無断欠勤をする社員の対応の方法と注意点を弁護士が解説します

無断欠勤を続ける社員を何とかしたいと考えるのは当たり前です。

しかし、無断欠勤を続ける理由を確認することなく、懲戒処分とすることは控えるべきです。懲戒処分が無効となる可能性があります。

また、無断欠勤が社員に非があったとしても、いきなり解雇とすると不当解雇となります。

会社としては、無断欠勤を続ける社員に対して、順を追って処分を行い、並行して改善に向けた対応を誠実に行うべきでしょう。

無断欠勤の考えられる理由

社員が無断欠勤をする理由は様々あります。単に勤怠不良で欠勤をする社員もいれば、やむに止まれぬ理由で欠勤している可能性があります。

無断欠勤を続ける理由には以下の事情が想定されます。

無断欠勤の理由

  • 急病・事故による欠勤
  • 精神疾患による欠勤
  • セクハラ・パワハラ・いじめによる欠勤
  • 会社への出勤意欲の低下

急病・事故による欠勤

労働災害以外の事故や急病により欠勤届を出せずに休業している状況であれば、速やかに診断書を提出してもらった上で、私傷病休職を利用して休職するように促しましょう。

精神疾患による欠勤

精神疾患を患い、欠勤の連絡をできずに無断欠勤しているケースは多いです。

この場合、会社から執拗に連絡を入れ続けると、社員の精神的なダメージを深くさせてしまうかもしれません。

タイミングを計って、医師の診断書の提出を求めた上で、休職するように促していきましょう。

ただし、長時間労働やハラスメントが原因で精神疾患を発症させている場合、精神疾患は労働災害となります。

労働災害である以上、休職の対象にはなりません。また、療養するための休業期間とその

後の30日間は解雇することもできません。

セクハラ・パワハラ・いじめによる欠勤

上司や同僚によるセクハラ、パワハラ、いじめを理由に出社できていない可能性もあります。

ハラスメント等の程度にもよりますが、ハラスメントを理由に出社できないのであれば、会社としては、先にハラスメントが行われている状況を改善させなければなりません。

ハラスメントを行っている上司等がいれば、指導や懲戒処分を行なったり、配置転換をするなどして、欠勤する社員が出社できるよう、就労環境の整備に努めます。

会社への出勤意欲の低下

特に病気やハラスメントが理由ではなく、出勤意欲の低下による欠勤の場合、会社は毅然とした対応をするべきです。

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無断欠勤に対する労務担当者の対応方法

無断欠勤をする社員の対応を解説します。

安否確認と状況把握

無断欠勤をしている社員が、どのような理由で欠勤をしているかは分かりません。理由が分からない状態で、労務担当者としては、勝手な予想で欠勤理由を決めつけるのは避けるべきです。

まずは、社員の携帯電話やLINE、メールなどで安否の確認します。

それでも応答がなければ、急病や死亡等の不測の事態もあり得るため、自宅へ様子を伺いに訪問することも必要です。

精神疾患が疑われる場合には、過度な負担にはならないように慎重な対応も必要です。

指導・教育

無断欠勤の理由が、単なる勤怠不良である場合には、会社は社員に対して、厳しく注意を行います。口頭による注意よりも、注意指導の履歴を残すためにも、警告書等の書面を交付し、社員に反省を促します。

さらに、会社が社員に対して指導教育の機会を与えていたことを記録します。改善指導シートや指導票等の書類を利用して、改善に向けた活動の履歴を残します。

懲戒処分の検討

会社による指導・教育の甲斐なく、欠勤を繰り返す場合には、懲戒処分を検討します。

無断欠勤の期間や回数にもよりますが、まずは戒告や譴責といった軽い懲戒処分から行うようにします。

戒告等の懲戒処分をしても、それでもなお無断欠勤が止まない場合には、さらに減給、出勤停止といった厳しい懲戒処分をせざるを得ません。

懲戒処分通知書で通知する

懲戒処分は書面によって通知します。

懲戒処分は口頭で行うこともできます。

事後的に、会社が問題社員に対して、いつ、どのような処分を、どのような理由で行なったかを証明する必要があります。しかし、口頭による通知では、懲戒処分の内容が不明確となりがちです。また、事後的に懲戒処分の内容を証明することも難しくなります。

