退職勧奨とは?適法な進め方・解雇との違い・注意点を弁護士が解説

更新日: 2026.07.17
問題社員 退職勧奨とは 退職勧奨の注意点

退職勧奨(たいしょくかんしょう)とは、会社が従業員に対して、自発的に退職することを促す働きかけのことです。俗に「肩たたき」とも呼ばれます。会社が一方的に労働契約を終了させる「解雇」とは異なり、あくまで従業員の合意による退職を目指すもので、退職勧奨そのものは適法に行うことができます。

日本の労働法制では、会社から一方的に従業員の解雇をすることについては規制が強く、かなりハードルが高いです。法律上の要件を満たしていないと、違法となり解雇が無効となったり、損害賠償を請求されてしまうリスクがあります。

そのため、会社の健全な経営を実現するために会社を辞めてもらいたい従業員がいる場合でも、なかなか解雇の選択肢をとることはできないことが多いです。このような解雇規制のリスクを回避するために、退職勧奨というものを行うことがあります。

ただし、退職勧奨も進め方を誤れば違法な「退職強要」と評価され、慰謝料が発生したり、いったん成立した退職の効力が否定されたりするリスクがあります。本記事では、退職勧奨とは何かを確認したうえで、そのメリットや適法な進め方、違法になるパターン、退職後の会社都合・離職票の扱いまで解説します。

本記事を読んで分かること

  • 退職勧奨と解雇の違い、退職勧奨を行うメリット
  • 退職勧奨の理由として認められやすいケースと注意すべきケース
  • 退職勧奨の具体的な進め方と、違法と判断される3つのパターン
  • 従業員が退職勧奨に応じない場合の対応方法と、会社都合・離職票の扱い

目次

1. 退職勧奨とは

退職勧奨は「たいしょくかんしょう」と読み、「肩たたき」と呼ばれることもあります。退職勧奨は、会社を辞めてもらいたい従業員に対して、会社と従業員の相互の合意による退職を促すものです。

解雇が、会社からの一方的な意思表示によって雇用契約を解除するものです。これに対して、退職勧奨は、あくまで会社と従業員の双方の合意によって雇用契約を終わらせることを促すに過ぎず、従業員の側が応じない限り、退職をさせることはできない点が大きく異なります。

退職勧奨・解雇・希望退職の違い
退職勧奨解雇希望退職の募集
性質個別の従業員に退職を促す働きかけ会社による一方的な契約解消退職者を広く募る制度
従業員の意思応じるかは自由。拒否できる同意は不要応募するかは自由
法的な制限執拗・強圧的な勧奨は違法(退職強要)客観的合理性・社会的相当性がなければ無効募集条件の設計・説明に配慮が必要
離職票の扱い原則、会社都合(特定受給資格者)会社都合原則、会社都合

2. 退職勧奨をするメリット

使用者は、従業員がたとえ問題社員であっても、安易に解雇処分とするのではなく退職勧奨を先行させるべきです。

退職勧奨には多くのメリットがあります。

退職者との紛争を予防する

すでにみたとおり、退職勧奨は、あくまで従業員との合意を目指すものであり、強制的に退職させるものではありません。

そのため、退職勧奨により従業員が退職する場合には、従業員も納得の上で退職したこととなるため、後から適法性を争われる可能性が低く、万一争われても違法となるリスクを抑えることができます。

改善の機会となる

従業員が退職勧奨に応じなかった場合でも、従業員に対して改善を促すよう注意する機会となり、結果的に従業員の問題が解決することもあります。

解雇による不利益を回避できる

解雇は、退職勧奨を経た後でも行うことができます。

解雇とすることができるほどの理由があるのであれば、一度退職勧奨を試し、それが難しい場合に解雇に踏み出すことで、解雇のリスクを可能な限り避けることができます。

解雇のリスクとは

解雇が有効となるためには、合理的な解雇理由が存在し、社会的に相当といえることを要します。

解雇が無効となれば、使用者は多くの負担を負います。

一つ目は、解雇処分から解決時までの給与相当額の合計を負担する必要があります。

二つ目は、解決金の支払いが必要となります。解雇が無効となれば、雇用契約は存続していることになります。しかし、従業員との信頼関係は破綻していることがほとんどですので、従業員と退職の合意をします。この合意退職の対価として解決金を支払う場合があります。

