セクハラの懲戒処分は、行為の重さに応じて懲戒解雇から譴責まで段階的に決まります。
強制わいせつ等の重大行為は懲戒解雇、身体接触や性的発言は出勤停止・減給・譴責が目安です。処分の相当性・事実調査の手順・放置した場合の会社のリスクまで、企業側の弁護士が実務に沿って解説します。
セクハラがあれば必ず懲戒解雇にできますか?
いいえ、行為の重さに応じた処分でなければ無効になります。強制性交・強制わいせつなど悪質な行為は懲戒解雇もあり得ますが、性的な発言のみの場合は譴責や減給が相当です。処分が重すぎると懲戒権の濫用として無効になります(労働契約法15条)。
処分を決める前に会社は何をすべきですか?
就業規則の懲戒規定の確認、事実調査、本人の弁明機会の3つが必須です。就業規則に懲戒事由の定めがなければ懲戒処分はできません。調査で事実を認定し、加害者に弁明の機会を与えないまま処分すると、手続違反で処分が無効になります。
セクハラを放置するとどうなりますか?
会社が使用者責任などで損害賠償を負い、行政指導や企業名公表のリスクもあります。会社は男女雇用機会均等法11条で防止措置義務を負い、放置すれば使用者責任(民法715条)や職場環境配慮義務違反を問われます。是正勧告に従わなければ企業名が公表されることもあります。
- セクハラの処分は行為態様の重さで段階的に決まる(懲戒解雇/諭旨解雇/出勤停止/減給/譴責)
- 会社は男女雇用機会均等法11条でセクハラ防止措置義務を負う
- 処分には就業規則の懲戒規定・事実調査・弁明の機会が必須。手続を欠くと無効
- 重すぎる処分は懲戒権の濫用で無効(労働契約法15条)
- 放置すると使用者責任(民法715条)・損害賠償・人材流出・企業名公表のリスク
- 事実調査は被害者聴取(5W1H)→第三者→加害者→事実認定の順で、二次被害に配慮
セクハラとは?(男女雇用機会均等法上の定義)
セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは、職場で行われる性的な言動により、労働者が労働条件で不利益を受けたり、就業環境が害されることをいいます(男女雇用機会均等法11条)。次の2類型があります。
| 類型 | 内容 |
|---|---|
| 対価型 | 性的言動への拒否・抵抗を理由に、解雇・降格・減給など不利益な扱いをする |
| 環境型 | 性的言動により就業環境が害され、就業に重大な支障が生じる |
行為の重さ別・懲戒処分の目安
セクハラを理由とする懲戒処分は、行為の悪質性・職位・被害の程度・回数や頻度を踏まえて、行為に見合った重さを選ぶ必要があります。目安は次のとおりです。
| 行為態様 | 懲戒処分の目安 |
|---|---|
| 強制性交・強制わいせつ | 懲戒解雇・諭旨解雇(刑事事件化する重大行為) |
| 身体的接触あり(胸・臀部を触る等) | 出勤停止〜諭旨解雇(悪質性・反復性で判断) |
| 身体的接触なし(性的発言等) | 譴責・減給・出勤停止(発言の露骨さ・頻度で判断) |
参考裁判例
水族館の男性社員2名が女性社員に性的発言等のセクハラを繰り返した事案。露骨で卑わいな発言の反復、会社が防止に取り組んでいたこと、加害者が指導すべき立場だったこと、被害者が退職を余儀なくされたこと等を理由に、出勤停止処分は有効と判断されました。
男性社員が女性社員に「腹ぼて」「胸が大きくなった」等と発言した事案。故意の性的嫌がらせとまではいえず違法性は軽微であり、譴責が最も軽い処分であることから、譴責処分は有効と判断されました。
懲戒処分までの流れ(6ステップ)
懲戒処分には就業規則に懲戒事由と種類の定めが必要。定めがなければ懲戒処分はできません。
相談窓口の聴取から調査チームでの事実認定まで。被害申告を鵜呑みにした処分は不当処分になります。
認定した事実に基づき、行為の重さに見合った処分を選びます。過去の同種事案との均衡にも配慮します。
加害者に言い分を述べる機会を与えます。これを欠くと手続違反で処分が無効になり得ます。
処分内容・理由を記した懲戒処分通知書を交付します。
被害者と加害者を引き離すため、必要に応じて配置転換で再発と二次被害を防ぎます。
セクハラの事実調査の進め方
事実調査は懲戒処分の土台です。被害者の申告を鵜呑みにせず、裏付けを取りながら公正に事実を認定することが、処分を有効にする鍵になります。
調査の手順
- 相談窓口で概要を聴取:いつ・どこで・誰に・どのような態様かを時系列で。相談員は被害者と同性が望ましい。
- 調査チームの立ち上げ:重大事案は調査チームを組成。メンバーに必ず女性を入れ、漏えい防止のため最小人数に。
- 被害者からの聴き取り:5W1Hを意識。深刻な精神的苦痛に配慮し、傾聴の姿勢で二次被害を防ぐ。
- 第三者・目撃者からのヒアリング:客観的な裏付けを収集。
- 加害者からのヒアリング:弁明の機会を兼ねて言い分を確認。
- 事実認定:収集した証拠を総合して、処分の前提となる事実を確定。
セクハラを放置するリスク
| リスク | 内容 |
|---|---|
| 防止措置義務違反 | 均等法11条の措置を怠ると、厚労大臣・労働局から報告要求・助言・指導・勧告。是正勧告に従わなければ企業名公表 |
| 損害賠償 | 加害者の行為につき会社が使用者責任(民法715条)、放置につき職場環境配慮義務違反を問われる |
| 人材の流出 | 被害者の退職、職場の士気低下、採用への悪影響 |
セクハラの予防策
- ルール作りと周知徹底:就業規則・ハラスメント防止規程でセクハラを禁止し、懲戒事由として明記・周知する。
- アンケートの実施:定期的な実態調査で早期に兆候を把握する。
- 研修の実施:管理職・従業員への研修で意識を高め、相談窓口を機能させる。
よくある質問
セクハラの処分・調査対応は弁護士にご相談ください
処分量定の適正化、事実調査の設計、懲戒処分通知書の作成、被害者・加害者対応まで、企業側の顧問弁護士がサポートします。大阪・なんば/心斎橋の難波みなみ法律事務所へ。
※本記事は一般的な解説であり、個別の事案の処分の可否・量定は具体的な事情により異なります。実際の対応は、監修弁護士(難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝/大阪弁護士会)にご相談ください。