そこで、懲戒処分を行う場合には、処分の内容に加えて、処分の理由や根拠となる就業規則の根拠規定を記載した通知書を交付します。

無断欠勤者と退職について話し合う

無断欠勤者に対して退職勧奨を行います。

順を追って懲戒処分をしてもなお、欠勤等の勤怠不良が改善されない場合には、解雇を検討するほかありません。

しかし、後述するとおり、解雇は無効となるリスクも高く、会社と従業員の両方に不利益が生じます。

そこで、会社は、問題社員を解雇する前に、退職勧奨をして、退職を促します。

退職勧奨に難色を示すようであれば、社員に有利な退職条件を提示することも検討します。

  • 有給買取
  • 退職時期の調整
  • 退職金の全額支給

退職合意書を作成する

退職勧奨の結果、退職することになれば、退職後の紛争を予防するために退職合意書を作成します。退職合意書には、退職の時期、退職の条件、顧客情報の持出禁止、競業行為の禁止等を盛り込みます。

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無断欠勤と解雇

退職勧奨をしても退職しない場合には、懲戒解雇をすることになります。

解雇の可否と基準の確認

解雇処分は、労働契約を終了させて労働者の立場を一方的に奪う重大な処分です。そのため、解雇処分は非常に厳しいルールに沿って行うわなければなりません。

具体的には、①客観的に見て合理的な理由があること、②解雇処分とすることが社会通念上相当といえることが必要です。

2週間以上の無断欠勤の場合

社員が2週間以上にわたって無断欠勤したとしても、安易に解雇処分とすることは控えるべきです。

たしかに、2週間以上の無断欠勤は、解雇予告手当を支払う必要がない事例とされています(「解雇予告除外認定」に関する通達(昭23.11.11基発1637号))。

しかし、欠勤の原因がハラスメントや長時間労働等であれば、労働災害になりかねません。そのような状況での解雇は制限されます。

そのため、会社としては、無断欠勤の期間のみを重視して、無断欠勤の原因を調査することなく安易に解雇処分とすると、予想に反する不利益を被ります。

2週間という期間は一つの目安とし、欠勤の原因が精神疾患であれば休職を促し、労働災害であれば療養を認めます。単なる就労意欲の低下であれば、欠勤が続けば解雇処分とすることをあらかじめ告知しておくことが求められます。

国・気象衛星センター事件(大阪地判21.5.25)

46日間の無断欠勤をした社員への懲戒解雇した事案

無断欠勤がそれまでの勤務状況・行動と連続性がないことから、上司は無断欠勤がその社員の自由意思であることについて疑いを抱くことが十分可能であったとして、処分取り消しとなりました。

日本ヒューレット・パッカード事件(東京高判平23.1.26)

社員がいじめられたと思い込み40日間も休み、会社は無断欠勤として論旨解雇した事案。

①社員が精神的な不調であったこと、上司に休職制度について尋ねていることから無断欠勤ではない

②休職の利用を促したり、懲戒処分の告知をしていない

③以上を踏まえて解雇は無効

無断欠勤の証拠の収集

解雇処分をする場合、解雇理由があることを客観的な資料から十分に精査する必要があります。

過去の懲戒処分通知書

指導教育シート

業務日報

始末書

勤怠管理表

タイムカード

解雇予告と解雇通知の手順 

会社は社員を解雇する場合、解雇の予定日より30日前に社員に対して解雇することを予告する必要があります。 

ただ、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払うことで、即日解雇することができます。

解雇処分をする場合には、解雇予告通知書または解雇通知書を交付します。口頭による通知は控えるようにします。通知書には、解雇理由、根拠となる就業規則の規定、解雇となる日付を明記します。

