即日解雇の条件と注意点を弁護士が徹底解説

更新日: 2026.08.09
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まず結論
① 即日解雇は原則できない
解雇には原則として30日前の予告が必要です。予告しないなら、平均賃金の30日分以上の「解雇予告手当」を支払わなければなりません(労働基準法20条)。
② 予告手当を払えば即日でも解雇できる
解雇予告手当(平均賃金30日分以上)を支払えば、予告期間を置かずに即日で解雇できます。
③ 手当なしの即日解雇は「除外認定」など例外に限られる
予告も手当もなしの即日解雇が認められるのは、天災事変や「労働者の責に帰すべき事由」があり、労働基準監督署長の解雇予告除外認定を受けた場合などに限られます。
④ 予告手当を払っても、解雇そのものの有効性は別問題
予告手当を支払っても、解雇に客観的・合理的な理由と社会通念上の相当性がなければ、不当解雇として無効になります(労働契約法16条)。

「問題のある従業員を今日で辞めさせたい」と考えても、法律上、即日解雇のハードルは高く設定されています。手続きを誤ると、不当解雇として無効になり、会社が多額の金銭的負担を負うおそれがあります。本記事では、即日解雇ができる条件と、会社が押さえるべき注意点を、弁護士がわかりやすく解説します。

即日解雇(即時解雇)とは?

即日解雇とは、解雇予告や予告期間を置かず、その日のうちに労働契約を終了させる解雇をいいます。法律上は「即時解雇」と呼ばれ、労働基準法20条1項ただし書に定められた例外的な解雇にあたります。

通常の解雇は、少なくとも30日前に予告するか、予告に代わる解雇予告手当を支払う必要があります。即日解雇は、この予告のプロセスを省く点に特徴があります。

原則:予告か予告手当が必要(労働基準法20条)

労働基準法20条は、解雇の予告について次のように定めています。

労働基準法20条1項
使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金(=解雇予告手当)を支払わなければならない。

つまり、会社が従業員を解雇するときは、次のいずれかが必要です。

方法内容即日解雇の可否
30日前の解雇予告 解雇日の30日以上前に予告する 即日は不可(30日後に効力)
解雇予告手当 平均賃金の30日分以上を支払う 即日で可能
予告+手当の併用 予告日数が30日に満たない分を手当で補う 手当で補った日数分だけ短縮可
解雇予告除外認定 天災事変/労働者の責に帰すべき事由+労基署長の認定 予告・手当なしで即日可
予告手当の目安
解雇予告手当は「平均賃金の30日分以上」です。平均賃金は、原則として直近3か月間に支払った賃金の総額を、その期間の総日数で割って算出します。たとえば平均賃金が1日1万円なら、30万円以上が目安になります(実際の計算は個別の賃金体系により異なります)。

解雇予告手当を払えば即日解雇できる

最も確実な即日解雇の方法は、解雇予告手当(平均賃金30日分以上)を支払うことです。これにより、予告期間を置かずにその日のうちに解雇できます。

ただし「解雇の有効性」は別問題
予告手当を支払えば予告義務は果たせますが、それは手続きの問題にすぎません。解雇そのものが有効かどうかは、労働契約法16条により「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」があるかで別途判断されます。理由が不十分なまま予告手当だけ払って即日解雇しても、不当解雇として無効になり得ます。

予告手当なしで即日解雇が認められる条件(解雇予告除外認定)

予告も予告手当もなしに即日解雇できるのは、労働基準法20条1項ただし書の例外にあたる場合です。

2つの除外事由

  • 天災事変その他やむを得ない事由により、事業の継続が不可能となった場合
  • 労働者の責に帰すべき事由に基づいて解雇する場合(実務上は懲戒解雇の場面で問題になります)

これらの事由があるときは、あらかじめ労働基準監督署長の「解雇予告除外認定」を受けることで、予告・予告手当なしの即日解雇が可能になります(労働基準法20条3項)。

「労働者の責に帰すべき事由」とは

行政解釈(昭和23年11月11日基発1637号ほか)は、「労働者の責に帰すべき事由」を、労働者の故意・過失またはこれと同視すべき事由で、労働者の地位・勤続年数・勤務状況などを考慮し、解雇予告制度による保護を与える必要がないほど重大または悪質なものとしています。具体例として、次のような場合が挙げられています。

類型具体例
極めて軽微なものを除く、事業場内での窃盗・横領・傷害など刑法犯にあたる行為
賭博・風紀びん乱などで職場規律を乱し、他の労働者に悪影響を及ぼす場合
採用条件の要素となるような経歴を詐称した場合
他の事業場へ転職した場合
原則2週間以上、正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合
出勤不良や出欠常ならず、数回注意しても改めない場合