三つ目は、企業の社会的な評価が毀損するおそれがあります。人材の流出や新規採用が困難になるリスクがあります。

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3. 退職勧奨の理由

退職勧奨に馴染みやすい理由もあれば、退職勧奨せずに、解雇処分を選択せざるを得ないこともあります。他方、理由によっては、退職勧奨すると、法令の趣旨に抵触することもあります。

3-1. 能力不足

まず考えられるのが能力不足です。

従業員が担当する業務に必要な能力を備えていないと、会社としては人件費が無駄となってしまいます。そのため能力が不足する従業員に対して退職を望む場合は少なくないでしょう。

しかしながら、業務に必要な能力は、客観的な基準で測れない場合がほとんどで、能力不足を理由に直ちに解雇とすることは難しいです。

そこで、退職勧奨をして能力不足を指摘し、その従業員によりあった職場に転職することなどを勧めることが考えられます。

能力不足を理由とする退職勧奨の適法性や進め方については、能力不足の社員への退職勧奨は違法?適法に進める手順と注意点を解説の記事で詳しく解説しています。

3-2. 協調性欠如

会社での仕事は同僚とのチームワークが必要になることが多いでしょう。

単独での能力は十分でも、チームワークの精神が乏しく、協調性を欠くような従業員は、職場の秩序を乱し、他の従業員にも悪影響を及ぼすこともあります。

このような場合も、健全な会社経営のために退職を望む場合は多いと考えられますが、協調性の欠如も客観的には評価が難しいため、直ちに解雇することはリスクもあります。そこで、協調性の欠如を指摘して退職勧奨をすることが考えられます。

3-3. ハラスメント

昨今、セクシャルハラスメントやパワーハラスメント等のハラスメントに対する世間の目は日に日に厳しくなっています。

ハラスメントを放置しておくと職場環境が害されるだけでなく、会社の管理責任を問われる場合もあります。そのためハラスメントの傾向のある従業員に対しては、退職勧奨をして職場環境の保全をはかることが考えられます。

3-4. 会社の業績悪化

会社の業績が悪化したり、悪化しそうな場合、人件費を削減するために整理解雇を行うことがあります(いわゆるリストラ)。

しかし、整理解雇も一方的な会社の意思表示で行うものであるため、解雇の一種として一定の法律上の要件を満たす必要があり、違法となるリスクがあります。

そこで、整理解雇のリスクを回避するため、整理解雇とする前に、希望退職を募ったり、一部の従業員に対して退職勧奨をして合意退職をさせることで、人件費を削減することが考えられます。

3-5. 就業規則違反

遅刻、欠勤、業務命令違反などの就業規則違反をした場合、内容や程度にもよりますが、懲戒解雇等とするにはハードルが高い場合がほとんどです。

そうはいっても、このような違反を何度も重ねる従業員がいては、適切な業務運営の妨げになり、他の従業員に対しても悪影響がでるおそれもあります。このような場合にも、退職勧奨をすることが考えられるでしょう。

3-6. 退職勧奨を行うタイミング — 注意指導を尽くしてから

退職勧奨は法的にはいつでも行うことができ、注意指導を経ずに行っても直ちに違法となるわけではありません。しかし実務的には、まず問題点の注意指導を徹底し、それでも改善が見られないという状況を作ってから退職勧奨に進むのが王道です。理由は3つあります。

第一に、問題社員は自分の問題点を自覚していないことが多く、いきなり退職を切り出すと「不当な扱いだ」と受け止められて紛争化しやすいためです。第二に、指導を尽くしても改善しなかったという記録があれば、「応じない場合には解雇や配置転換を検討せざるを得ない」という説明に法的な裏づけが伴い、説得力が生まれるためです。第三に、勧奨が不調に終わった場合でも、その後の人事労務管理(配置転換や解雇の検討)を進めやすくなるためです。

