未払いの工事代金を回収するためには|契約書がない場合や未払いを防ぐための方法

公開日: 2024.05.10

工事代金の未払いは、多くの業者にとって頭を悩ませる問題です。

しかし、適切な対策と知識を持つことで、この問題を乗り越えられる可能性があります。

請負業者が工事の完了後、工事代金を支払期日までに受け取れないケースが少なくありません。このような事態は、契約書の不備や発注者の資金繰りが原因で起こりがちです。特に契約書が不十分であることや、工事完了後すぐに成果物を引き渡してしまった場合に未払いのリスクは高まります。

本記事では、契約書がない状況を含む様々なケースにおいて、未払いの工事代金を回収する方法、そして未払いを防止する予防策について詳しく解説します。これにより、工事業者が同様の問題に直面した際に有効な手段を講じることができるようになることを目指します。

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工事代金の未払いが発生する理由

工事代金の未払いは建設業界で頻繁に起こる問題であり、その背景には様々な理由があります。

未払いが発生する理由を理解し、未払いが発生しないように事前の予防策を講じることが大切です。

請負契約書に不備がある

請負契約書に不備があると、工事代金の未払いといったトラブルが生じやすくなります。

その主な理由は、請負契約書に建設工事の内容、工事代金、支払条件、納期などが具体的に明記されていない場合には、後に発注者と受注者の間で解釈の違いが生じ、これが争いの種となるからです。

また、そもそも請負契約書すら作成していない場合もあり、工事代金の不払いの要因となります。

したがって、未払いのリスクを軽減するためには、請負契約書を作成した上で、契約内容を明確に記載し、両者の合意のもとで署名することが重要です。これにより、工事に関する期待や義務を明確化し、後々のトラブルを防ぐことができます。

発注者の資金繰りが悪化

発注者の資金繰りが悪化すると、工事代金の未払いが発生するリスクが高まります。

これは、資金繰りが悪化した発注者が一時的あるいは長期的に支払い能力を失うことで、請け負っている工事やサービスの代金を支払えなくなる可能性があるためです。

建物や目的物を先に引き渡した

建物や目的物を先に引き渡し、工事代金の請求を後から行う方法は、業者にとってリスクを伴います。

その最大の理由は、未払いが発生した場合、すでに手放した建物や成果物を担保にすることが不可能となり、未払い分の回収が困難になるためです。 

このようなリスクを避けるためにも、成果物の引き渡しと工事代金の支払いを同時履行にするなどして、工事代金の支払いを確実に受け取るための対策を講じることが必要です。

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契約書がなくても工事代金を請求できる

契約書がなくても契約は成立し、契約に基づき工事代金を請求することは可能です。

ただ、契約書がない場合に工事代金を請求する上で注意点がいくつかありますので解説します。

口頭でも契約は成立する

契約当事者の合意があれば、文書でなくても口約束でも契約は成立します。つまり、契約書がなくても、双方の合意が存在すれば、有効な契約として成立することになります。

契約書がないと契約内容の証明が難しくなる

ただ、現実的な問題として、契約書がない場合には、契約内容が不明瞭となり、契約内容の証明が難しくなり、結果として未払いの工事代金の回収に困難を伴うことがあります。

契約書は双方の合意内容を明確化し、将来的に紛争が発生した場合において、契約内容を証明する重要な役割を果たす証拠となります。

しかし、このような契約書がないと、契約書に代わる客観的な証拠を十分に揃えて、当事者が合意した契約内容を証明しなければなりません。

特に、工事代金の金額や支払いの条件、工事内容を示す証拠がなければ、契約内容の証明が難しくなるリスクがあります。

契約書なくても請負契約を証明する方法

契約書がない場合でも、請負契約が成立していることを証明する方法はいくつか存在します。証拠としては、発注書や請書、工程表、メールや書面でのやり取りなどが有効です。これらの文書や記録は、契約の成立や約束された内容を示すものであり、整理して提出することで契約の存在とその内容を説明することが可能です。

  • 発注書・請書
  • 見積書
  • 工程表
  • メール等のやり取り
  • 請求書
  • 工事代金の支払履歴
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未払いの工事代金を回収する方法

工事代金の未払いは建設業でしばしば直面する問題ですが、適切な対応策を講じることで回収することが可能です。

工事代金の未払い問題を解決するためには、まずは穏便な方法から試み、次に法的手段を検討することが一般的なアプローチです。

電話やメールで催促

工事代金の未払いが発生した際には、まず電話やメールを通じて催促することが一般的です。

電話やメール等による催促をすることで、相手に未払いの事実を伝え、迅速な解決を促します。例えば、催促の文に加えて請求書のコピーをメールで送り、特定の期日までに支払いを促すことができます。また、電話によるコミュニケーションでは、未払いの理由を確認し、支払い計画について話し合うことも有益です。このように、直接話をすることは、双方にとって問題を明らかにし速やかな解決に繋がります。

内容証明郵便を送る

工事代金の未払いに対して行動を起こす際に、内容証明郵便を送付することは、非常に有効な手段の一つです。

この方法を選ぶ最大の理由は、送付した日時と内容が正確に記録されることにあります。つまり、もし将来、裁判手続に発展したとしても、この内容証明郵便を用いることで、相手方に対して未払い金の回収を求めて適切な行動をした証拠として提出できるのです。

