職場の「嘘つき社員」への処分は可能?虚偽報告への適切な対応手順と法的リスクを解説

更新日: 2026.07.28
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会社の秩序を乱す「嘘つき社員」の存在は、業務にも支障をきたす深刻な問題です。特に、虚偽の報告は経営判断を誤らせる可能性もあり、企業にとって大きなリスクとなります。

では、職場でそのような問題社員に対し、処分は可能なのでしょうか。また、実際に嘘が発覚した場合、どのような対応を取るのが適切なのでしょうか。虚偽報告は罪に問われることがあるのか、といった法的な疑問を持つ経営者・人事担当者の方も多いはずです。

本記事では、虚偽報告の意味や法的責任から、虚偽報告を行った社員への処分の目安、具体的な対応手順と法的リスクまで、企業側の弁護士が詳しく解説します。

目次

虚偽報告とは?意味・読み方と「単なるミス」との違い

虚偽報告(きょぎほうこく) ※「虚位報告」と表記されることがありますが、正しくは「虚偽報告」です。

社員が故意に事実と異なる内容を会社に報告する行為をいいます。

ポイントは「故意」であることです。事実と異なる報告であっても、思い込みや確認不足による過失のミス(誤報)と、事実を知りながらあえて偽る虚偽報告とは、法的な評価が大きく異なります。単純な計算間違いや連絡ミスは、直ちに懲戒処分の対象となるものではなく、指導や再発防止で対応すべき場合がほとんどです。

💡 職場で問題となる「虚偽報告」の例
  • 業務の進捗やトラブルを実際と異なる内容で報告する
  • 出張報告書・日報・経費精算などに虚偽の記載をする
  • 勤務時間やタイムカードを実態と異なる形で申告する
  • 経歴・能力・前職での事実について嘘の申告をする
  • 事実に反するハラスメント被害を申告する

本記事では、こうした故意による虚偽報告を前提に、法的責任と会社の対応を解説します。

嘘つき社員(虚偽報告)を放置することで生じる3つのリスク

従業員による些細な嘘や虚偽報告は、つい「大したことない」と見過ごしてしまいがちです。しかし、そのような安易な判断は、重大なコンプライアンス違反へと発展する恐れがあります。以下では、社員の嘘を放置することで企業が直面しうる3つの具体的なリスクを解説します。

① 職場全体の規律が乱れる

一人の社員が虚偽の報告をしても許容される職場では、「この会社では嘘をついても問題ない」という悪しき前例を生みかねません。これにより、他の社員の規範意識が低下し、組織全体の秩序が希薄になる恐れがあります。嘘が黙認される社内文化は、勤怠管理や経費精算といった社内ルールの軽視へと波及し、正直に業務に取り組んでいる社員は「嘘をついた方が得をする」と感じ、不公平感から組織への信頼を失いかねません。

② 他の従業員のモチベーションが低下する

社員の嘘や虚偽報告が黙認される職場では、真面目に努力する他の従業員との不公平を生みます。その結果、組織内のチームワークは機能しなくなり、職場の雰囲気は悪化し、働くこと自体へのモチベーション低下につながります。このような状況が続けば、組織全体の士気を低下させ、生産性にも悪影響を及ぼす可能性があります。

③ 会社に経済的な損害を与える可能性がある

従業員による虚偽報告は、企業に経済的損害をもたらす可能性があります。直接的な損害の典型例としては、以下のような経費の不正請求が挙げられます。

  • 架空請求や水増し請求
  • 通勤手当の不正申請
  • 経費の私的利用

さらに、タイムカードの不正打刻といった勤怠記録の改ざんは人件費の過大な支払いを引き起こします。また、取引先への虚偽報告が発覚した際に、信頼を失って契約を打ち切られたり、損害賠償請求に発展したりするリスクが考えられます。

虚偽報告は罪になるのか?成立しうる犯罪と法的責任

「虚偽報告をした社員は罪に問えるのか」は、経営者・人事担当者からよく寄せられる疑問です。結論から言えば、「虚偽報告罪」という単独の罪名は刑法に存在しません。しかし、虚偽報告の内容や結果によっては、以下の犯罪や民事上の責任が成立し得ます。