逆に、退職勧奨を拒否された直後に配転や出向を命じると、それ自体は正当な人事であっても「退職に追い込む嫌がらせだ」と主張されるリスクが高まる点にも注意が必要です(後述)。

4. 退職勧奨の理由とするべきではないケース

退職勧奨は、従業員の意思に基づく退職を促すもので、一方的に雇用契約を終了させる解雇とは異なります。しかし、退職勧奨といえども、制限なく退職勧奨できるものではありません。

4-1. 結婚を理由とする退職勧奨

男女雇用機会均等法9条2項では、「女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない」と定められています。

退職勧奨は解雇ではありませんが、男女雇用機会均等法の趣旨から、婚姻を理由とする退職勧奨は違法となるのが原則です。

4-2. 妊娠や出産を理由とした退職勧奨

男女雇用機会均等法9条3項は「女性労働者が妊娠したこと、出産したこと…を理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない」と定め、4項は「妊娠中の女性労働者及び出産後1年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする」と定められています。

そのため、妊娠を理由とする退職勧奨は、均等法の趣旨に反するものであり、違法となります。

4-3. メンタル不調が明らかな従業員への退職勧奨

従業員の精神状態の悪化が明らかな場合に無理な退職勧奨を行うことも、控えるべきです。うつ病で休職から復職した従業員への退職勧奨が違法とされ、その後の症状悪化が労災に当たるとして休職期間満了退職まで無効とされた裁判例があります(エム・シー・アンド・ピー事件参照)。

療養中・復職直後の従業員に退職を促す場合は、本人の体調への配慮を最優先し、産業医の意見も踏まえて、時期と伝え方を慎重に検討する必要があります。

退職勧奨は、最初の面談の前の準備で決まります

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5. 退職勧奨の進め方

それでは実際に退職勧奨をするにはどうすればよいでしょうか。具体的な手順をみていきましょう。

5-1. 退職勧奨の理由を整理する

まずは退職勧奨をする理由を従業員に対して説明しましょう。

退職勧奨は合意退職を促すものなので、従業員の納得を得ることが重要です。納得ができる理由が説明できなければ、従業員の合意を得ることは難しくなってしまうでしょう。

伝え方の基本は、感情的な叱責ではなく、従業員の問題点を具体的な事実に基づいて淡々と指摘し、「改善できないのであれば退職を検討してほしい」と伝えることです。あくまで「改善してほしい」という点に力点を置くアプローチが、従業員の納得を得やすく、違法と評価されるリスクも小さくなります。

5-2. 面談室にて退職勧奨の理由を伝える

退職勧奨は、必ず他の従業員が見聞きできない面談室などの個室で行いましょう。

解雇ではないとはいえ、退職勧奨は従業員にとって大変ショッキングなものです。他の従業員が見聞きできる状況で行うと、パワーハラスメントとなってしまう恐れがありますので十分に注意しましょう。

5-3. 従業員の言い分や意見を聞く

繰り返しになりますが、退職勧奨では従業員の合意を得ることが必要です。

納得をさせるためには、従業員側の言い分や意見をしっかり聞く必要があります。これをきちんと聞かないで合意だけ取ったとしても、のちにその合意は真の合意でなかったとして争われるリスクもあります。

また、言い分や意見を聞くことで、その従業員の評価が誤っていることに気が付く場合もありますので、しっかり聞くようにしましょう。

5-4. 退職勧奨に対する回答期限を指定する

退職勧奨をされてその場で判断をできることは稀です。従業員に考える猶予を与える必要があります。

しかしながら、期限を定めないと時間だけ経過してしまい、従業員としても決断をしにくくなってしまいます。回答期限として、従業員が十分に検討できる合理的な期限を設定しましょう。

5-5. 退職合意書の作成

退職勧奨の結果、労働者と退職の合意ができた場合には、労働者との間で退職合意書の作成をします。口頭のみの約定では、言った・言わないの水掛け論となり、退職後の紛争を招いてしまいます。また、簡易な退職届の提出では、合意内容が不明瞭となるため、合意書の作成を行うようにします。

