譴責(けん責)とは?戒告との違いや始末書の提出を拒否する社員の対応

更新日: 2026.02.04
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職場で従業員の問題行動が発生した際、けん責や戒告といった懲戒処分が検討されることがありますが、その違いや始末書の取り扱いを十分に理解しておくことが大切です。

譴責処分は懲戒処分の中でも軽い処分の1つですが、そうだといっても労働者に対する制裁である以上、譴責処分の理由となる事実関係の調査を尽くした上で、懲戒処分とする理由や相当性があるかを検討しなければなりません。

また、始末書の提出を拒否する場合も、単純にそれを理由に新たな懲戒処分とすることは控えなければなりません。始末書が反省文であるのか報告書であるのか、提出を拒否する理由を踏まえた対応が求められます。

この記事では、譴責処分を行う際の注意点や条件と、始末書の提出を拒否する社員にどう対応すべきか、法的観点を踏まえて詳しく解説します。

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目次

譴責(けん責)の基本事項

譴責(けん責)処分とはどのような処分を指すのか、同じ懲戒処分である戒告処分との違いや目的など、けん責処分の基本的な事項を解説します。

そもそも譴責(けんせき)処分とは?

譴責(けんせき)処分とは、従業員が企業の秩序を乱す行為を行った際に、企業が科す懲戒処分の一つです。この処分は、従業員に厳重な注意を与え、問題行為に対する反省を促すことを目的としています。多くの企業において、譴責処分は懲戒処分の中で最も軽微なものと位置付けられています。

具体的には、従業員に自身の違反行為を認めさせ、始末書の提出を命じることで、今後の行動を戒めます。この処分の目的は、単に罰を与えることにとどまりません。従業員が自身の行動を省み、自発的な改善を促し、同様の行為の再発防止を図ることで、最終的に企業全体の秩序維持を目指します。

譴責と戒告の違いとは?始末書の提出をするのかしないのかの違い

けん責と戒告はどちらも社員の行動に対して将来を戒める懲戒処分である点で共通しています。また、いずれの処分も懲戒処分の中でも比較的軽微な処分に位置するものです。

ただ、譴責は、始末書の提出を求める処分です。これは、従業員に対して問題行為の原因や経緯、今後の改善策を明記させることで、より深い反省を促す目的があるからです。一方で、戒告は始末書の提出を求めない処分です。

けん責の位置づけ、懲戒処分の中でも軽微な処分

懲戒処分とは従業員が就業規則に反する行為をした時に企業が社員に対して行う制裁のことです。懲戒処分の中には、懲戒解雇、出勤停止、降格、減給、戒告・譴責があります。

けん責は懲戒処分中でも最も軽い処分の一つで、他の処分に比べて、処分それ自体による経済的な不利益は生じません。

しかし、懲戒処分を受けたことは、昇給、賞与、昇格等の考課査定において不利な取り扱いをされるのが一般的であり、社員に対して少なからずマイナスの影響が生じます。

そのため、譴責処分といえども、適切な手続きを踏んで行うことが求められます。

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譴責処分の対象となる行為の具体例

譴責処分は、企業秩序の維持を目的として行われる懲戒処分の一つです。どのような行為が譴責処分の対象となるのかを具体的に理解しておくことは、企業が適切な処分を行う上で重要です。

ただし、一度の遅刻や些細なミスが直ちに処分対象となるわけではありません。行為の態様、頻度、改善の余地などを総合的に考慮し、慎重に判断する必要があります。

遅刻・欠勤などの勤怠不良

勤務態度に関する問題は、譴責処分の対象となる問題行為の一つです。常習的な遅刻や早退、無断欠勤といった勤怠不良は、労働者の労働契約に基づく義務に違反し、企業の秩序を乱す行為といえます。

ただし、一度の軽微な問題行動で直ちに譴責処分を行うべきではありません。企業はまず口頭や書面で注意・指導を行い、例えば勤怠不良が2~3回程度見られた時点で書面による警告・厳重注意を行うのが一般的です。こうした度重なる注意・指導にも改善が見られない場合に、譴責処分が検討されるといった段階を踏むことが、処分の有効性を確保する上で重要となります。

服務規律違反・業務命令違反

服務規律違反や業務命令違反も、譴責処分の対象となり得ます。

服務規律違反の具体例としては、例えば、勤務時間中の私用スマートフォンの長時間利用や、業務と関係のない過度な私語などがこれらに該当します。また、軽微な情報漏洩といった秘密保持義務違反や、企業の名誉や信用を毀損する行為も服務規律違反となる可能性があります。特にSNSでの不適切な投稿は、企業秩序を乱し、懲戒事由と判断されることもあります。

一方、業務命令違反には、残業命令や休日出勤命令の正当な理由のない拒否、合理的な業務指示への不服従、適法な人事異動や配置転換の拒否などが含まれます。これらの行為は、企業の円滑な業務遂行や秩序維持を妨げるため、懲戒処分の対象となることがあります。

ただし、違反の程度が軽微な場合や指導歴がない場合は、まず口頭での注意や指導が一般的です。度重なる注意にも改善が見られない場合や、違反の程度が悪質であると判断される場合に、譴責処分が検討されることになります。