刑事上の責任(成立し得る犯罪)

想定される行為成立し得る犯罪根拠条文
経費・通勤手当の不正受給、架空請求で金銭・利益を得た詐欺罪刑法246条
虚偽の情報や偽計で会社の業務を妨害/信用を毀損した信用毀損罪・偽計業務妨害罪刑法233条
報告書・日報・経費書類などの文書を偽造・変造した私文書偽造罪等刑法159条
会社が管理を委ねた金品を横領した業務上横領罪刑法253条
(公務員が)虚偽の公文書を作成した虚偽有印公文書作成罪等刑法156条

たとえば、通勤手当や出張旅費を実態と偽って受給した場合、金銭をだまし取る行為として詐欺罪(刑法246条)に該当し得ます。また、虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて会社の信用を毀損し、あるいは業務を妨害した場合には、信用毀損罪・偽計業務妨害罪(刑法233条)が問題となり得ます。

⚠ 刑事告訴を検討する場合の注意

刑事責任の成否は、故意・因果関係・損害の有無などを踏まえて厳格に判断されます。証拠が十分か、社内対応(懲戒処分)との整合が取れているかを含め、あらかじめ弁護士に相談することをおすすめします。

民事上の責任(損害賠償)

虚偽報告によって会社に具体的な損害が生じた場合、会社は当該社員に対し、労働契約上の債務不履行(民法415条)または不法行為(民法709条)に基づき、損害賠償を請求できる場合があります。ただし、実務上、労働者への損害賠償請求は、労働者の帰責性の程度や会社の指揮監督のあり方などを踏まえて信義則上相当な範囲に制限される傾向があり、全額の請求が認められるとは限らない点に注意が必要です。

社員による嘘・虚偽報告の事例と処分の重さの目安

社員が職場で報告する嘘や虚偽には様々なケースがあり、その内容や会社に与える影響の度合いによって、適切な懲戒処分の重さは大きく異なります。処分の判断を誤り、不当に重い処分を下してしまうと、従業員から不当解雇などを理由に訴訟を起こされるリスクが生じます。安易な判断は避け、個々の事例に応じた適切な処分レベルを把握しておくことが極めて重要です。

能力や経験の虚偽申告(経歴詐称)

応募者が能力や経験について虚偽の申告をして採用された場合、それを理由に懲戒処分をすることができるかが問題となります。虚偽申告があっても直ちに懲戒処分を下せるわけではなく、重要な経歴の詐称と言える場合に懲戒処分の対象となると解されています。会社が真実の経歴を知っていれば採用していなかったと客観的に認められる場合が「重要な経歴」に該当します。

スーパーバッグ事件東京地判 昭55.2.15
懲戒解雇 有効
事案:短期大卒を高卒と申告し、三度の転職・無職期間・経営歴など職歴を詐称。重要な経歴詐称にあたるとして解雇が有効とされた。
グラバス事件東京地判 平16.12.17
懲戒解雇 有効
事案:職務に必要なプログラミング能力がないにもかかわらず、能力があるかのように職歴を偽り採用された事案で、解雇が有効とされた。

経歴詐称を理由に解雇することができるか?(関連記事)

前科がないと嘘の申告をした場合

採用時に前科を秘匿していた場合、それが重要な経歴と言えるときは懲戒処分の対象になり得ます。前科は、職場への適応性、企業の信用性の保持、適切な業務遂行の観点から重要な経歴と考えられています。ただし、前科は個人情報保護法上の要配慮個人情報にあたり、本人の同意なく取得できないため、応募者が回答を拒否する場合にそれ以上の回答を求めることはできません。もっとも、嘘の申告まで許容されるわけではなく、虚偽申告をすれば懲戒処分の対象になり得ます。

前職でのトラブルを隠していた場合

前職における非違行為や懲戒処分歴が重要な経歴に該当する場合には、これを秘匿・虚偽申告したことが懲戒処分の対象になります。横領や背任などの犯罪行為、あるいはセクハラ・パワハラなどのハラスメント歴が典型です。労働者は、過去の非違行為について申告を求められた場合には信義則上真実を告知する義務を負うため、虚偽の説明をすれば懲戒処分の対象となり得ます。他方、自発的に申告する義務まではないため、面接時に確認されなかった事項を申告しなかったことのみを理由に処分することは難しいと考えられます。

