給料の減額を拒否する社員の対処法|給与減額の5つの方法と同意を得る方法

給料減額の話は、労働者の誰しもが避けたいテーマです。

しかし、経営上の避けられない事態に直面した際、どのように社員と向き合うべきか。当然ながら、会社側が一方的に社員の給与を減額させることは原則としてできません。仮に、社員が問題行為を行ったとしても、給与を減額させることはそう簡単ではありません。

この記事では、給料減額を拒否する社員の対処法を詳しく解説します。

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1. 給料の減額は拒否できる

社員は、原則として給料の減額を求められても、これに応じる義務はありません。つまり、社員は、給与の減額を拒否することができます。ただし、給与の減額方法は、社員の同意を得る方法だけでなく、以下で紹介する方法によっても行うことができます。そのため、社員が賃金の減額を拒否していたとしても、社員の意向に関わらず給与の減額をすることは可能です。

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2. 給料を減額できる方法

給料の減額を行う方法は複数存在し、それぞれ法律的な根拠や適用されるケースが異なります。社員の同意を得る場合に限らず、人事評価の見直しや職務内容の変更、就業規則の変更などのケースがあります。

ただ、いずれの方法を取るにしても、減額手続きの前には、社員に対して十分な説明が必要ですし、可能な限り社員の同意を得ておくことが重要です。一体、どのような方法で給料を減額できるのか、ここでは実際の手続きの流れとともに詳しくご紹介していきます。

2.1. 人事評価・個別査定により減額する場合

企業が社員の給料を減額する方法の一つとして、人事評価や個別査定により賃金の減額を行う場合があります。

労働者故人の業績や成果を評価・査定し、その結果を賃金額に反映させる制度を採用している企業も多いと思います。この場合に、会社側が、社員の業績・ノルマの達成度、企業の業績等を踏まえて賃金額を決定できるにしても、無制限に社員の賃金額を減額することができるわけではありません。

人事評価の基準が客観的で合理的であることが必要です。つまり、どのような評価項目がどのような評価基準で査定されるのかが明確に定められており、これが社員に周知されていることが必要です。

また、人事評価基準が正しく適用されていることも必要です。目標管理制度(MBO)の採用や労働者との面談を行うことで労働者の意向を反映するとともに、評価者の教育や評価方法の標準化を行うなど、恣意的主観的な評価を排除するようにすることが重要です。

2.2. 配置転換・職務内容の変更により減額する場合

職務内容と賃金が紐づいている場合、配置転換や職務内容に伴い賃金が減額されることもあります。

配置転換や職務内容の変更は、企業の人事権に基づき行うことができるため、業務上の必要があり、不当な動機や目的がないのであれば、有効と判断されることが多いです。ただし、特定のポストや部署が廃止されたことに伴い、賃金の減額を伴う配置転換をする場合、労働者側の責任の程度は小さいといえるため、賃金の減額やその幅には十分に留意するべきです。

2.3. 就業規則の変更により減額する場合|不利益変更の条件

就業規則の変更を通じて給与の減額を検討する場合、労働契約法に基づく「不利益変更」の範囲内で対応する必要があります。

就業規則の変更による賃金の減額は、労働者から同意を得て行うことが原則となります。ただ、労働契約法10条で定める要件を満たす場合には、例外的に労働者の同意を得ることなく、会社側で一方的に就業規則の変更により賃金を減額させることができます。具体的には、①労働者の受ける不利益の程度②労働条件の変更の必要性③変更後の就業規則の内容の相当性④労働組合等との交渉の状況等を踏まえて、就業規則の変更が合理的といえることが必要です。

特に賃金の減額は労働者にとって死活問題となりますから、減額が必要とされる高度の必要性があることが必要です。また、賃金減額による不利益を軽減させるために、代償措置を講じることも検討するべきです。例えば、長期休暇の増加、労働時間の短縮や臨時休業の付与等が挙げられます。

2.4. 懲戒処分による減額 | 減給の限度額に注意する

懲戒処分としての減給を行う際には、労働基準法におけるルールを守る必要があります。

1回の減給処分については、1日の賃金の半分を超えることはできません。1ヶ月に2回以上の減給処分を行う場合にも、同様の限度額となりますが、1か月の給与の10%を超えることはできません。

さらに、減給の対象となる問題行為、処分の基準、手続きなどを就業規則で明確に定めておく必要があります。これらのルールを遵守しない減給は無効となる可能性が高く、社員の信頼を失う原因にもなりかねません。

2.5. 労働者から個別に同意をもらい賃金を減額する

労働者から個別の同意を得て、賃金を減額する方法もあります。

社員個々に減給の同意を得る際には、まずはその賃金の減額が正当な理由によることが必要です。企業の経営状況の悪化など、賃金減額を求める事業上の必要性があることを要します。また、減額の金額、理由、期間などを詳細に説明し、社員の理解と協力を求めることが肝心です。社員一人一人と面談を行い、質問に丁寧に答え、疑問点を解消していく姿勢が同意を得るカギとなります。また、個別の同意を得た場合も、その記録として文書に残し、双方で内容に同意した証として保管することが重要です。

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3. 労働者から給与減額の同意を取るための注意点

給与減額の同意を労働者から得るには、慎重な対応が求められます。

事前に十分な説明を行い、労働者の自由な意思による同意を得ることが必要です。また、減額の理由や範囲、期間などを明確にし、同意を強要しない態度をとらなければなりません。

