付加金(ふかきん)とは、未払いの残業代等と同額を上限に、裁判所が使用者に支払いを命じる制裁的な金銭です(労働基準法114条)。
会社は未払い分と合わせて最大「2倍」を負担し得ますが、判決(事実審の口頭弁論終結)までに未払い分を支払えば付加金を免れられます。付加金の意味・読み方から対象・金額・生じる条件・除斥期間、そして否定・減額につながる会社側の対応までを、企業経営者の視点で弁護士が解説します。
付加金とは何ですか?
未払いの残業代等と同額を上限に、裁判所が使用者に支払いを命じる制裁的な金銭です(労働基準法114条)。会社は未払い分と合わせて最大2倍を負担し得ます。
付加金はどんなときに命じられますか?
訴訟の判決でのみ命じられます。裁判上の和解・調停・労働審判では命じられません。命じるかどうか・その額は裁判所の裁量です。
付加金を避ける方法はありますか?
判決(控訴審の口頭弁論終結)までに未払いの残業代等を支払えば、付加金は命じられません。最高裁もこの考え方を示しています。受取を拒否されたら供託で対応します。
誠実に対応していれば減額されますか?
その可能性があります。付加金は「重大・悪質」な違反に限って命じられる傾向があり、一定額を支払っていた等の事情があれば否定・減額された裁判例もあります。
- 労働基準法114条(付加金の支払い)
- 付加金の対象:労働基準法37条(割増賃金)/20条(解雇予告手当)/26条(休業手当)/39条9項(年次有給休暇中の賃金)
- 民法494条(供託)/民法404条(法定利率=年3%)
付加金(ふかきん)とは?意味と読み方
付加金は「ふかきん」と読みます。労働基準法114条にもとづき、使用者が残業代などの支払義務に違反した場合に、裁判所が労働者の請求により、使用者に対して未払額と同じ額までの支払いを命じることができる金銭です。本来支払うべき未払い分に加えて、いわば「制裁」として上乗せされるため、会社にとっては大きな負担になります。
付加金の対象となる未払い
付加金は、どんな未払いにも付くわけではありません。労働基準法114条は、次の4つの支払義務違反を対象としています。
| 対象となる未払い | 根拠 |
|---|---|
| 割増賃金(残業代) | 労働基準法37条(時間外・休日・深夜労働の割増賃金) |
| 解雇予告手当 | 労働基準法20条 |
| 休業手当 | 労働基準法26条 |
| 年次有給休暇中の賃金 | 労働基準法39条9項 |
実務で最も多いのは、残業代(割増賃金)の未払いに付加金が請求されるケースです。なお、付加金の算定は割増部分だけでなく、その計算の基礎となる通常の賃金部分も踏まえて行われます。
付加金の金額 ── 最大でいくら?
付加金の額は、未払額と同額が上限です。したがって会社は、未払い分(本来支払うべき額)と付加金を合わせて、最大で「2倍」を負担する可能性があります。
ただし、必ず同額が命じられるわけではなく、金額を含めて裁判所の裁量で判断されます。裁判例の統計では、付加金が命じられた事件の約6割は満額(未払額と同額)ですが、会社の対応次第で否定・減額される場合がある点は、後の見出しで解説します。
付加金が命じられる条件(裁判所の裁量・判決のみ)
条件① 労働基準法違反があること
付加金が命じられる前提として、残業代の不払いなどの労働基準法違反があることが必要です。ただし、違反があれば必ず付加金が命じられるわけではありません。命じるかどうか・その額は裁判所の裁量に委ねられ、違反の悪質性や労働者の被った不利益の程度などの事情を踏まえて判断されます。
条件② 「判決」でのみ命じられる
付加金は、訴訟の判決によってのみ命じられます。裁判上の和解、調停、裁判外の合意では命じられません。また、労働審判でも付加金は命じられません。つまり、訴訟に至らず解決すれば付加金のリスクは生じないことになります。
会社が付加金を支払わないための対応
判決までに未払い分を支払う
最も基本的なのは、裁判所の判決が出るまでに未払いの残業代等を支払うことです。付加金は「支払義務違反」に対する制裁のため、判決までに支払いを済ませれば、付加金を命じることはできないとされています。ここでいう「判決まで」とは、事実審(第二審=控訴審)の口頭弁論が終わるまでを指します。
つまり、一審で残業代と付加金の支払いが命じられても、控訴審の口頭弁論終結までに残業代を支払えば、付加金の支払いを免れられます(ただし控訴審は第1回期日で結審することも多いため、対応は早めに)。
労働者が受け取りを拒否する場合は供託
労働者が付加金の発生をねらって支払いの受け取りを拒否することも考えられます。その場合は、未払いの金額を供託(民法494条)することで、支払ったのと同じ効力が生じ、付加金の発生を防げます。
付加金が否定・減額されるのはどんな場合か(会社の対応がカギ)
付加金を命じるかどうか、いくら命じるかは裁判所の裁量です。裁判所は、労働基準法違反の程度・態様、労働者が受けた不利益の性質・内容、使用者(会社)の対応などの事情を総合して判断します。つまり、付加金は「重大・悪質」と評価される違反に限って命じられる傾向があり、会社が誠実に対応していれば、否定されたり減額されたりすることが少なくありません。
| 会社側に有利に働いた事情 | 結果の傾向 |
|---|---|
| 積極的に残業代を払わない対応をしていたわけではなく、一定の時間外賃金相当分を支払っていた | 否定された例 |
| 管理職手当など、毎月一定額を実際に支払っていた | 減額された例 |
| 給与体系が一見して明白に不合理・理不尽とまではいえない | 否定された例 |
付加金の期限(除斥期間)と遅延損害金
付加金の期限は「除斥期間」で当分の間3年
付加金には期限があります。賃金の消滅時効が5年(当分の間3年)に伸長されたことに合わせて、付加金の請求期限も原則5年・当分の間3年とされています。労働者は、この期間内に残業代と一緒に付加金の支払いを求める訴えを起こす必要があります。
付加金のこの期限は「除斥期間」と呼ばれ、時効とは異なる制度です。
| 比較 | 消滅時効(残業代) | 除斥期間(付加金) |
|---|---|---|
| 援用(主張) | 必要 | 不要(当然に消滅) |
| 更新(リセット) | あり(承認等) | なし |
| 期間 | 原則5年・当分3年 | 原則5年・当分3年 |
期間が過ぎれば当然に権利が消滅するため、労働者は除斥期間が過ぎる前に訴えを起こす必要があります。
付加金にも遅延損害金が付く
付加金にも遅延損害金が付きます。その起算点は判決確定日の翌日で、利率は民法の法定利率である年3%です。
よくある質問(FAQ)
付加金・残業代請求への対応は弁護士にご相談ください
付加金は判決までの対応次第で否定・減額でき、最大2倍の負担を避けられます。残業代請求への初動・証拠・反論から、判決前の支払い・供託の判断まで、企業経営者の立場で弁護士がサポートします。大阪・なんば/心斎橋の難波みなみ法律事務所へ。
※本記事は一般的な解説であり、個別の事案では付加金の可否・金額は具体的な事情により異なります。実際の残業代請求・付加金への対応は、監修弁護士(難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝/大阪弁護士会)にご相談ください。

