定年後再雇用は、希望者全員の継続雇用が原則です。
65歳までの雇用確保は義務、70歳までの就業確保は努力義務。再雇用時の給与の決め方、高年齢雇用継続給付(2025年4月に最大10%へ縮小)、無期転換の特例、助成金まで、企業側の視点で弁護士が実務に沿って解説します。
定年後再雇用は何歳まで雇う義務がありますか?
65歳までの雇用確保が「義務」、70歳までの就業確保が「努力義務」です。定年を65歳未満とする会社は、①定年の引上げ ②定年の廃止 ③継続雇用制度の導入のいずれかで、希望者を65歳まで雇用しなければなりません(高年齢者雇用安定法9条)。70歳までの就業確保は同法10条の2で努力義務とされています。
再雇用後の給与を定年前より下げることはできますか?
下げること自体は可能です。再雇用は定年でいったん退職し新たに雇用契約を結ぶため、賃金を含む労働条件を改めて設定できます。ただし正社員との間の不合理な待遇差は認められません(パートタイム・有期雇用労働法8条、最高裁 長澤運輸事件・名古屋自動車学校事件)。大幅減額時は高年齢雇用継続給付の活用を検討します。
有期契約で再雇用すると無期転換されてしまいますか?
特例の認定を受ければ無期転換申込権は発生しません。通常は有期契約が通算5年を超えると無期転換申込権が生じますが、定年後の継続雇用者は、第二種計画認定(都道府県労働局長)を受ければ、引き続き雇用される期間について無期転換申込権が生じません。認定を受けていなければ通常どおり無期転換の対象になります。
- 65歳までの雇用確保=義務、70歳までの就業確保=努力義務(高年齢者雇用安定法9条・10条の2)
- 継続雇用は原則希望者全員。就業規則の解雇・退職事由に該当する場合のみ対象から除外できる
- 再雇用は新たな労働契約。労働条件は再設定できるが、不合理な待遇差は不可(パート有期法8条)
- 高年齢雇用継続給付は2025年4月から最大15%→10%に縮小(段階的縮小・将来的に廃止の方向)
- 無期転換の特例には第二種計画認定が必須。未認定なら通常どおり5年で無期転換の対象
- 65歳超雇用推進助成金などで人件費負担を軽減できる(要件は年度ごとに要確認)
定年後再雇用制度とは?(65歳義務+70歳努力義務の2階建て)
高年齢者雇用安定法は、2020年3月に改正され2021年4月1日に施行されました。これにより、従来の「65歳までの雇用確保義務」に加えて、「70歳までの就業確保措置」が努力義務として新設され、雇用確保は下の表のような2階建ての構造になっています。
| 段階 | 年齢 | 性質 | 会社がとる措置 |
|---|---|---|---|
| 雇用確保 | 65歳まで | 義務 | ①定年の引上げ ②定年の廃止 ③継続雇用制度(再雇用・勤務延長)のいずれか(法9条) |
| 就業確保 | 70歳まで | 努力義務 | ①70歳への定年引上げ ②定年廃止 ③70歳までの継続雇用 ④業務委託契約の締結 ⑤社会貢献事業への従事のいずれか(法10条の2) |
再雇用制度と勤務延長制度の違い
継続雇用制度には、大きく再雇用制度と勤務延長制度の2種類があります。労働条件を柔軟に見直せるかどうかが最大の違いです。
| 比較項目 | 再雇用制度 | 勤務延長制度 |
|---|---|---|
| 退職の有無 | 定年でいったん退職し、改めて契約 | 退職させず、そのまま雇用を継続 |
| 労働条件 | 賃金・雇用形態・労働時間などを再設定できる | 従前の労働条件が原則そのまま継続 |
| 雇用形態 | 契約社員・パート等への変更も可 | 正社員のまま延長が基本 |
| 実務での採用 | 多くの企業が採用(柔軟性が高い) | 比較的少数 |
再雇用の契約期間に法令上の制約はありませんが、1年の有期契約を65歳まで更新する形が一般的です。
定年後再雇用の給与はどうなる?
賃金は再設定できるが「不合理な格差」は違法
再雇用制度では新たな労働契約を結ぶため、賃金を含む労働条件を改めて決めることができます。実務でも、定年前より賃金が下がるのが一般的です。ただし、職務内容や責任が定年前と変わらないのに賃金だけ大きく下げるなど、正社員との不合理な待遇差は認められません(パートタイム・有期雇用労働法8条)。定年後再雇用者の待遇をめぐっては、長澤運輸事件(最高裁 令和2年)や名古屋自動車学校事件(最高裁 令和5年)など、手当や基本給の格差の合理性が争われた裁判例があります。
高年齢雇用継続給付(2025年4月に縮小)
再雇用で賃金が下がった労働者を支える国の給付が高年齢雇用継続給付です。60歳到達時点の賃金と比べて、各月の賃金が75%未満に低下した場合に、実際に支払われた賃金の一定割合が支給されます。
あわせて、60歳以降も働きながら老齢厚生年金を受ける場合は在職老齢年金により年金の一部が支給停止となることがあります(支給停止の基準額は毎年改定)。給与・給付金・年金を合わせた手取りで再雇用後の処遇を設計するのが実務のポイントです。
継続雇用の注意点(対象者・無期転換・雇止め)
対象者を会社が自由に選ぶことはできない
継続雇用制度は、原則として希望者全員を対象としなければなりません。会社が「この人は再雇用しない」と自由に選別することはできません。もっとも、就業規則に定める解雇事由・退職事由に該当する場合は、継続雇用の対象から除外できます。この場合は、あらかじめ就業規則にその旨を規定しておくことが必要です。
無期転換ルールと特例(第二種計画認定)
有期労働契約が同一企業で更新され通算5年を超えると、労働者の申込みにより無期契約へ転換されます(労働契約法18条)。会社はこの申込みを拒否できません。ただし、定年後に有期契約で継続雇用される高齢者には特例があり、第二種計画認定(都道府県労働局長の認定)を受ければ、定年後引き続き雇用される期間は無期転換申込権が発生しません(有期雇用特別措置法)。
65歳以降の雇止め
65歳到達後にさらに有期契約を更新している場合、更新の実態や労働者の合理的な期待によっては、雇止めが無効となることがあります(労働契約法19条)。更新上限を設ける場合は、あらかじめ契約書・就業規則で明示しておくことが重要です。
助成金の活用
高年齢者の継続雇用に伴う人件費負担は、助成金で軽減できます。代表的なものが65歳超雇用推進助成金で、定年引上げや無期雇用転換などを行った事業主が対象です。このほか、ハローワーク等の紹介で65歳以上の離職者を雇い入れる場合の特定求職者雇用開発助成金もあります。

よくある質問
定年後再雇用の制度設計・就業規則の見直しはご相談ください
継続雇用規程の整備、再雇用時の労働条件設計、無期転換の特例認定、待遇差リスクの点検まで、企業側の顧問弁護士がサポートします。大阪・なんば/心斎橋の難波みなみ法律事務所へ。
※本記事は一般的な解説であり、個別の事案の法的判断は具体的な事情により異なります。制度・助成金・給付金の内容は改正されることがあります。実際の対応は、監修弁護士(難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝/大阪弁護士会)にご相談ください。

