無断欠勤や当日欠勤を繰り返す社員を「何とかしたい」「辞めさせたい」と考えるのは当然です。しかし、無断欠勤の理由を確認せずに懲戒処分や解雇をすると、不当解雇として無効になるリスクがあります。
無断欠勤の背景には、急病・事故だけでなく、精神疾患やハラスメント、長時間労働が隠れていることもあります。会社としては、順を追って対応を行い、並行して改善に向けた働きかけを誠実に行うことが大切です。
本記事では、無断欠勤・当日欠勤への正しい対応の流れ、解雇できる条件(何日で?)、予防策、そして督促状・内容証明の文例まで、企業側の顧問弁護士の視点で解説します。
無断欠勤を理由に解雇するには、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要です労契法16条。実務上、2週間以上の正当な理由のない無断欠勤が一つの目安とされますが(解雇予告除外認定の通達)、日数だけで機械的に判断はできません。まず安否確認と背景(精神疾患・ハラスメント等)の調査を行い、注意・指導と段階的な懲戒を尽くしたうえで、はじめて解雇を検討します。いきなりの解雇は不当解雇になりやすい点に注意してください。
この記事のポイント
- 無断欠勤の理由を確認せずに懲戒・解雇をすると、不当解雇として無効になるリスクがある
- 背景には急病・精神疾患・ハラスメント・長時間労働が隠れていることがあり、労災・安全配慮に注意
- 解雇は最後の手段。安否確認 → 事実確認 → 指導 → 段階的懲戒 → 退職勧奨の順で対応する
- 「2週間以上の無断欠勤」は一つの目安だが、日数だけで機械的に解雇はできない
- 予防には就業規則の整備(連絡ルール・自然退職条項)・緊急連絡先の取得が有効
- 連絡が取れない・行方不明のケースは対応が異なる(本文で別記事へご案内)
無断欠勤への対応で最初に行うべきは、安否確認と理由の把握です。理由を確認しないまま懲戒処分をすると、後で「背景に病気やハラスメントがあった」と判明し、処分が無効になることがあります。無断欠勤の背景には、次のようなものが考えられます。
無断欠勤の主な背景
- 急病・事故(連絡したくてもできない状況)
- 精神疾患・メンタル不調(うつ等で連絡・出社が難しい)
- セクハラ・パワハラ・いじめ(職場が原因で出社できない)
- 長時間労働による心身の不調
精神疾患やハラスメント、長時間労働が背景にある場合、無断欠勤の原因が労働災害にあたる可能性があります。原因を調査せず安易に懲戒・解雇すると、会社が思わぬ不利益を負います。まずは休職の検討や職場環境の改善が求められる場合があります。
そもそも「無断欠勤」とは?(届出があっても含まれることがある)
懲戒事由としての「無断欠勤」は、単に届出のない欠勤だけを指すとは限りません。裁判例は、届出があっても正当な理由のない欠勤は「無断欠勤」に含まれるとしています(炭研精工事件・最判平3.9.19、福岡高判昭55.4.15 など)。逆に、正当な理由のある欠勤で届出をしていない場合でも、届出ができないやむを得ない事情があるときや、会社が届出は不要と思わせる言動をしていたようなときは、無断欠勤に当たらないと考えられます。
弁護士からのワンポイント
解釈で争わないために、就業規則には「無断欠勤(正当な理由のない欠勤を含む)」のように定義を明確化しておくのがおすすめです。「無断欠勤が〇日以上に及んだとき」を懲戒事由とする場合も、この定義を添えておくと運用が安定します。
弁護士からのワンポイント
本人と連絡が取れない・行方不明のケースは、安否確認や自宅訪問、緊急連絡先・警察への対応など進め方が特有です。詳しくは 「無断欠勤で連絡が取れない社員への対応 完全ガイド」をご覧ください。本記事は主に、連絡は取れるが無断欠勤・当日欠勤を繰り返す社員への対応を解説します。
無断欠勤を続ける社員に対しては、順を追って対応することが重要です。いきなり解雇するのではなく、次の流れで進めます。
無断欠勤への対応ステップ
- 安否確認と状況把握(電話・メール・緊急連絡先への連絡。理由・背景の確認)
- 事実の記録化(欠勤日・連絡の有無・内容をタイムカード等で記録)
- 指導・教育(口頭注意 → 警告書などの書面で反省を促し、記録を残す)
- 改善しない場合の段階的な懲戒処分(戒告・譴責 → 減給 → 出勤停止)
- 懲戒処分通知書で通知する(処分理由・就業規則の根拠条項を記載)
- 退職勧奨(合意退職の打診。有給消化・退職時期などの条件提示も検討)
- 応じない場合に、はじめて解雇を検討
懲戒処分をする際は、本人に弁明の機会を与えること、処分は書面(懲戒処分通知書)で通知することが原則です。口頭では、いつ・どのような理由で処分したかを後から証明しにくくなります。
懲戒処分の種類(軽い順)と有効要件
