障害者法定雇用率2.7%引き上げ(2026年7月施行)|対象拡大と中小企業の対応を弁護士が解説

公開日: 2026.10.26
【無料DL】問題社員対応 実務チェックリスト|解雇・退職勧奨で失敗しないための前さばき無料でダウンロード
2026年7月1日施行|企業法務

2026年7月1日から、一般の民間企業に適用される障害者法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられます。雇用義務の対象となる企業規模も常用雇用労働者40人以上から37.5人以上へ広がり、これまで対象外だった中小企業の多くが新たに義務の対象となります。本記事では、変更点・自社の義務人数の計算・未達成時のリスク(納付金・企業名公表・報告義務違反の罰則)・今すぐ始める実務を、根拠条文とともに弁護士・中小企業診断士の視点で解説します。

まず結論
障害者の法定雇用率はいつ、何%になりますか?
2026年7月1日から、一般の民間企業の法定雇用率は2.5%から2.7%に引き上げられます。雇用率は障害者雇用促進法43条2項に基づく政令(施行令9条)で定められています。あわせて雇用義務が生じる企業規模が常用雇用労働者40人以上から37.5人以上に広がり、新たに義務の対象となる中小企業が増えます。
中小企業も対象ですか?
常用雇用労働者が37.5人以上であれば、中小企業でも障害者を雇用する義務があります。猶予期間はなく2026年7月から適用されます。自社の義務人数は「常用雇用労働者数×2.7%(1人未満切捨て)」で計算します(促進法43条1項)。
雇用率を達成できないとどうなりますか?
常用雇用労働者100人超の企業は、不足1人あたり月5万円(現行額)の障害者雇用納付金を負担します(促進法53条)。納付しても雇用義務は免除されません。さらに達成状況が悪い場合は、ハローワークの雇入れ計画作成命令(46条)・勧告を経て、最終的に企業名が公表されることがあります(47条)。

2026年7月に何が変わるのか

障害者の法定雇用率は、2024年4月の2.5%から、2026年7月1日に2.7%へ引き上げられます(障害者雇用促進法施行令9条)。雇用率が上がることで、雇用義務が生じる企業規模の下限も引き下げられます。

項目現行(2024年4月〜)2026年7月1日〜
民間企業の法定雇用率2.5%2.7%
雇用義務が生じる企業規模常用雇用労働者40人以上常用雇用労働者37.5人以上
未達成企業への措置雇入れ計画作成命令(46条)→ 適正実施勧告・特別指導 → 企業名公表(47条)

民間企業以外の2026年7月以降の法定雇用率は、特殊法人・国・地方公共団体が3.0%、都道府県等の教育委員会が2.9%です。本記事の2.7%・37.5人以上は一般の民間企業に関するものです。

自社が雇用すべき障害者は何人か

自社の雇用義務人数は、常用雇用労働者数に法定雇用率を掛けて計算します。1人未満の端数は切り捨てます(障害者雇用促進法43条1項)。

常用雇用労働者数 × 2.7% = 雇用すべき障害者数(1人未満は切捨て)
例1:従業員50人 → 50 × 0.027 = 1.35 → 1人
例2:従業員120人 → 120 × 0.027 = 3.24 → 3人
例3:従業員38人 → 38 × 0.027 = 1.02 → 1人(=これまで義務のなかった規模でも、2026年7月から1人の雇用義務が生じます)

37.5人以上の企業がすべて同じ人数の義務を負うわけではなく、各社の常用雇用労働者数に2.7%を乗じ、端数処理した結果で義務人数が決まります。

「常用雇用労働者数」の数え方

常用雇用労働者数は、週の所定労働時間で次のように数えます(促進法43条3項・8項)。

週所定労働時間常用労働者としてのカウント
30時間以上1人
20時間以上30時間未満0.5人
20時間未満原則として算入しない

雇用している障害者の「カウント」

対象となる障害者は、身体障害者・知的障害者・精神障害者です。雇用している障害者の人数は、障害の種類・程度と労働時間に応じて数え方が決まっています。

区分週30時間以上週20〜30時間未満週10〜20時間未満
身体障害者・知的障害者10.5—
重度の身体・知的障害者210.5
精神障害者11(当分の間の特例)0.5