出張の虚偽報告をした場合

出張報告書に虚偽の記載をした場合には、懲戒処分の対象となります。出張時の労働時間は事業場外みなし労働時間として扱われることが多いものの(労基法38条の2)、事後に提出する報告書の記載が事実であることは当然に求められるためです。ただし、虚偽報告が一回のみで他に非違行為がなければ、けん責・戒告や減給、本人の勤務状況によっては厳重注意・訓戒にとどめるのが相当です。他方、繰り返し・多数回で処分歴が複数ある場合には、諭旨解雇や懲戒解雇も想定されます。

学校法人村上学園事件大阪地判 平5.9.29・判タ853号197頁
懲戒解雇 無効
事案:私立学校の教頭が修学旅行の引率中、ホテル待機中にゴルフに出かけ、学校側の事情聴取にも虚偽報告。一回のみの行動で事故等もなく、他に非違行為がないことから、戒告・減給・(場合により)停職はありえても懲戒解雇は相当でないとされた。
三菱電機事件神戸地尼崎支判 平20.2.28・判時2027号74頁
懲戒解雇 有効
事案:多数回にわたり出張を偽装して会社を欺罔し、旅費精算を合計200万円以上行っていたケース。長期・多数回・高額であることから懲戒解雇が有効とされた。
⚠ 実務のポイント

出張の虚偽報告は証拠の確保が難しいことがあります。関係者への調査を行い、客観的な裏付けを固めておくことが重要です。

虚偽のハラスメント(パワハラ・セクハラ)の申告をした場合

社員が嘘のハラスメント申告をした場合には懲戒処分の対象となります。ただし、虚偽申告の動機・目的や生じた損害の程度を踏まえて検討します。上司・同僚に処分を受けさせる目的で殊更に虚偽申告をした場合は悪質性が高く、厳しい処分を検討すべきです。他方、ハラスメント被害を受けたと誤信することに相当な理由がある場合には、処分の要否を慎重に考える必要があります。

勤務時間(労働時間)・タイムカードの虚偽申告

社員は始業・終業の時刻を正しく記録しなければなりません。にもかかわらず、勤務時間(労働時間)について虚偽の申告をしたり、タイムカードの不正打刻に及べば、懲戒事由に該当します。不正打刻により給与を不正受給していれば詐欺罪(刑法246条)にも該当し得ます。ただし処分の選定は事情を勘案する必要があり、会社の勤怠管理が杜撰で黙認していた場合にいきなり厳しい処分を行うのは控えるべきです。他方、厳正対処を周知しているのに不正打刻・不正受給に及んだ場合は、懲戒解雇などの厳しい処分もあり得ます。

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虚偽の理由で有給休暇を取得した場合(仮病など)

社員が嘘の理由で有給休暇を取得した場合、懲戒処分の対象となる可能性があります。本来、有給休暇の利用目的は自由ですが、会社は事業の正常な運営を妨げると判断すれば時季変更を求めることができ、取得理由を考慮して行使を控える場合もあります。そのため取得理由には真実の記載が求められ、虚偽がある場合には懲戒事由に該当し得ます。ただし、取得理由の虚偽記載だけで懲戒解雇まで行うのは重すぎるため、厳重注意又は戒告処分といった軽めの対応に留めるべきです。

通勤手当・経費の不正受給

通勤手当や経費の不正受給は、会社を欺罔して金銭を詐取する行為であり、詐欺罪(刑法246条)に該当し得るため、懲戒事由該当性は問題ないと考えられます。もっとも、すべてで懲戒解雇までできるわけではありません。過去の裁判例からは、次の事情によって相当な処分の重さが変わります。