3.1. 労働者の同意を強要しないこと・自由な意思による同意が必要

給料の減額は、労働者の生活に大きな影響を及ぼすため、その同意を得る際には非常に慎重な対応が求められます。

同意を強要するような行為は、トラブルの原因となるばかりか、無効な同意と判断されてしまいます。

したがって、給料減額にあたっては、社員が自由な意思で同意することが前提となります。そのためには、減額の理由や減額する賃金額の根拠を十分に説明し、社員の質問にも丁寧に答えることが必要です。また、社員が納得できるような環境を整え、適切な説明会の場を設けることが求められるでしょう。給料減額のプロセスは、労使間の信頼関係を築く上でも大きな影響を与えますので、時間をかけて丁寧に進める必要があります。

3.2. 同意書を必ず作成すること

給料減額に関して労働者から同意を得た際には、必ず書面による同意書を作成することが重要です。

口頭での合意だけでは、合意内容が不明瞭となり、事後的に争いの原因になりかねません。そのため、交渉の結果を明確にするためにも、合意内容を書面に残すべきです。

同意書には、減額の理由、金額、適用期間、代償措置などの詳細を記載し、双方の署名・押印があることが望ましいでしょう。合意書の作成が将来的にも労使間の権利義務を明確にし、誤解を防ぐ効果もあります。また、労使双方でこの対応をしっかりと取ることで、透明性が高まり、不公平感や不信感を減らすことにも寄与するでしょう。

3.3. 賃金減額を拒否する社員を解雇することはできない

企業が給料減額を進めたいとしても、その同意を得られない労働者を解雇することはできません。その他の懲戒処分をすることもできません。

賃金減額への同意は労働者の権利であり、拒否することもその権利の範囲内です。したがって、同意を拒否する労働者を解雇した場合、不当解雇とみなされる可能性が高く、企業にとって法的なリスクを負うことになるでしょう。

賃金減額が必要だと判断した場合でも、法的な手続きを踏まえ、社員との対話を重ね、合意形成を目指すことが大切です。

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4. 給料減額をする時の注意点

給料の減額は、企業が直面する経済的困難を乗り越えるための一つの選択肢です。しかし、この過程では多くの注意点があります。給料減額をきっかけに法的な問題を引き起こさないよう、一連の手続きを適切に行うことが重要となります。 

4.1. 給料減額の優先順位

企業が経費削減を迫られる状況において、いきなり社員の賃金減額を選択するべきではありません。

まず最初に考えるべきは、組織の上層部である役員報酬の減額です。経済的な苦境にあるにもかかわらず、役員の給料を維持することは、社員の理解を得られず、社員の士気にも影響を与えるでしょう。次に、賞与の減額を検討することが一般的です。その上で、管理職の給与減額を行います。

これらのプロセスを踏んでもなお、会社が苦境から脱することができない場合に社員の賃金減額を検討します。

4.2. 減額の範囲を合理的に限定する

賃金減額を実施する際には、その範囲を合理的に限定することが非常に重要です。

経営危機を脱するために、企業全体で必要な経費削減額を導きます。これを詳細に算出し、各部門ごと、さらには個々の従業員ごとの減額の必要性を検討する必要があります。漠然とした金額を提示するだけでは、社員の理解や協力を得られません。

その上で、従業員一人ひとりに公平を期した減額額を決定し、それを実施するべきです。過度な減額は、従業員間での不公平感を生じさせ、法的な争いの火種にもなりかねません。そのため、減額の範囲は可能な限り合理的なものに留め、必要最小限の減額にすることが求められます。

4.3. 社員に対する説明会を実施する

給料減額の方針が定まった場合、社員への十分な説明を行うことが不可欠です。

従業員向けの説明会を実施し、減額の理由、減額の範囲・金額、減額対象者を選定すること基準、代償措置、今後の企業の見通しについて情報を開示する必要があります。

説明会を通じて、社員が減額の必要性を理解してもらうために、企業としての説明責任を果たすべきです。また、社員からの質問や懸念に対して真摯に応えることで、一枚岩になって困難な状況を乗り越えていくように努めます。説明会の実施は、不明点の解消や不安感の軽減につながるため、給料減額を円滑に進める上で欠かせないステップとなります。

4.4. 代償措置を講じる

給料の減額を実施する場合、会社側は社員の経済的な影響を緩和させるため、何らかの代償措置を講じることがあります。

たとえば、将来的な給料復旧の約束や、賃金以外の待遇改善を提案することが考えられます。例えば、労働時間の短縮、休日の増加、長期休暇の増加などが考えられます。

これにより、社員のモチベーションの維持や離職を防ぎます。重要なのは、減額が一方的な決定にならないよう労使間での十分なコミュニケーションを取ることであり、その上で代償措置を設けることが望ましいでしょう。

5.賃金減額の際は弁護士に相談を

賃金減額は、社員にとって死活問題であり、社員の反発を強く招きます。大量の離職や残業代の請求などの問題が顕在化する可能性もあります。

社員の理解を得られるためには、役員や管理職自身も身を切る姿勢を示すとともに、十分な説明を果たすことが重要です。

賃金減額に際しては、弁護士に相談しながら慎重に進めていきましょう。

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