残業代の時効は何年?起算点・時効の更新(中断)と会社側の注意点を弁護士が解説

更新日: 2026.07.21
, , 残業代問題, 残業代の消滅時効 時効の要件を解説, , 消滅時効の援用をするための手続き

残業代(残業代請求権)の消滅時効は、原則5年、当分の間は3年です(2020年4月1日より前に支払日が到来した分は2年)。時効期間が過ぎれば、その分の残業代は請求できなくなります。ただし、時効は「更新(中断)」や「完成猶予」でリセット・延長されることがあり、会社が請求を受けて未払いを安易に認める(承認する)と、かえって時効がリセットされてしまう点に注意が必要です。本記事では、残業代の時効が何年か、いつから数えるか(起算点)、時効の更新・完成猶予の仕組み、そして会社側の注意点を弁護士が解説します。

結論(この記事の要点)
  • 残業代の時効は原則5年、当分の間3年(2020年4月1日より前に支払日が到来した分は2年)。
  • 時効の起算点(いつから)は各給与の支払日。給与の支払日ごとに、その月の残業代の時効が進む。
  • 時効は「更新(改正前の「中断」)」でリセットされ、「完成猶予」で一時的に止まる。裁判上の請求や、会社による未払いの承認で更新される。
  • 時効期間が過ぎても自動的には消えず、時効の「援用」で確定的に消滅する。
  • 退職後も時効は進むが、退職者から在職中の分をまとめて請求されることも多い。
この記事でわかること
  1. 残業代の時効は何年?(原則5年・当分の間3年)
  2. 時効はいつから数える?(起算点=給与の支払日)
  3. 時効の更新(中断)と完成猶予
  4. 会社が注意すべき「承認」による時効の更新
  5. 時効が過ぎても「援用」が必要
  6. 退職後の残業代請求と時効
  7. よくある質問(FAQ)

残業代の時効は何年?(原則5年・当分の間3年)

残業代は「賃金請求権」の一つで、消滅時効があります。2020年4月1日施行の法改正により、賃金請求権の消滅時効は原則5年に延長されました。ただし、当分の間は経過措置として3年とされています。したがって、実務上は現在、残業代の時効は3年と考えておけば足ります。

残業代(支払日)時効期間
2020年4月1日以降に支払日が到来した分原則5年・当分の間3年
2020年4月1日より前に支払日が到来した分2年
3年
2020年4月の改正で、それまで2年だった時効が実質3年に。将来的に本来の5年へ延びる可能性もあります。会社にとっては請求され得る期間が長くなり、金額も大きくなったことを意味します。

この改正の影響として、労働者側からの残業代請求が増え、認められた場合の金額が旧法より高額になり、複数の従業員から一斉に請求されるといった事態も想定されます。会社としては、3年分の残業代がまとめて請求され得ることを前提に、労働時間の管理と記録を整えておくことが重要です。

時効はいつから数える?(起算点=給与の支払日)

時効の起算点(数え始める日)は、それぞれの給与の支払日です。残業代は毎月の給与に含めて支払うものなので、各月の残業代について、その支払日を基準に時効が進みます。たとえば給料日が毎月25日であれば、その月の残業代は26日から時効が進行し、3年後に時効にかかります。残業代全体が一度に時効になるのではなく、1か月分ずつ順番に時効が進んでいくイメージです。

時効の更新(中断)と完成猶予

時効は、一定の事情があるとリセットされたり、一時的に進行が止まったりします。2020年の民法改正で用語が整理され、以前の「中断」は「更新」、以前の「停止」は「完成猶予」と呼ばれるようになりました。「中断」という言葉が“リセットされて数え直しになる”効果を想起しにくかったことなどが、用語変更の理由です。

更新
旧「中断」
時効期間がリセットされ、ゼロから数え直しになる。
例:裁判上の請求(判決の確定)/会社が未払いを認める「承認
完成猶予
旧「停止」
一定期間、時効の完成が先延ばしになる。
例:内容証明などの「催告」で6か月/裁判上の請求/「協議を行う旨の合意」
事由効果ポイント
裁判上の請求(民法147条)完成猶予→更新訴訟の提起のほか、労働審判の申立ても含む。申立書を裁判所に提出した時点で完成猶予
催告(民法150条)6か月の完成猶予内容証明郵便など。再度の催告では猶予は延びない
協議を行う旨の合意(民法151条)完成猶予改正で新設。当事者が書面等で協議の合意をすると一定期間、完成が猶予される
承認更新(リセット)会社が未払いを認めること。うっかり認めると時効がリセットされる(下記で詳述)