退職の「撤回」を防ぐ — 合意はその場で書面化する

実務上の落とし穴が、退職の撤回です。従業員が退職に応じる意向を示しても、会社が正式に承認して本人に伝えるまでの間は、法的には退職の意思表示を撤回される余地が残ります。退職届の準備や押印手続きに時間をかけている間に「やはり退職しません」と翻意され、撤回が有効と認められた裁判例も複数あります。

これを防ぐための実務対応は次の2点です。

  • 合意書はあらかじめ用意しておく — 退職勧奨の面談前に退職合意書を2通作成して会社側の記名押印を済ませておき、従業員が応じたその場で署名してもらう
  • 口頭の退職意思にも即応する — 「退職します」との発言があった場合は、権限のある者が速やかに承認し、承認したことを本人に伝えて、その記録(メール等で構いません)を残す

5-6. 合意書の内容

合意書の内容は、退職後の紛争予防のために必要な規定を盛り込みます。

まず、退職の時期を明記します。つぎに、離職理由として、会社都合とするのか自己都合とするのかを明記します。退職金、追加退職金、有給休暇の買い取りなどの退職条件に関する規定を明記します。秘密情報の取り扱いや口外を禁止する規定を設ける場合には、明記します。

最後に、使用者と労働者との間に、何らの債権債務関係が存在しないことを確認する清算条項を定めます。

合意書の具体的な作り方は、退職勧奨時の退職合意書の作成方法と作成理由で詳しく解説しています。

6. 退職勧奨の注意点 — 違法と判断される3つのパターン

退職勧奨は従業員にとって重大な出来事です。慎重な対応が必要になるため、その注意点を理解して臨みましょう。

退職勧奨が、社会的に逸脱した態様で、労働者に不当な心理的圧力を加えたり、または、名誉を不当に害するような表現を用いるなどして行われた場合には、不法行為として損害賠償の対象にもなる可能性があります。裁判例を整理すると、違法と判断されるのは大きく次の3つのパターンです。

パターン① 発言内容が行き過ぎている

人格を否定する罵倒や侮辱を伴う退職勧奨は、違法とされることがあります。裁判例では、対象者を侮辱する発言を繰り返しながら大声を出すなどの威圧的な態様で行われた勧奨や、屈辱的な表現を用いた書面の配布を伴う勧奨について、違法性が認められています。

一方で、発言の一部だけを切り取って直ちに違法とされるわけではありません。全体としては従業員の問題点を指摘して改善を求めることが主眼といえる場合には、表現に多少行き過ぎがあっても違法とされなかった裁判例もあります。ポイントは、罵倒で辞めさせようとするのではなく、具体的な問題点の指摘と改善要求を軸に据えることです。

パターン② 事実ではない「不利益」をちらつかせる

「退職しないなら懲戒解雇になる」と告げて退職届を出させる手法は、典型的な危険パターンです。実際には懲戒解雇が到底できない事案でこのような発言をすると、従業員を誤信させて退職させたことになり、勧奨が違法となるだけでなく、いったん提出された退職届自体が錯誤により無効とされる可能性があります。軽微な非違行為しかない従業員に「このままでは懲戒解雇に当たる」と告げて依頼退職させた事案で、退職の効力が否定された裁判例があります(学校法人徳心学園(横浜高校)事件、富士ゼロックス事件参照)。

応じない場合に想定される将来の見通し(解雇や配置転換の検討など)を伝えること自体は許されますが、それは実際にその措置を適法に取り得ることを事前に検討してあることが前提です。事実に反することや誤解させることを断定的に述べてはなりません。

パターン③ あまりにも執拗に繰り返す

従業員が退職しない意思を明確にしているのに、その後も面談を何度も重ねて退職を迫ると、違法性が認められやすくなります。リーディングケースである下関商業高校事件(最高裁昭和55年7月10日判決)では、退職に応じない意思を明確に表明した教員らに対し、数か月間にわたり十数回もの勧奨を繰り返したことが違法とされました。