精神障害者の特例:週20〜30時間未満の精神障害者は、当分の間1人としてカウントします(2023年4月以降、雇入れからの期間等にかかわらず/施行規則6条)。対象障害者かどうかは厚生労働省令で定める書類により確認します。なお、就労継続支援A型事業所の利用者は算定対象外です。

未達成のリスク(納付金・企業名公表・罰則)

法定雇用率を達成できない場合、金銭的負担・行政指導・報告義務違反の罰則という複数のリスクがあります。

障害者雇用納付金(促進法53条・56条)

  • 常用雇用労働者100人超の企業は、法定雇用障害者数に不足する1人につき月5万円(現行額)の納付金を負担します(例:2人不足=年120万円)。申告・納付は翌年度の初日から45日以内です(56条)。※納付額は改定され得るため、最新額は厚生労働省・JEEDで確認してください。
  • 常用労働者100人以下は納付金の対象外です(別途、報奨金制度の対象となり得ます)。

納付金を払っても雇用義務はなくなりません。納付金は企業間の経済的負担を調整する制度で、納付しても雇用率制度上の雇用義務は残り、未達成が続けば行政指導の対象となります。

行政指導から企業名公表まで(46条・47条)

雇用率が未達成→ 雇入れ計画の作成命令(46条)→ 変更勧告・適正実施勧告→ 公表前提の特別指導→ 企業名の公表(47条)

計画を作成した事業主が正当な理由なく勧告に従わないとき、厚生労働大臣はその旨を公表できます(47条)。行政資料では、実雇用率が全国平均を下回ること、不足数が10人以上であること、法定雇用障害者数が3〜4人の企業で雇用障害者数が0人であることなどが、計画作成・公表に関する基準として説明されています(個別企業への適用は具体的事情によります)。企業名が公表されると、採用・取引・金融機関からの評価に影響し得ます。

毎年6月1日時点の報告義務(43条7項・86条)

一定の事業主は、毎年6月1日現在の障害者雇用状況を、翌月15日(7月15日)までに管轄のハローワークへ報告しなければなりません。この報告をしない、または虚偽の報告をした場合、促進法86条により30万円以下の罰金の対象となります。雇入れ計画の作成命令に違反した場合も同様です。

達成企業へのインセンティブ(調整金・報奨金)

調整金(促進法50条):常用雇用労働者100人超で法定雇用率を超えて障害者を雇用する場合、超過人数に応じて支給されます。
報奨金:常用労働者100人以下の事業主が一定数を超えて雇用する場合に支給されます。

※支給対象人数が多い大規模事業主は単価が調整されます。助成金・単価は改定され得るため、最新額は厚生労働省・高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)で確認してください。

採用・雇用後の合理的配慮(36条の2〜4)

障害者雇用は人数の確保だけで終わりません。障害者雇用促進法は、募集・採用から雇用後まで、合理的配慮の提供を事業主に義務づけています(事業主に過重な負担を及ぼす場合を除く)。

場面根拠内容の例
募集・採用時促進法36条の2聴覚・言語障害者への筆談による面接、知的障害者への図・イラストを用いた業務マニュアル、車いす利用者に合わせた机・作業台の調整
採用後促進法36条の3職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置
意向尊重・相談体制促進法36条の4本人の意向を十分に尊重し、相談に応じ適切に対応するための体制整備

合理的配慮は、本人が支障となっている事情や希望する配慮を申し出て、事業主が本人と話し合って内容を決めるのが基本です。過重な負担に当たる場合は理由を説明し、より提供しやすい配慮を検討します。差別禁止・合理的配慮の違反それ自体に刑事罰はありませんが、厚生労働大臣の助言・指導・勧告の対象となります(36条の6)。

裁判例(いずれも個別事案の判断):障害に配慮した業務と適正な雇用管理のもとでの雇止めに合理的理由を認めた例(東京高判平成22年5月27日・藍澤證券事件)がある一方、支障や希望する配慮を確認し話し合うことなく職務変更を行った点を権利濫用の一因とした例(岐阜地判令和4年8月30日)もあります。