会社が注意すべき「承認」による時効の更新

安易な「承認」は時効をリセットしてしまう
時効の更新事由には、裁判上の請求などのほか、「承認」があります。承認とは、会社が未払いの残業代の存在を認めることです。たとえば、社員から残業代を請求された際に、やり取りの中でうっかり未払いの存在を認めてしまうと、それが「承認」にあたり、時効がリセット(更新)されてしまうおそれがあります。

実務でとくに注意したいのは、請求を受けたときの初動の受け答えです。労働者側が設定してくる回答期限に法的な拘束力はないため、慌てて回答する必要はありません。むしろ、十分な検討をしないまま安易に「支払う」旨の回答をしてしまうと、未払いを承認したものと扱われ、消滅時効を主張できなくなるおそれがあります。まずは請求内容・労働時間の実態・時効を確認し、時効にかかっている分がないかを見極めたうえで対応することが、会社を守るうえで重要です。

実際に残業代を請求されたときの初動・反論の進め方は、残業代請求を受けたときの会社側対応|初動・証拠・反論・解決までの実務フロー残業代請求を受けた会社側の対応と反論ポイント5つで詳しく解説しています。

時効が過ぎても「援用」が必要

注意したいのは、時効期間が過ぎただけでは、残業代の請求権は自動的には消滅しないという点です。時効の効果を確定させるには、「時効の援用」(=時効によって支払義務が消滅したと主張する意思表示)が必要です。会社側としては、時効期間が経過した分について請求を受けた場合、時効を援用することで支払いを免れられます。

退職後の残業代請求と時効

時効は在職中・退職後を問わず進行します。もっとも実務では、退職した元従業員が、在職中の残業代を退職後にまとめて請求してくるケースが多く見られます。この場合でも、時効にかかっていない直近3年分については支払義務が生じ得ます。退職者からの請求に備えるためにも、日頃から労働時間の記録を適切に管理しておくことが重要です。

よくある質問(FAQ)

残業代の時効は何年ですか?
原則5年、当分の間は3年です。2020年4月1日より前に支払日が到来した残業代は2年です。実務上は現在、3年と考えておけば足ります。
時効はいつから数えますか(起算点)?
それぞれの給与の支払日から数えます。各月の残業代について、その支払日を基準に時効が進み、1か月分ずつ順番に時効にかかっていきます。
時効の「更新(中断)」「完成猶予」とは何ですか?
更新(旧・中断)は時効がリセットされてゼロから数え直しになること、完成猶予(旧・停止)は一定期間だけ時効の完成が先延ばしになることです。裁判上の請求や会社の承認で更新され、内容証明による催告で6か月間猶予されます。
請求を受けたとき、会社が気をつけることは?
安易に未払いを認めない(承認しない)ことです。承認は時効の更新事由にあたり、認めてしまうと時効がリセットされるおそれがあります。事実関係と時効を確認したうえで慎重に対応しましょう。
時効期間が過ぎれば、残業代の請求は当然に消えますか?
当然には消えません。時効の効果を確定させるには「時効の援用」が必要です。会社は、時効期間が過ぎた分について時効を援用することで支払いを免れられます。
残業代を請求されました。すぐに回答すべきですか?
労働者側が設定する回答期限に法的な拘束力はないため、慌てて回答する必要はありません。むしろ、検討せずに安易に「支払う」旨を回答すると、未払いを承認したと扱われ時効を主張できなくなるおそれがあります。まず請求内容・労働時間・時効を確認してから対応しましょう。

初回相談30分無料/電話・LINE・ウェブで相談可能

残業代を請求された・時効の判断に迷う、という場合は

時効の起算点や援用の可否の見極めから、請求への対応まで、企業経営者の立場で弁護士がサポートします。

残業代の時効は原則5年・当分の間3年で、給与の支払日ごとに進行します。時効期間が過ぎても援用が必要で、逆に安易な承認で時効がリセットされることもあります。残業代を請求された、時効の判断に迷う、という場合は、早めに弁護士へご相談ください。当事務所では初回相談30分無料でお受けしています。

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