💡 懲戒解雇の可否を左右する4つの要素
  • ① 不正受給の態様(故意か過失か、不正期間の長短)
  • ② 不正受給の金額
  • ③ 過払分の返済額
  • ④ 反省の態度
かどや製油事件東京地判 平11.1.30
懲戒解雇 有効
事案:通勤手当の不正受給に加え、出勤しても1日の大半を無届けで離席し業務を放棄していた不誠実な勤務態度も相まって解雇が有効とされた。※不正受給のみで直ちに懲戒解雇が有効になると断言はできない点に注意。
シンガポール航空事件東京地判 昭55.2.29
懲戒解雇 無効
事案:交通費・接待費の虚偽報告や不正請求を理由とする懲戒解雇。交通費は実際に相当する支出を行っていたこと、接待費の領収書流用は少額であったこと、本人から詫びが入っていたことなどから解雇が無効とされた。

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部下・社員の嘘が疑われるときに会社が取るべき4つのステップ

部下や社員の嘘・虚偽報告が疑われる場合、企業には感情的な対応を避け、客観的な事実に基づいた慎重な対応が求められます。安易な判断や性急な処分は、不当解雇や不当処分として後に社員から訴えられ、法的なトラブルに発展するリスクがあるためです。

客観的な事実確認と証拠の確保

憶測や感情に流されず、客観的な証拠に基づいて判断します。まずは事実関係を明らかにする証拠を確保します。

  • メールやチャットの履歴
  • 勤怠データ
  • 経費精算システムの記録
  • 防犯カメラの映像

他の社員等からのヒアリング内容も重要な証拠となり得ます。日時・場所・発言内容を詳細に記録し、書面として残しましょう。調査は慎重かつ内密に進めます。

本人への事情聴取(弁明の機会の付与)

証拠を確保したら、必ず本人から直接事情を聴取します。一方的な事実認定は、後のトラブルや法的紛争につながるおそれがあります。

  • 聴取担当者は2名程度で対応する
  • 長時間の聴取は避けて、30分から1時間に留める
  • 高圧的な態度で自白を強要せず、話したくないことは話さなくてよい旨を伝える
  • 聴取の目的を明確にし、議事録を作成して本人に内容を確認させる

懲戒処分の有効性を確保するため、就業規則に規定がある場合は「弁明の機会」の付与が法的に重要です。これを怠ると処分が無効と判断される可能性が高まります。

弁明の機会の付与とは?懲戒処分で必須?企業が知るべき手順と注意点(関連記事)

就業規則の懲戒事由に該当するかを確認

懲戒処分には、その根拠となる規定が就業規則に明確に定められていることが必要です。確保した証拠と事情聴取の内容に基づき、今回の虚偽報告が就業規則上のどの懲戒事由に該当するのかを慎重に照らし合わせます。いずれの懲戒事由にも明記されていない場合、原則として懲戒処分を下すことはできません。

行為に見合った懲戒処分を検討・決定する

証拠・本人の弁明・就業規則の懲戒事由を総合評価し、最も妥当な処分を検討します。

  • 行為の悪質性
  • 会社に与えた損害の程度
  • 本人の反省の度合い
  • 過去の処分事例との公平性

処分が重過ぎると、社会通念上の相当性を欠くとして無効になる可能性があります(労働契約法15条)。処分決定時には「懲戒処分通知書」で、処分の内容・根拠となる事実・就業規則の該当条文を明確に記載して通知します。

虚偽報告をした社員への処分、その進め方で本当に大丈夫ですか?

「嘘をついた」という心証だけで処分すると、証拠不十分で処分無効や損害賠償のリスクがあります。事実調査の進め方から処分の重さの判断まで、企業側の立場で弁護士・中小企業診断士がサポートします。初回相談30分無料。

虚偽報告に対する懲戒処分の種類と選択の注意点

処分の重さが社会通念上不相当であると判断された場合、その処分が無効となる可能性があるため、決定には細心の注意が必要です。

懲戒処分の種類一覧

懲戒処分は、違反の軽重に応じて、一般に軽いものから重いものへ段階的に定められています。

戒告最も軽い
譴責
減給
出勤停止
降格
諭旨解雇
懲戒解雇最も重い
← 軽  処分の重さ  重 →
処分種類概要
戒告厳重注意を行い、将来を戒める処分です。
譴責始末書の提出を求め、将来を戒める処分です。
減給賃金の一部を減額する処分です(労働基準法に上限があります)。
出勤停止一定期間の出勤を停止し、その間の賃金を支給しない処分です。
降格役職や職位を引き下げる処分です。
諭旨解雇従業員に自主的な退職を促し、応じない場合は解雇とする処分です。
懲戒解雇企業が最も重いと判断した場合に、従業員を即時解雇する処分です。