パワハラ・セクハラなどのハラスメント

職場におけるハラスメント行為は、従業員の心身に深刻な影響を及ぼし、職場環境を著しく悪化させるため、厳しく対処すべき問題です。ハラスメントの中でも軽微なハラスメントである場合には、けん責処分とすることを検討します。他方で、ハラスメントが悪質である場合や被害の程度が大きい場合には、けん責処分よりも重い懲戒処分を検討することになります。

処分の重さを判断する際には、行為の悪質性、継続性や回数、そして被害者が受けた精神的苦痛の度合いなどを総合的に考慮します。

譴責処分をするために必要な条件

企業が社員に対して譴責処分を実施するためには、いくつかの条件を満たすことが必要です。

まず基本となるのは、その処分をするための根拠となる就業規則を整備し、明確にしておくことが求められます。

そして、処分の原因となる従業員の行為が具体的に就業規則に定める懲戒事由に該当するかどうかを慎重に検討しなければなりません。企業側の主観だけで行われる処分は、不当とされるリスクを伴います。

さらに重要なのが、譴責処分がその行為に対して重すぎない処分であることを確認することです。

就業規則に懲戒事由や譴責処分が規定されていること

譴責処分をする際に重要になるのは、まず就業規則に懲戒事由や譴責処分について規定されているかどうかです。

懲戒処分をするためには、就業規則に懲戒処分の対象となる行為を列記するとともに、懲戒処分の種類を規定することが必要です。

あらかじめ就業規則に懲戒事由と処分の種類を定めることで、社員に対して、どの行為に対してどの処分を受ける可能性があるかを予測できるようにしなければなりません。

従業員の行為が懲戒事由に該当すること

譴責処分を下すためには、従業員の具体的な行為が就業規則で定義される懲戒事由に当てはまることが必要です。

単に社内での評判や噂だけでは不十分です。実際のところ目撃者の証言や客観的な証拠資料などを根拠に、客観的に懲戒事由に該当する事実を証明できることが求められます。

従業員の行為が客観的事実として懲戒事由に当てはまるかどうかを判断するには、調査が必要になることもあります。当事者だけではなく、関係者のヒアリングを行い、公正な判断を下すことが重要です。

譴責処分とすることが重すぎないこと

懲戒処分としての譴責が適切かどうかについては、その重さも考慮する必要があります。例えば、些細なミスに対して過剰な懲戒を科すことは、労働者のモチベーションを損ない、企業イメージにも影響を与えるでしょう。

懲戒処分ではなく、懲戒処分ではない厳重注意に留めても十分に再発を予防できる場合には、あえて懲戒処分とする必要はありません。

その他にも、従業員の反省や謝罪の有無、他の事案との比較、会社に及ぼす不利益の有無や程度等も考慮しながら、譴責とすることが重くないかを検討する必要があります。

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譴責処分に関する過去の裁判例

譴責処分を巡る過去の裁判例を理解することで、譴責処分とすることが適切であるかを確認しましょう。ここでは、それぞれの事案における裁判所の判断基準とその理由を詳しく見ていきましょう。

東京地方裁判所判決平成25年1月22日(雇止めへの対応や助言メールの送信を理由とする譴責処分を無効とした)

この事例では、非正規社員であった原告が別の非正規社員に対し、雇止めに対する対応策をアドバイスする内容をメールで送信したことを理由に、会社が原告を譴責処分としましたが、裁判所はこの譴責処分を無効としました。

他の非正規社員にメールを送った経緯は、非正規社員全体の立場が不当に弱められることを防止しようとする意図であって、それになりに理解できる行動であるから、譴責処分は社会通念上相当なものとはいえないと判断しました。

大阪地方裁判所判決令和2年1月29日(私立大学教員らが業務命令を拒否したことを理由とするけん責を有効とした事案)

私立大学教員らが、大学側の業務命令(週6コマの授業以外の業務を実施するよう求める内容)を拒否したことで大学側から譴責処分を受けました。

しかし、業務命令により、教員らが時間外労働をすることになったとしても、36協定の内容や長時間労働になると認め難いことからすると、大学側の業務命令は違法とはいえないとして、譴責処分は有効であるという考え方が示されました。

名古屋高等裁判所判決令和2年1月23日(私立大学教授がハラスメント行為の有無を学生から調査したこと等は秘密漏洩ではないとしてけん責処分を不相当とした)

大学教授が、別の教授の生徒に対するハラスメント行為を調査したり、当該教授の懲戒に関する情報をその他の教員に知らせたことなどを理由に譴責処分を受けた事案です。

しかし、教授の行った行為は、重大な秘密を外部に漏らした場合に当たらないか、正当な理由が認められ懲戒事由に該当しないこと、十分な審議を経た上で譴責処分と判断したとはいえないことなどを理由に譴責処分を無効としました。

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譴責をする時の注意点

譴責を行う時には、複数の注意点があります。まず、懲戒事由に該当する問題行為が客観的に認定できることが大切です。さらに、公正な調査を経て証拠を集め、正当な手続きを踏むことも不可欠です。