もっとも、拒否された後の勧奨が一切許されなくなるわけではなく、社会通念上相当な範囲での再説明や条件の再提示までは認められる余地があります。ただ、退職しない意思を明確にした従業員が翻意する可能性は高くなく、法的リスクを冒してまで勧奨を続ける実益は乏しいのが実情です。明確に拒否されたら、いったん引くことを原則としてください。

6-1. 大人数の同席はNG

一人の従業員に対して、大人数で退職勧奨をすることは、非常に強い精神的なプレッシャーとなります。

パワーハラスメントとなってしまうリスクもありますし、最終的に退職に合意したとしても、無理矢理合意させられたとして、その合意の有効性を争われてしまうリスクもあります。退職勧奨をする際は、多くても2、3名程度で行うようにしましょう。

6-2. 長時間の面談はNG

従業員の側がなかなか納得をする様子がないからといって、長時間にわたって面談することは避けましょう。

退職勧奨を長時間行うことはそれ自体がパワーハラスメントに当たる可能性がありますし、退職に合意したとしてもその合意の有効性を争われてしまうリスクもあります。長くなりそうな場合は、日を改めて行うなど従業員に対して配慮をしましょう。

6-3. その場で結論を求めることはNG

退職勧奨をしたその場で結論を求めることは避けましょう。

すぐに判断をすることはできませんし、そこで出させた結論には、後から争われるリスクがあります。上記のとおり、回答期限を設けて、一定の猶予期間を与えて従業員に判断をさせましょう。

6-4. 退職勧奨に応じなければ解雇するはNG

退職勧奨に応じなければ解雇する、退職金を支給しないと述べて、退職勧奨に応じさせることは、退職の強要に繋がるため回避しなければなりません。

退職勧奨は、あくまでも労働者の自由な意思を尊重しなければなりません。労働者が結論を保留したり退職勧奨を拒否しているのに、無理矢理応じさせようとすると、違法な退職強要となります。

6-5. できれば録音しておく

退職勧奨の際にどのようなやり取りがあったのかは、後々裁判などの争いになったときに重要な争点となる可能性があります。退職勧奨の際には、可能な限り録音をしておきましょう。

6-6. 拒否された直後の配転・出向は「追い出し目的」と見られやすい

退職勧奨を拒否された直後に配転や出向を命じると、それが本来は正当な人事であっても、「勧奨を拒否した報復だ」「追い出し部屋だ」と主張されるリスクが高まります。特に、業務上の必要性が乏しく、従業員に与える不利益が大きい配転(大幅な賃下げや屈辱的な業務への転換など)は、退職に追い込む目的と認定されやすい傾向があります。退職させる目的での配転が違法とされ、慰謝料の支払いが命じられた裁判例もあります(バンク・オブ・アメリカ・イリノイ事件参照)。

勧奨が不調に終わった後に人事異動を検討する場合は、業務上の必要性を客観的に説明できるか、時期を置くべきかを慎重に検討してください。

退職勧奨が違法となる具体的なケースについては、退職勧奨が違法になるケースとは?適法に進める手順と注意点を企業向けに解説で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

「拒否された」「言い過ぎたかもしれない」——続ける前にご相談を

退職勧奨は、続けるほどリスクが積み上がる場面があります。今の状況が3つの違法パターンに近づいていないか、次の一手をどうすべきか、企業側専門の弁護士が具体的に助言します。既に面談を始めた後のご相談も歓迎です。初回相談30分無料。

7. 退職勧奨に応じない場合

退職勧奨はあくまでも合意退職を促すものなので、従業員が応じない限り、退職をさせることはできません。

退職の強要となるようなことは、結局解雇と同視されるリスクがあるため避けなければなりませんが、合意退職をより得やすくするために、たとえば退職金を上乗せして支給することや解決金を支払うことなど、従業員にメリットを与えるパッケージを提案することが考えられます。退職勧奨をする前にこのようなパッケージを検討しておくと、従業員の反応をみながら柔軟に対応をすることができます。