解雇予告除外認定

解雇の理由が以下に該当する場合には、解雇予告手当の支払いをせずに即時解雇することができます。

①天災事変その他やむを得ない事由があって事業の継続ができなくなった場合

②従業員に責任があって雇用契約を継続できない場合

2週間以上の無断欠勤は上記②にあたるものとされています(昭23.11.11基発1637号) 。

ただし、①か②に該当したとしても、所轄の労働基準監督署長の認定を受けていなければ、解雇予告か解雇予告手当の支払いが必要となります。

不当解雇のリスク

解雇理由が十分ではない場合や解雇が重過ぎる場合、解雇処分は無効となります。

解雇が無効となれば、社員との雇用契約は解消されずに存続していることになります。

バックペイの負担

会社は、解雇時から解決するまでの給与に相当する金額を支払う必要があります。

労働者は、解雇を受けていなければ、労働契約に沿って仕事をして、その対価として給与をもらっていたはずです。

しかし、会社が一方的な解雇処分を行い、労働者が就労することを拒否しています。これにより、労働者は、会社の責めにより、仕事をして給与をもらう機会を奪われています。

このような場合には、労働者は、たとえ仕事をしていなかったとしても、不当解雇で仕事を奪われている以上、給与をもらう権利を奪われないと考えられています。

この解雇から解決時までに支払うべき給与に相当する金額を「バックペイ」と呼びます。

解決金の支払い

解雇の無効により労働契約は存続しています。そのため、問題社員は労働契約に沿って復職することができてしまいます。

しかし、会社としては、一度解雇をした従業員を復職させることは避けたいと考えるのが通常です。そこで、労働契約を改めて解消して復職させないために、解決金を支払うケースもあります。

解決金は、給与の半年分から1年分に相当する金額で設定されることが多いです。

残業代の請求

解雇処分を契機に、解雇の無効確認だけでなく、残業代等の請求もセットで行われるケースがあります。

かつては残業代の時効は2年でしたが、現在は3年に伸長しています。いずれは5年にまで伸びます。

数年にわたる残業代がかなりの多額に上っていることも珍しくはありません。

不当解雇を防ぐためには

不当解雇は様々な不利益を会社にもたらします。

不当解雇を防ぐためには、早計な解雇処分は厳禁とします。

無断欠勤を続けたとしても、根気強く懲戒処分を行うとともに、改善に向けた努力を続けていくしかありません。解雇無効の紛争になることも見据えながら、あらかじめ会社の主張を裏付ける証拠の準備もしておくことが重要です。

行方不明な無断欠勤社員への対応

無断欠勤を理由に解雇処分をする場合、使用者から労働者に対して、解雇の通知をしなければなりません。

しかし、無断欠勤をする社員とも連絡が付かず、行方不明である場合、解雇通知をしたくてもできません。

公示送達による解雇通知

社員への解雇通知を有効に行うため、簡易裁判所の公示送達を行うことも検討します。

公示送達とは、裁判所の掲示板、官報に意思表示を掲載することで、相手方に意思表示が到達したものとみなす制度です。

裁判例(兵庫県社土木事務所事件-大阪高判平8.11.26)

公示送達手続を行わなかったため、行方不明を理由とする懲戒免職の効力が無効とされました。  

就業規則の改訂

公示送達は、裁判所への申立てを行う必要があり、社員が所在不明であることを調査した報告書の提出も求められるため、煩雑な手続きです。

そこで、就業規則に、『所在不明となれば当然に退職する』、『会社の意思表示は、従業員の届出した住所に送付されれば、意思表示が送達されたものとみなす』などの規定を設けるようにします。

問題社員の対応は弁護士に相談を

無断欠勤を続ける問題社員を放置すると、会社の業務効率を下げるだけでなく、その他の社員の負担を大きくさせます。さらに、負担の増えた社員は、業務に対するモチベーションを低下させ、結果として離職を招きます。

だからといって、無計画に解雇とすることは控えるべきです。

問題社員の対応は弁護士に相談してください。

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