懲戒事由を裏付ける証拠を確認する、主観的な理由で処分しない

譴責の理由となる社員の問題行為は、客観的な証拠により裏付ける必要があります。

ここでいう証拠とは、目撃者の証言、書類、電子メールのやり取りなどが考えられます。主観的な判断や感情に基づく処分は、不公正な扱いやトラブルにつながるおそれがあるため、許されません。したがって、処分にあたっては、慎重な調査と証拠収集が欠かせません。

懲戒処分の手続きを行う

懲戒処分を行う場合には、手続的なルールを守ることが求められます。

特に、懲戒処分の前に、対象社員には弁明の機会を与え、言い分を述べる機会を保障することが重要です。その他に、就業規則において、懲戒処分のために必要となるプロセスが規定されている場合には、このプロセスを経る必要があります。

この手続きを省略したり、不十分にしたりすると、懲戒処分が適正な手続きを欠いたものと判断されるリスクがあります。

譴責処分の通知書を出す

譴責処分を決定した場合には、正式な懲戒処分通知書を作成し、社員に手渡すことが通例となっています。

通知書には、懲戒の理由、処分の内容、及び処分の根拠となった規定などが明記されます。

公平かつ公正な処分であることを示すために、懲戒処分の通知書を作成し、記録に残すことも大切でしょう。通知書は後日のトラブルを避けるための証拠としても機能しますので、細心の注意を払って作成することが求められます。

始末書(顛末書・反省文)の提出を命じる

始末書の提出を命じる場合、それは懲戒処分としてだけでなく、社員の反省を促し、同様の問題を再発防止する手段として機能します。

始末書の内容と始末書を提出する期限を指定して、始末書の提出を指示します。

二重処罰の禁止などの原則

企業が懲戒処分を有効に行うには、就業規則に根拠規定があることや処分が相当であることだけでなく、いくつかの法原則を守る必要があります。

まず、「二重処罰(一事不再理)の禁止」の原則があります。これは、一つの非違行為に対して企業が二度にわたって懲戒処分を科すことはできないという考え方で、懲戒処分にも適用されます。例えば、一度厳重注意で済ませた行為について、後から譴責処分に切り替えることは原則としてできません。一度下された処分と同じ理由で、再度不利益を与えることは法的に認められないからです。

次に、「平等取扱いの原則」も重要です。これは、過去の類似事例と比較して、今回の処分が不当に重くならないよう配慮すべきというものです。同じような非違行為に対しては、同程度の懲戒処分を行うべきとされています。

そして、「不遡及の原則」も忘れてはならない原則の一つです。これは、懲戒処分の根拠となる就業規則が制定・変更される前の行為に対し、新しい規則を遡って適用することはできないというものです。処分は、常に行為時点のルールに基づいて判断される必要があり、規則変更後の理由で過去の行為を罰することはできません。

けん責処分による顛末書・報告書の提出について

けん責処分を受けた社員は、始末書を提出するように求めます。始末書の提出に関連する問題を解説します。

始末書と顛末書(報告書)と反省文の違い

始末書には、問題行為に対する反省や謝罪をし、将来同じ問題行為を繰り返さないことを誓約する反省文としての文書だけでなく、単に問題行為の事実経過を報告する報告書・顛末書としての文書を意味する場合があります。

そのため、始末書に記載する内容が対象社員の反省や謝罪まで求めるのか、単なる事実報告だけであるのかによって、始末書の提出を拒否する場合の対応が異なります。

始末書の提出を拒否された場合

労働者が始末書の提出を拒否したとしても、これを理由に安易に懲戒処分とするべきではありません。

始末書が報告書である場合

始末書が単なる事実経過の報告を求める報告書であれば、始末書の提出を拒否することに対して、業務命令違反を理由に新たな懲戒処分をすることも認められる可能性があります。

ただ、労働者が、報告書としての始末書を提出しない理由を確認する必要があります。例えば、譴責処分の前提となった事実関係の存否やその評価について争いがあるため、始末書の提出を拒否している場合には、その提出拒否を理由に懲戒処分とすることは慎重になるべきです。また、譴責の前提となる事実関係の存在が明らかで、始末書の提出拒否に合理的な理由がなくても、他の社員への影響も踏まえて、懲戒処分をするべきか検討するべきです。

始末書が反省文である場合

次に、始末書が謝罪や反省を求める反省文である場合、労働者の内心に関わる事柄であるため、その提出を強制することはできません。そのため、反省文としての始末書の提出拒否を理由に懲戒処分を行うと、無効と判断される可能性が高いです。

問題社員の対応は弁護士に相談しましょう

企業においては、問題を起こす社員と向き合わなければならない状況が生まれます。懲戒処分を行う際には、前提となる事実関係の調査や証拠の確保が非常に重要です。

また、けん責を行う過程で、始末書の提出を社員が拒否するケースは、一筋縄ではいかない難しさがあります。

このような複雑な問題に立ち向かう際には、弁護士に相談を行うことが最も確実であると言えるでしょう。

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