ただし、これらは例示であり、認定にあたっては個々の事案を総合的・実質的に判断するとされています。

「懲戒解雇なら当然に即日解雇できる」は誤解
懲戒解雇も解雇である以上、労働基準法20条が適用されます。「懲戒解雇=即日解雇」と考えられがちですが、企業内の懲戒解雇事由と、20条ただし書の『労働者の責に帰すべき事由』は必ずしも一致しません。懲戒解雇にあたる場合でも、予告手当なしで即日解雇するには除外事由と除外認定の検討が必要です。

除外認定の法的性質と実務上の注意

解雇予告除外認定は、除外事由にあたる事実が存在するかを確認する行政の「確認行為」であり、解雇の効力そのものを発生させる要件ではありません。そのため、認定を受けていなくても、客観的に「労働者の責に帰すべき事由」が存在すれば、即時解雇が有効と判断された裁判例があります。

判例麹町学園事件(東京地判昭和30年6月21日)/グラバス事件(東京地判平成16年12月17日・労判889号52頁)

労働基準監督署長の除外認定を受けていない即時解雇であっても、客観的に「労働者の責に帰すべき事由」が認められる場合には、即時解雇を有効と判断した裁判例です。除外認定は効力発生要件ではないことを示しています。

実務上の進め方
認定を受けられるか微妙なケースでは、無理に無予告の即日解雇を狙わず、①はじめから解雇予告手当を支払って解雇する、②除外認定を申請しつつ、認定が下りそうになければ予告手当を払う方式に切り替える、といった対応が安全です。無予告で即日解雇し、後に除外事由が否定されると、解雇自体が無効になるリスクがあります。

予告も手当もなく即日解雇したらどうなる?

除外事由がないのに、予告も予告手当もなく即日解雇した場合、その「即日解雇(即時解雇)」としての効力は生じません。もっとも、判例上、会社が即時解雇に固執する趣旨でない限り、解雇通知から30日を経過した時点、または予告手当を支払った時点で、その時から解雇の効力が生じるとされています(相対的無効説)。

判例細谷服装事件(最判昭和35年3月11日)

予告期間を置かず、予告手当も支払わずに解雇した場合でも、使用者が即時解雇に固執する趣旨でない限り、通知後30日を経過するか、通知後に予告手当を支払ったときは、そのいずれか早い時点から解雇の効力が生じるとした最高裁判例です。

即日解雇をする前に検討すべきこと

1
解雇の有効性を確認する
そもそも解雇の理由が、客観的に合理的で社会通念上相当か(労働契約法16条)を検討します。予告手当や除外認定は手続きの話であり、解雇理由が弱ければ無効になります。
2
解雇制限に該当しないか確認する
業務災害による療養中や産前産後の期間は解雇が禁止されています(労働基準法19条)。この期間は即日解雇もできません。
3
予告手当か除外認定かを選ぶ
確実性を重視するなら予告手当の支払い、重大な非違行為で無予告即日を狙うなら除外認定の検討、と方針を決めます。
4
証拠を整える
解雇理由となる事実(非違行為・勤務状況など)を、記録・書面で客観的に裏づけられるよう準備します。

即日解雇した後にすべきこと

  • 解雇理由証明書の交付:従業員から請求があれば、解雇の理由を記載した証明書を遅滞なく交付します(労働基準法22条)。
  • 解雇予告手当の支払い:即日解雇の場合、解雇と同時に予告手当を支払うのが原則です。
  • 離職票などの手続き:ハローワークへの手続き、社会保険の資格喪失手続きを行います。
  • 貸与物の返却・私物の返還:会社の備品・データの返却と、私物の返還を整理します。

即日解雇に伴うリスク(不当解雇)

手続きや理由を欠いた即日解雇は「不当解雇」として無効になり、会社は次のような負担を負うおそれがあります。

  • バックペイ:解雇が無効なら、解雇時点から復職までの賃金をさかのぼって支払う
  • 慰謝料・解決金:不当解雇の態様によっては慰謝料や解決金の負担が生じる
  • 解雇予告手当・付加金:予告手当を支払わなかった場合、未払分に加え、裁判所が同額までの付加金の支払いを命じることがある(労働基準法114条)
  • 紛争対応の時間的・金銭的コスト、社内士気への影響
「された側」から見ても即日解雇は争いやすい
従業員側から見れば、即日解雇は「違法ではないか」「慰謝料を請求できないか」と争われやすい類型です。会社としては、予告手当・除外認定・解雇理由のいずれも整えたうえで慎重に進めることが、後の紛争リスクを下げます。