中小企業が今すぐやる5ステップ

  • 常用雇用労働者数を確定する
    週20〜30時間未満は0.5人として算定し、事業主単位で常用雇用労働者数を出します。
  • 法定雇用障害者数を計算する
    常用雇用労働者数×2.7%(1人未満切捨て)で、雇用すべき人数を把握します。
  • 現在の雇用状況と不足数を確認する
    すでに雇用している障害者のカウントを行い、不足数と納付金リスクを明確にします。
  • 採用・受け入れと合理的配慮の体制を整える
    業務の切り出し、合理的配慮(作業施設・設備の改善、雇用管理)の内容、ハローワーク・就労支援機関との連携を進めます。配慮の内容は障害者とよく話し合って決めます。
  • 就業規則・労務管理と報告体制を点検する
    6月1日報告(7月15日期限)の体制、合理的配慮、休職・評価・解雇のルールなど、雇用後のトラブルを防ぐ規程整備を行います。
  • 自社の常用雇用労働者数が37.5人以上かを確認した
  • 雇用すべき障害者数を計算した(×2.7%・端数切捨て)
  • 不足数と納付金リスクを把握した
  • 募集・受け入れ・合理的配慮の体制を検討した
  • 6月1日報告(7月15日期限)と就業規則の整備に着手した
障害者雇用でよくあるご相談(当事務所の傾向)
法定雇用率の引き上げに伴い、「義務人数の数え方が合っているか」「短時間勤務者・精神障害者のカウント」「雇用後の合理的配慮・休職・評価や解雇をめぐるトラブル対応」といったご相談が増えています。障害者雇用は”採用して終わり”ではなく、合理的配慮や雇用管理まで含めた設計が重要です。裁判例でも、障害の実情に応じた配慮や話し合いを欠いた職務変更・雇止めの合理性が争われています。(※具体的な事例・件数は南弁護士が実務に基づき加筆・調整)

よくある質問(FAQ)

障害者の法定雇用率はいつから2.7%になりますか?

2026年7月1日からです。一般の民間企業について、2024年4月から2.5%でしたが、2026年7月1日に2.7%へ引き上げられます(障害者雇用促進法施行令9条)。

何人以上の会社が対象ですか?

常用雇用労働者が37.5人以上の会社が対象です。これまでの40人以上から引き下げられ、新たに37.5〜39人規模の企業も雇用義務の対象になります。

自社が何人雇えばよいか、どう計算しますか?

「常用雇用労働者数×2.7%(1人未満切捨て)」で計算します(促進法43条1項)。たとえば従業員50人なら1人、120人なら3人が雇用義務の人数です。

パートや短時間の障害者もカウントされますか?

週20時間以上であればカウントされます。週30時間以上は1人、週20〜30時間未満は0.5人(重度や一定の精神障害者は加算)として算定します。週20時間未満は原則として算入しません。

雇用率を達成できないと罰則はありますか?

未達成それ自体に刑事罰はありませんが、行政指導と企業名公表のリスクがあります。雇入れ計画作成命令(46条)・勧告を経ても改善しない場合、企業名が公表されることがあります(47条)。なお、6月1日時点の雇用状況報告を怠る・虚偽報告をすると30万円以下の罰金の対象です(86条)。

障害者雇用納付金はいくらですか?

常用雇用労働者100人超の企業で、不足1人あたり月5万円(現行額)です(促進法53条)。100人以下は納付金の対象外です。納付しても雇用義務は免除されません。最新額は厚生労働省・JEEDで確認してください。

中小企業はまず何から始めればよいですか?

まず自社の常用雇用労働者数と雇用義務人数の確認から始めます。そのうえで不足数の把握、採用・受け入れと合理的配慮の体制、就業規則・6月1日報告体制の整備へと進めるのが現実的です。

障害者雇用率の対応・就業規則の整備は弁護士にご相談ください

難波みなみ法律事務所(大阪・西心斎橋/代表弁護士・中小企業診断士 南 宜孝)が、企業法務の視点で御社の雇用義務の確認から合理的配慮・規程整備までお手伝いします。

本記事は2026年10月時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の事案への法的助言ではありません。法定雇用率・納付金・各種助成金の最新の数値は厚生労働省および高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の公表情報をご確認ください。根拠法令:障害者の雇用の促進等に関する法律43条・46条・47条・53条・56条・86条、同施行令9条、同施行規則2条・8条。

「問題社員」カテゴリーのピックアップコラム

「労働紛争」カテゴリーのピックアップコラム

「顧問弁護士」カテゴリーのピックアップコラム

「債権回収」カテゴリーのピックアップコラム

「契約書・就業規則」カテゴリーのピックアップコラム

「残業代請求」カテゴリーのピックアップコラム