懲戒処分とは|懲戒処分の種類・流れや厳重注意(関連記事)

懲戒解雇を選択する場合の判断基準

懲戒解雇は最も重い処分であり、裁判所はその有効性を極めて厳格に判断します。安易な懲戒解雇は「解雇権の濫用」と見なされ無効と判断される危険性があります(労働契約法16条)。裁判所は以下の要素を総合的に考慮します。

  • 虚偽報告の悪質性(計画性、常習性、動機など)
  • 会社が被った損害の大きさや影響
  • 従業員の役職や責任の重さ
  • 本人の反省の有無や態度
  • 過去の勤務態度や懲戒処分歴

解雇が無効となると、会社は解雇時から解決までの賃金(バックペイ)などの経済的負担を負うリスクがあります。

懲戒解雇の会社側のデメリットとは(関連記事)

虚偽報告・嘘つき社員への対応でよくある質問(FAQ)

Q.一度きりの軽微な虚偽報告でも懲戒処分できますか?
A.いきなり懲戒解雇などの重い処分を行うと、社会通念上の相当性を欠くとして無効と判断されるおそれがあります。まずは口頭注意や戒告・譴責といった軽い処分にとどめ、改善が見られない場合や悪質性が高い場合に段階的に重い処分を検討するのが原則です。
Q.虚言癖のある社員にはどう対応すべきですか?
A.「虚言癖」という主観的な評価だけで処分することはできません。個別の虚偽報告について客観的な証拠に基づき事実を確認し、就業規則の懲戒事由に該当するかを一件ずつ判断します。繰り返される場合は都度記録を残し、指導や処分歴を積み重ねておくことが、後の重い処分の有効性を支えます。
Q.虚偽報告はコンプライアンス違反になりますか?
A.虚偽報告は社内規程・就業規則に反するだけでなく、内容によっては詐欺罪や業務妨害罪などの法令違反に発展し得るコンプライアンス上の問題です。放置すれば組織全体の規範意識の低下を招くため、軽微に見えても記録・是正しておくことが重要です。
Q.社員が事故や交通違反を会社に報告しなかった場合は?(報告義務違反)
A.就業規則や誓約書で報告義務を定めている事項について故意に報告しなかった場合は、報告義務違反として懲戒事由に該当し得ます。ただし処分の重さは、報告義務の内容の明確さ、隠蔽の意図、業務への影響などを踏まえて判断します。
Q.虚偽報告で会社が受けた損害は本人に請求できますか?
A.労働契約上の債務不履行(民法415条)または不法行為(民法709条)に基づき損害賠償を請求できる場合があります。ただし、労働者への賠償請求は信義則上相当な範囲に制限される傾向があり、全額が認められるとは限りません。
Q.社員が「嘘の報告をした」と認めない場合はどうすれば?
A.本人が否認する場合こそ、メール・勤怠データ・経費記録・関係者の聴取記録などの客観的な証拠が重要になります。自白を強要すると手続の違法性やハラスメントを問われるおそれがあります。証拠に基づいて事実認定を行い、弁明の機会を付与したうえで就業規則に沿って処分の要否を判断しましょう。

まとめ:社員の虚偽報告には毅然とした態度で適正な手続きを

社員による虚偽報告は、個人の問題に留まらず、組織全体の信頼関係を深く損なうだけでなく、職場規律の乱れ、他の従業員のモチベーション低下、さらには経済的損害や企業の社会的信用の失墜、場合によっては詐欺罪や業務妨害罪といった刑事責任の問題にまで発展し得る深刻なリスクを引き起こします。

このような虚偽報告が疑われる場合、会社は感情的・場当たり的な対応を避け、冷静かつ客観的に適正な手続きを踏むことが不可欠です。これらの手続きのいずれかに不備があった場合、処分が無効と判断され、かえって法的トラブルに発展するリスクがあるため、細心の注意が求められます。

また、社員がミスや課題を一人で抱え込まず、安心して報告できる健全な職場環境を構築することが、結果として組織全体の信頼性と生産性の向上に繋がるでしょう。

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