即日解雇のチェックリスト

  • 解雇の理由が客観的・合理的で、社会通念上相当といえるか(労働契約法16条)
  • 解雇制限期間(業務災害の療養中・産前産後)に該当しないか(労働基準法19条)
  • 解雇予告手当(平均賃金30日分以上)を準備できているか
  • 無予告即日を狙う場合、除外事由に該当し、除外認定を検討したか
  • 懲戒解雇の場合でも、除外事由と認定を別途検討したか
  • 解雇理由となる事実を、記録・書面で裏づけられるか
  • 解雇理由証明書を交付できるよう、理由を具体的に整理したか
  • 即日解雇を実行する前に、弁護士へ相談し法的リスクを確認したか

よくある質問

即日解雇は違法ですか?
即日解雇そのものが直ちに違法になるわけではありません。解雇予告手当を支払うか、除外認定を受けるなどの手続きを踏み、かつ解雇理由が客観的・合理的で相当であれば有効です。逆に、これらを欠く即日解雇は不当解雇として無効になり得ます。
解雇予告手当を払えば、どんな理由でも即日解雇できますか?
いいえ。予告手当の支払いは「予告義務」を果たすための手続きにすぎません。解雇そのものが有効かどうかは労働契約法16条で別途判断され、合理的な理由と相当性がなければ無効になります。
懲戒解雇なら予告も手当もなしで即日解雇できますか?
当然にできるわけではありません。懲戒解雇も解雇なので労働基準法20条が適用されます。予告手当なしの即日解雇には、「労働者の責に帰すべき事由」への該当と、労働基準監督署長の除外認定の検討が必要です。企業内の懲戒解雇事由と、法律上の除外事由は必ずしも一致しません。
除外認定を受けずに即日解雇したら無効ですか?
必ずしも無効ではありません。除外認定は事実を確認する行政の行為で、解雇の効力発生要件ではないため、客観的に除外事由が存在すれば認定なしでも即時解雇が有効と判断された裁判例があります。ただし後に事由が否定されるリスクがあるため、微妙なケースでは予告手当を支払う方式が安全です。

即日解雇の判断は事前に弁護士へ相談を

即日解雇は、「予告手当」「除外認定」「解雇理由の有効性」という複数のハードルをすべてクリアして初めて有効になります。いずれかを欠くと不当解雇として無効になり、会社に大きな負担を招くおそれがあります。即日解雇を検討する段階で、事前に弁護士へ相談し、適切な手続きと方針を確認しておくことが、トラブルの予防につながります。

迷ったら着手前に相談を
「この即日解雇は有効か」「予告手当と除外認定のどちらで進めるべきか」を事前に確認することで、後の紛争リスクを大きく減らせます。難波みなみ法律事務所は、企業側の立場で即日解雇の可否と進め方をアドバイスします。
即日解雇でお悩みですか?

即日解雇できる条件の判断や、予告手当・除外認定の手続きについて、企業側の立場で具体的にアドバイスします。初回相談無料(30分)。

解雇予告手当の税務処理はどうなりますか?(所得税・源泉徴収・勘定科目)
解雇予告手当は、税務上は「退職手当等」(退職所得)として扱われ、給与所得ではありません。退職所得は退職所得控除の対象となり、控除後の金額の2分の1に対して所得税・住民税が課税されます。源泉徴収の方法は、労働者が「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているか否かで異なり、提出があれば会社が退職所得控除を反映した源泉徴収を行い、未提出であれば一律20.42%(復興特別所得税含む)の源泉徴収を行うのが原則です。会計処理上は、「解雇予告手当」「退職金」等の勘定科目で費用計上します。実務上の税務処理・源泉徴収の詳細については、税理士に確認することが望ましいでしょう。
アルバイト・パートに対しても解雇予告手当は必要ですか?
原則として必要です。アルバイト・パートも労働基準法上の「労働者」に含まれるため、雇用形態にかかわらず解雇予告(30日前予告)または解雇予告手当(30日分以上の平均賃金)の支払義務が生じます。もっとも、労働基準法21条により、①日日雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用された場合を除く)、②2か月以内の期間を定めて使用される者(所定期間を超えて引き続き使用された場合を除く)、③季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者、④試用期間中の者(14日を超えて引き続き使用された場合を除く)、については解雇予告制度の適用が除外されます。長期継続勤務のアルバイト・パートには原則適用があるため、企業側は雇用開始日・勤務期間を確認したうえで対応する必要があります。

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