出勤停止処分とは?期間の上限・給与の扱い・自宅待機との違いを弁護士が解説

更新日: 2026.11.08
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企業法務/労務・懲戒

出勤停止処分とは、雇用契約を維持したまま、労働者の出勤を一定期間禁止する懲戒処分です。本人の責めによる処分のため、停止期間中は賃金を支給しないのが通常ですが、処分が重すぎたり期間が長すぎると無効となり、賃金をさかのぼって支払う義務が生じることがあります。

出勤停止と自宅待機・減給の違い、有効とするための3条件、期間の上限の考え方、期間中の給与の扱い、通知書の書き方、処分後の退職勧奨まで、企業経営者の視点で弁護士が解説します。

まず結論

出勤停止の期間中、給与は支払う必要がありますか?

原則として支払う必要はありません。懲戒処分としての出勤停止は、ノーワーク・ノーペイの原則により停止期間中の賃金を支給しないのが通例です。ただし就業規則に「出勤停止期間中の賃金は支払わない」旨を定めておくべきです。

出勤停止の期間に上限はありますか?

法律上の上限規定はありませんが、実務では7労働日程度とする例が多く、長くても1か月以内が無難です。問題行為の重さに比べて長すぎる出勤停止は、公序良俗(民法90条)に反し相当性を欠くとして無効になり得ます。

自宅待機命令と何が違いますか?

出勤停止は制裁としての懲戒処分、自宅待機命令は調査などのための業務命令で懲戒処分ではありません。自宅待機は原則として賃金の支払いが必要です。

この記事の根拠となる主な条文・判例
  • 出勤停止=懲戒処分(労働契約法15条の枠組み。客観的合理的理由と社会通念上の相当性が必要)。期間が長すぎると公序良俗違反(民法90条)で無効。自宅待機中の賃金=危険負担(民法536条2項)。
  • 出勤停止に伴う賃金不支給は減給の制裁(労働基準法91条)の上限規制の対象外(パワーテクノロジー事件 東京地判平15.7.25)。期間の相当性につき行政解釈 昭23.7.3基収2177号、ダイハツ工業事件(最判昭58.9.16)ほか。
  • 懲戒処分として出勤停止を行うには、就業規則に懲戒の種類・程度を定めておく必要がある(労働基準法89条9号。作成・変更時は同90条の意見聴取・届出)。

出勤停止処分とは

出勤停止処分とは、雇用契約を維持しながら、労働者の出勤を一定期間禁止する懲戒処分をいいます。俗に「自宅謹慎」と言われることもあります。労働者本人の責任で課される懲戒処分であるため、出勤停止期間中は給与が支給されないのが通常です。

自宅待機との違い

自宅待機は、出勤停止処分とは異なり、通常は懲戒処分ではありません。懲戒処分が決定されるまでの調査・証拠隠滅の防止・職場への悪影響の防止を目的として、一定期間出勤を制限する業務命令です。懲戒処分ではない以上、自宅待機中は原則として賃金が支払われます。

比較項目出勤停止(懲戒処分)自宅待機命令(業務命令)
性質制裁としての懲戒処分調査等のための業務命令
賃金原則不支給(ノーワーク・ノーペイ)原則支払い必要
無給にできるか懲戒処分として当然に無給就労を拒む正当な理由がない限り無給にできない(民法536条2項)
有給の自宅待機を後から無給の出勤停止に振り替えることはできない:事故・不正の再発や証拠隠滅の危険など、就労を拒む正当な理由がない無給の自宅待機は、民法536条2項により会社は賃金支払義務を免れません。まずは有給の自宅待機とするのが安全で、すでに経過した期間を対象に出勤停止処分を行うことはできないと解されています(医療法人光愛会事件・大阪地判平20.11.6)。

出勤停止処分をするための3つの条件

出勤停止処分が有効となるには、他の懲戒処分と同様、次の3つを満たす必要があります。

  • ① 出勤停止の理由となる問題行為があること……就業規則に懲戒事由が定められ、その懲戒事由にあたる問題行為が客観的な証拠から認定できること。
  • ② 出勤停止が重すぎない相当な処分であること……問題行為の内容に照らして相当であること。軽微な問題行為には十分な改善の機会を付与していること。
  • ③ 停止期間が長すぎないこと……期間が長すぎると無効になり得る。

停止期間の上限の考え方

法律上、出勤停止期間の上限を定めた規定はありません。もっとも、行政解釈でも「公序良俗の見地より当該事犯の情状の程度等により制限のあるべきことは当然である」とされており(昭和23年7月3日基収2177号)、事案の重さに比べて相当な期間を超える出勤停止は、民法90条の公序良俗違反として無効となり得ます。

実務の目安は7労働日:戦前の工場法が出勤停止を7労働日と規定していた名残から、就業規則で「7労働日以内」と定める例が多くみられます(労政時報3949号の調査でも「7日」「10日」が各31.6%で最多)。労働者の不利益を考えると1か月以内を限度とするのが無難です。なお業務命令拒否を理由とする20日間の出勤停止を相当として是認した最高裁判例もあり(ダイハツ工業事件・最判昭58.9.16)、情状によっては最長1か月程度まで認められる余地があります。出勤停止の日数は暦日ではなく出勤日で数えるのが原則です(パワーテクノロジー事件・東京地判平15.7.25)。

出勤停止処分が有効とされた裁判例

相当と判断された例

・上司への暴行を理由とする出勤停止3日(東京地判平23.11.9/面談中に上司の首をつかみメガネを投げるなどの暴行)
・出張命令の拒否を理由とする出勤停止9日(静岡地判昭46.8.31/3か月の応援出張命令を拒否)
・職務の放棄を理由とする出勤停止7日(パワーテクノロジー事件・東京地判平15.7.25)