懲戒処分には軽いものから重いものまで段階があります。無断欠勤への対応も、原則として軽い処分から段階的に行い、いきなり最も重い懲戒解雇とするのは避けます。
懲戒処分の種類(軽い → 重い)
- 戒告・けん責(注意し、始末書等で反省を求める)
- 減給(賃金の一部を差し引く。金額に法律上の上限あり)
- 出勤停止(一定期間の就労を禁止し、その間は無給)
- 降格(役職・等級を引き下げる)
- 諭旨解雇・懲戒解雇(最も重い処分。慎重な検討が必要)
懲戒処分が有効となるための主な要件
- 就業規則に懲戒の種類と事由が定められ、周知されていること
- 問題行為が懲戒事由に該当すること
- 処分が行為の内容に照らして重すぎない(相当性)こと
- 弁明の機会を与えるなど適正な手続を踏むこと
- 同じ行為を二重に処分しない/過去にさかのぼって処分しない/他の社員と不公平に扱わない
減給には法律上の上限があります。1回の減給額は平均賃金1日分の半額を超えられず、複数回でも一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えられません労基法91条。上限を超える減給は違法です。
どの処分を選ぶ?(懲戒処分の考慮要素)
遅刻・無断欠勤にどの懲戒処分が妥当かは、次の要素を総合して判断します。
処分の重さを判断する考慮要素
- 遅刻・無断欠勤に対する注意・指導の有無と、それに対する労働者の対応・その後の勤怠状況
- 欠勤による業務上の支障の有無・具体的な内容
- 会社による勤怠管理の状況
- 遅刻・無断欠勤の頻度・期間
会社が適切な勤怠管理を行っていないのに、遅刻・無断欠勤に対して厳しい処分をすると、処分が無効とされる可能性があります。日頃の勤怠管理と注意・指導の記録が前提です。
弁護士からのワンポイント
裁判例では、過去にけん責処分をして改善の機会を与えたにもかかわらず、その後も遅刻・無断欠勤を繰り返した(例:半年間で遅刻24回・無断欠勤12回)事案で、懲戒解雇が妥当と判断されたものもあります。逆にいえば、「注意・軽い処分 → 改善機会 → それでも改善なし」という積み上げが、重い処分を有効にする鍵です。
退職勧奨をしても退職しない場合、最終手段として懲戒解雇・普通解雇を検討します。ただし解雇は労働者の立場を一方的に奪う重大な処分であり、①客観的に合理的な理由と②社会通念上の相当性が必要です労契法16条。
「2週間以上」は一つの目安(日数だけでは決まらない)
実務では、2週間以上にわたる正当な理由のない無断欠勤が、解雇を検討できる一つの目安とされています(解雇予告手当を支払わずに解雇できる「解雇予告除外認定」に関する通達・昭23.11.11基発1637号)。
ただし、これは日数さえ満たせば自由に解雇できるという意味ではありません。欠勤の原因がハラスメントや長時間労働、精神疾患にある場合、労働災害となりかねず、原因を調査せずに欠勤日数だけで解雇すると無効となり得ます。精神疾患が疑われれば休職を促し、労災であれば療養を認めるなど、原因に応じた対応が先です。
参考裁判例(無断欠勤を理由とする解雇)
国・気象衛星センター事件(大阪地判平21.5.25)/解雇無効
- 46日間の無断欠勤をした社員を懲戒解雇した事案。無断欠勤がそれまでの勤務状況・行動と連続性がないことから、上司はその無断欠勤が本人の自由意思によるものか疑いを抱くことが十分可能だったとして、処分は取り消されました(背景の確認を怠った点が問題とされた)。
日本ヒューレット・パッカード事件(東京高判平23.1.26)/解雇無効
- 社員がいじめられたと思い込み約40日間休み、会社が無断欠勤として諭旨解雇した事案。①社員は精神的な不調で、上司に休職制度を尋ねていたことから「無断欠勤」とはいえない、②会社は休職の利用を促したり懲戒処分を告知していない——として、解雇は無効とされました。
無断欠勤の「証拠」を残しておく
解雇する場合、解雇理由があることを客観的な資料から十分に精査する必要があります。日頃から次のような記録を残しておきましょう。
- 過去の懲戒処分通知書/指導教育シート
- 業務日報/始末書
- 勤怠管理表/タイムカード
- 本人への連絡履歴(電話・メール・書面)
解雇する場合は、原則30日前の解雇予告(または解雇予告手当)が必要で、解雇通知書には解雇理由・就業規則の根拠条項・解雇日を明記します労基法20条。
「当日欠勤(当欠)が多い」「欠勤を繰り返す」社員への対応も、基本は同じです。1回の当日欠勤で解雇はできませんが、頻度・連絡の有無・改善指導の経過を積み重ねることで、対応の正当性が高まります。
○対応が正当と認められやすい
- 欠勤の回数・日付・連絡の有無を記録している
- 書面での注意・指導を重ね、改善機会を与えた
- 段階的な懲戒を経ている
- 就業規則の欠勤・懲戒の規定に沿っている
×不当と判断されやすい
- 1回の当日欠勤だけで解雇・重い処分
