くコストを削減できる点で有用です。

その上、電子申請は、労基署の時間外の時間帯であってもいつでもインターネットを通じて届出ができます。

電子申請には、電子政府の総合窓口 「 e-Gov(イーガブ)」のアカウントが必要となりますので、予めアカウント取得をしておきましょう。

当事務所では、企業に代わって就業規則の電子申請を行っていますので、いつでもご相談ください。

変更内容を社内周知する

就業規則の内容を変更したら、変更後の内容は社内に周知しなければなりません。

周知していない就業規則は無効となります。

事業場に掲示したり書面で配布したりデジタルデータで記録して従業員がアクセスできるようにしたりして、各従業員が就業規則を確認できる状態にしましょう。

弁護士に相談しよう

就業規則が古いままになっている場合、改定が必要なケースが多々あります。

就業規則を作成したまま放置していると様々な不利益が生じかねません。

会社の実態に沿った就業規則の改訂が大切です。

当事務所では、これまで多くの就業規則の作成や変更をお受けしています。

弁護士に依頼するメリット

就業規則の変更を一任できる

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