また、内容証明郵便を送ることにより、相手方に対して、こちらの本気度を伝えることでプレッシャーを与えて、スムーズに交渉を進めることが可能になる場合があります。

支払督促を行う

支払督促は、未払いとなっている工事代金を回収するために利用できる裁判手続の一つです。

支払督促とは、債権者が簡易裁判所に対して申立てをすることで、裁判所書記官が債務者に対して、債権の支払いをするように命令を出す制度です。

支払督促は、債務者の言い分を聞いたり、証拠調べをせずに、債権者の申立てを形式的に審査するだけで行われるため、非常に手続きが簡便です。

ただ、支払督促が債務者に送達された後2週間以内に債務者から異議申立てが出された場合には、通常訴訟に手続が移行します。

支払督促から2週間以内に債務者から異議申立てが出されない場合には、その30日以内に仮執行宣言の申立てをすることで、差押え等の強制執行をすることが出来るようになります。

訴訟提起する

工事代金の支払いを催促しても、施主や元請業者が支払いに応じない場合の最終手段として、訴訟提起があります。

さまざまな手段を講じても解決しない場合、契約の履行を法的に求めなければならない場合があります。訴訟手続は、契約の履行を求める最も確実な方法の一つです。

ただし、訴訟手続で未払いの工事代金の請求が認められるためには、契約の成立だけでなく、工事代金を請求する十分な理由があることを証明しなければなりません。

また、事案にもよりますが、訴訟手続は1年以上の期間を要するのが通常です。さらに、弁護士費用などの経済的な負担に加えて、書面の確認や打ち合わせといった様々な負担も生じます。

仮差押えをしておく

未払いの工事代金を確実に回収するため、相手方の財産を仮差押えしておくことも重要です。

仮差押えとは、債権者の金銭債権の強制執行を確実に行うために、債務者の財産を凍結させる保全手続です。

仮差押えが認められるためには、勝訴判決が出る前に保全をしておかなければ、財産の処分や隠ぺいの危険があることを説明できなければなりません。

また、仮差押えをするためには、請求額や対象財産の種類に応じた担保を供託しなければなりません。

差押えをする

差押えは、債務者の財産から強制的に債権の回収をする方法です。 

差押えをするためには、確定判決、裁判上の和解、公正証書等の債務名義が必要となります。 

差押えの対象は、預貯金、不動産などが挙げられます。

預金の差し押さえ

まず、未払いの工事代金を回収するために、注文者の預貯金の口座を差し押さえることが多いです。

預貯金を差押えるためには、金融機関と支店名の特定が必要となります。ゆうちょ銀行については、支店名の特定は必要となりません。

不動産の競売

債務者が不動産を所有している場合には、その不動産を差押えをする方法があります。

競売の申立ての後、差押えが行われ、入札などによる売却をすることで現金化し、債権者に配当されます。

ただ、債務者が無担保の不動産を保有していることは珍しく、なかなか不動産の競売による回収は難しいことが多いでしょう。

立替払い制度(特定建設業者)下請業者が、倒産等により労働者に対する賃金を支払わない場合、特定建設業者である元請業者が下請業者の労働者に立替払いをするように国土交通大臣または都道府県知事が勧告する制度です。
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工事代金の請求期間には時効がある

工事代金の未払いは一刻も早い対応が求められますが、工事代金には時効の制約があります。

時効期間を過ぎてしまうと、工事代金を請求する権利を失ってしまう可能性があります。

そのため、代金未払いに気付いた時点で適切な法的措置を講じることが重要です。

工事代金の時効期間

工事代金の債権は、5年の時効期間となります。

民法によると、工事代金も含めた金銭債権の時効期間は5年間とされています。

民法の改正前であれば、工事代金の時効期間は3年の短期消滅時効に服していました。しかし、2020年4月の民法改正に伴い、工事代金を含め債権全般の時効期間は、5年に統一されました。

時効の起算点は、工事代金の支払日となるため、支払日から5年が経過すると消滅時効は成立します。

ただ、時効期間が経過すれば当然に債権が消滅するのではなく、債務者が時効の援用をして初めて債権は消滅します。 

時効の進行を止める方法

時効が完成するまでに、時効期間をリセットして債権の回収を確実に行うようにします。

時効期間をリセットさせることを時効の更新といいます。

時効の完成を停止させることを時効の完成猶予といいます。

時効期間が到来するまでに、時効の完成猶予または時効の更新に必要となるプロセスを踏むようにします。

承認とは、債務者が債務の存在を認める言動を言い、時効の更新を生じさせます。

催告とは、債権者が債務者に対して債権の履行を求める行為であり、催告から半年間は時効の完成が猶予されます。

事由時効の完成猶予時効の更新
裁判上の請求支払督促手続開始から終了まで時効の完成が猶予される。権利が確定せずに終了した場合には終了時から6か月は時効の完成猶予確定判決により権利が確定した場合
差押え手続開始から終了まで完成猶予。申立ての取下げの場合には、終了時から6か月は完成猶予終了時
承認承認時
催告催告から6か月間

未払いの工事代金の問題は弁護士に相談を

工事代金が未払いとなっている場合、これを放置するといつの間にか時効が完成してしまっていることもあります。また、時効が完成していないとしても、証拠が散逸してしまい立証活動に支障が生じてしまうリスクもあります。

できるだけ早い時期に催促を行い、速やかに債権回収できるように計画的に進めていくことが肝要です。

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