- 体調不良・家庭の事情などやむを得ない理由を確認していない
- 注意・指導をせずにいきなり解雇
- 記録がなく、口頭注意のみ
当日欠勤が多い社員には、面談で事情(体調・通院・家庭)を確認し、必要なら通院・休職を促す一方、正当な理由のない欠勤には注意指導を書面で残します。「欠勤が続く」「勤怠不良」の段階から記録を積み上げることが、後の対応の土台になります。
無断欠勤トラブルは、日頃の備えで対応のしやすさが大きく変わります。次の予防策を整えておきましょう。
整えておきたい予防策
- 就業規則の整備:欠勤の連絡方法・無断欠勤の懲戒事由・解雇事由を明確に定める
- 自然退職(みなし退職)の規定:「正当な理由なく無断欠勤が〇日以上続き、連絡が取れない場合は退職とみなす」等の条項を設ける
- 緊急連絡先の取得:本人以外に連絡できる家族等の連絡先を入社時に取得しておく
- 欠勤時の連絡ルール(誰に・いつまでに・どの方法で)を周知する
弁護士からのワンポイント
自然退職(みなし退職)の規定は、解雇によらずに雇用を終了できる点で有効ですが、運用を誤ると無効の争いになります。日数の設定や「連絡が取れない」の要件、実際の連絡の尽くし方が重要です。規定の新設・見直しは弁護士にご相談ください。
無断欠勤が続く社員には、まず出勤を促す書面を送ります。後日の証明のため、内容証明郵便で送付し、控えを保管しておくのが確実です。
出勤督促書
〇〇〇〇 殿
令和〇年〇月〇日
〇〇株式会社 代表取締役 〇〇〇〇 ㊞
貴殿は、令和〇年〇月〇日以降、正当な理由なく無断欠勤を続けており、当社からの連絡にも応じていません。1
つきましては、本書面到達後〇日以内(令和〇年〇月〇日まで)に出勤するか、欠勤の理由を当社人事部までご連絡ください。2
期日までに出勤も連絡もない場合は、就業規則第〇条に基づき、懲戒処分(解雇を含む)または退職の手続きを検討せざるを得ませんので、申し添えます。3
以 上
十分な理由や手続きを欠いた解雇は、通常解雇と同様に不当解雇と判断され無効になり得ます。無効となれば、解雇日から解決までのバックペイ(遡及賃金)や、復職を避けるための解決金など、企業側に大きな負担が生じます。無断欠勤だからと油断せず、順を追った対応と記録を徹底してください。
関連:連絡が取れない・行方不明のケースは「無断欠勤で連絡が取れない社員への対応 完全ガイド」、不当解雇のリスク全般は「不当解雇とは?」、解雇の要件は「アルバイトをクビにできる解雇理由は?」で解説しています。
無断欠勤が1日でもあれば懲戒解雇できますか?
できません。1日の無断欠勤だけでは解雇の合理的な理由を満たさず、無効となる可能性が極めて高いです。まず安否・理由を確認し、繰り返す場合に注意指導から段階的に対応します。
無断欠勤は何日続いたら解雇できますか?
2週間以上の正当な理由のない無断欠勤が一つの目安とされますが、日数だけで機械的に判断はできません。欠勤の原因(精神疾患・ハラスメント・労災など)を調査し、指導・懲戒を尽くしたうえで解雇を検討します。
無断欠勤にはどの懲戒処分が妥当ですか?
注意・指導の有無と労働者の対応、業務上の支障、会社の勤怠管理の状況、頻度・期間を総合して判断します。原則は戒告・けん責などの軽い処分から段階的に行い、改善機会を与えても繰り返す場合に、より重い処分(出勤停止・懲戒解雇など)を検討します。減給には法律上の上限(労基法91条)があります。
無断欠勤を理由に給与を支払わなくてよいですか?
働いていない日の賃金は「ノーワーク・ノーペイ」で発生しませんが、実際に働いた分の賃金は必ず支払う必要があります。欠勤を理由に既往の給料を没収したり、一方的に天引きすることはできません。
無断欠勤を「自然退職」として処理できますか?
就業規則に「無断欠勤が〇日以上続き連絡が取れない場合は退職とみなす」等の規定があれば、解雇によらず自然退職として扱える場合があります。ただし要件・運用を誤ると無効になるため、規定の整備と慎重な運用が必要です。
社員と全く連絡が取れない場合はどうすればよいですか?
安否確認・自宅訪問・緊急連絡先への連絡などを尽くし、それでも連絡が取れない場合は自然退職や公示送達による解雇通知を検討します。進め方が特有なため、別記事「無断欠勤で連絡が取れない社員への対応 完全ガイド」で詳しく解説しています。
無断欠勤・問題社員の対応は弁護士に相談を
無断欠勤への対応は、背景の見極め・懲戒・解雇・自然退職の規定づくりなど判断に迷う点が多く、対応を誤ると不当解雇のリスクがあります。処分の前に、まず弁護士にご相談ください。難波みなみ法律事務所は企業側の顧問弁護士として、初動から解決までサポートします。
初回相談30分無料|お問い合わせはこちら※本記事は一般的な法令・裁判例に基づく解説です。個別事案の判断は必ず弁護士にご相談ください。