出勤停止処分が無効とされた裁判例

社会福祉法人七葉会事件(横浜地判平10.11.17)

内科医長が運営方針に従わなかったこと等を理由とする3か月の停職処分について、前回の懲戒処分(訓告)から4〜5年後のものであること、患者に直接損害を与えるものではないことなどから、3か月もの停職は重すぎる処分として無効と判断されました。

同じ日数でも、非違行為の内容や悪質性によって有効・無効の判断は分かれます。処分の相当性は、行為の重さと期間のバランスで慎重に判断する必要があります。

出勤停止処分の進め方と通知書の書き方

出勤停止処分は、次の手順で進めます。調査のために出勤を止める必要があるときは、まずは有給での自宅待機とするのが安全です。

  • ① 問題行為の調査証拠の収集・関係者からの聴き取り
  • ② 本人への弁明の機会の付与言い分を聴く機会を設ける
  • ③ 処分内容の決定就業規則の手続き規定があればそれに従う
  • ④ 処分の通知出勤停止処分通知書を交付

処分の通知は、口頭ではなく出勤停止処分通知書(懲戒処分通知書)を交付して行います。通知書には次の事項を記載します。

  • 処分の対象となる問題行為(日時・内容を具体的に)
  • 処分の内容(出勤停止)と停止期間(開始日・終了日)
  • 適用する就業規則の条文
  • 停止期間中の賃金を支給しない旨
  • 停止期間満了後の出勤に関する指示

交付の際は、通知書の写しに受領の署名をもらい、記録として残しておきます。

出勤停止が無効となる場合の会社の不利益

出勤停止の懲戒処分が無効となると、会社にはさまざまな不利益・負担が生じます。

① 賃金を支払う経済的な負担:出勤停止が無効となれば、使用者の責めで労働者が出勤できなかったことになり、民法536条2項により労働者は出勤停止期間中の賃金を請求できます。期間が長期にわたる場合や、出勤停止とするだけの十分な理由がない場合は無効となります。
② 労働紛争に対応するための負担:弁護士に一任しても丸投げはできず、企業側担当者も事情の聞き取りや労働審判への同行といった負担を求められます。
③ 社員のモチベーション低下:処分が紛争化し裁判所で争われると、従業員の不安を招き企業秩序が不安定になります。放置すると離職や評判悪化につながります。

出勤停止期間中の給与は支払う必要はない

出勤停止期間中、企業は労働者に対して給与を支払う必要はありません。出勤停止により労働者は労務を提供できず、ノーワーク・ノーペイの原則のとおり賃金を支払う必要がないためです。この労務の不提供は労働者側の責めに帰すべき事由によるものですので、危険負担(民法536条2項)の問題も生じません。

就業規則への明記が重要:労働者の不利益の大きさを考えると、就業規則に「出勤停止期間の賃金は支払わない」と定めておくべきです。特に完全月給制の会社では、この規定がないと賃金控除の可否をめぐる争いが生じ得ます。

なお、出勤停止に伴う賃金の不支給は、労働基準法91条が定める減給の制裁の上限(1回につき平均賃金の半日分まで)の適用を受けないと解されています。賃金不支給は制裁としての出勤停止に当然に伴う結果であり、労務の提供を受領しながら賃金を減額する「減給」とは性質が異なるからです(パワーテクノロジー事件・東京地判平15.7.25)。そのため期間中の無給額が平均賃金の半日分を超えても91条違反にはなりませんが、その分、労働者の不利益は処分自体の相当性(期間が長すぎないか)の判断で厳しく考慮されます。

出勤停止処分の後に退職勧奨はできるか

退職勧奨は懲戒処分ではないため、出勤停止処分の後に行うこと自体は二重処分には当たりません。ただし、出勤停止を退職強要の手段とすることは違法となるリスクがあるため、本人の自由な意思を尊重した適法な進め方が必要です。

よくある質問(FAQ)

出勤停止の期間中、給与は支払う必要がありますか?
懲戒処分としての出勤停止では、ノーワーク・ノーペイの原則により停止期間中の賃金を支給しないのが通例です。ただし、就業規則に「出勤停止期間中の賃金は支払わない」旨を定めておくべきです。
出勤停止と自宅待機命令はどう違いますか?
出勤停止は制裁としての懲戒処分ですが、自宅待機命令は調査などのための業務命令であり懲戒処分ではありません。自宅待機の場合は原則として賃金の支払いが必要で、無給とするには就労を拒む正当な理由が必要です。
出勤停止の期間に上限はありますか?
法律上の上限を定めた規定はありませんが、実務では7労働日程度とする例が多く、長くても1か月以内が無難です。問題行為の重さに比べて長すぎる出勤停止は、公序良俗(民法90条)に反し相当性を欠くとして無効と判断されるリスクがあります。
出勤停止処分の後に退職勧奨をしてもよいですか?
退職勧奨は懲戒処分ではないため、出勤停止処分の後に行うこと自体は二重処分には当たりません。ただし、出勤停止を退職強要の手段とすることは違法となるリスクがあるため、本人の自由な意思を尊重した適法な進め方が必要です。

出勤停止処分のご相談は難波みなみ法律事務所へ

出勤停止は賃金不支給を伴う重い処分で、理由や期間を誤ると無効となり賃金の遡及払いのリスクがあります。処分の相当性・期間設定、通知書の作成、就業規則の整備まで、企業側の立場で支援します。大阪・なんば/心斎橋の難波みなみ法律事務所へ。初回相談30分無料・来所不要・zoom/電話対応。

※本記事は一般的な解説であり、個別の事案では出勤停止処分の有効性は具体的な事情により異なります。処分の相当性・期間設定、就業規則の整備、通知書の作成については、監修弁護士(難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝/大阪弁護士会)にご相談ください。

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