退職勧奨に応じない従業員への具体的な対応策については、退職勧奨に応じない場合どうする?具体的な対応策や注意点を徹底解説もご参照ください。

7-1. 退職金の上乗せ

退職勧奨に際しては、退職条件を提示しなければなりません。

従業員が、在籍し続けるよりも退職した方が経済的にもメリットを受けられると感じなければ、退職勧奨は成功しません。そのため、退職勧奨に消極的であれば、通常の退職金に上乗せする退職加算金を提示するのか、提示するとして、どの程度まで加算するのかを精査しておくべくでしょう。例えば、解雇をした場合に解雇が有効となる見通しと、解雇が無効となった場合に想定される使用者の経済的な負担を踏まえて、対象となる従業員に対して負担できる加算金を算出します。

7-2. 有給休暇の買い取り

未消化の有給休暇がある場合、退職予定日までに消化しきれない有給休暇を買い上げることを約束することが通常です。有給休暇の買取りも退職勧奨時の退職条件の一つとなります。

7-3. 再就職の支援

退職勧奨の対象労働者が安心して退職を受け入れられるようにするため、再就職の支援を行います。

従業員が転職活動を行いやすくするために休暇を与えたり、産業雇用安定センターやその他職業紹介会社に再就職支援を委託することで、従業員の不安を払拭します。一定の要件を満たす場合には、使用者は労働移動支援助成金を受けることができます。

7-4. 転職先が決まるまでの雇用契約の延長

転職先が見つかるまでに、退職をしてしまうと、無職の状態で転職活動をしなければならず、転職活動に支障が生じます。そこで、6か月ほど退職時期を延長する優遇措置を講じることがあります。

7-5. 業務の改善を命じる

退職勧奨のパッケージを提示しても、退職に応じない場合には、労働者の解雇を選択することもあります。

ただ、余程の解雇理由ではない限り、解雇処分が無効となる可能性があります。解雇が無効となれば、会社に様々な負担を生じさせます。

そこで、退職勧奨に応じないとしても、すぐに解雇を選択するのではなく、いったん社員の問題点の改善を図るために、3か月から6か月の目標期間とその期間中に達成するべき目標を設定します。目標はできる限り数値化・定量化できるものを採用し、達成不可能な過重な目標にならないように留意します。

目標期間を通じて業務の改善が図れない場合には、再度の退職勧奨や解雇を検討します。

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8. 退職勧奨による退職は「会社都合」— 離職票と失業保険の扱い

退職勧奨に応じて退職した場合、雇用保険上は原則として会社都合退職(特定受給資格者)として扱われます。自己都合退職と比べて、失業保険の給付制限期間がなく給付日数も手厚くなるため、従業員にとって重要な違いです。

離職票の離職理由を実態と異なる「自己都合」と記載すると、後日ハローワークや従業員との間でトラブルになります。また、会社都合退職者を出すと、雇用関係の助成金の受給に影響が生じる場合がある点も、実務上は把握しておくべきポイントです。

会社都合と自己都合の違いや離職票の記載の詳細は、退職勧奨の退職は会社都合!自己都合退職との違いの記事で解説しています。

よくある質問

Q. 退職勧奨と解雇はどう違いますか?

解雇は会社が一方的に雇用契約を終了させるものですが、退職勧奨はあくまで従業員の合意による退職を促すものです。従業員が応じない限り退職させることはできない点が大きな違いです。

Q. 退職勧奨を拒否されたらどうすればよいですか?

従業員が退職勧奨に応じない場合、退職を強要することは違法となるおそれがあります。退職金の上乗せなどの条件を見直すほか、状況によっては解雇を検討することもありますが、その際は退職勧奨に応じない場合どうする?具体的な対応策や注意点を徹底解説を参考に、慎重に対応することが重要です。

Q. 退職勧奨はどのくらいの期間で行うべきですか?

面談は1回あたり長時間にならないよう配慮し、従業員には十分な検討期間を与えることが望まれます。短期間で結論を迫ると、後に合意の有効性を争われるリスクがあるため注意が必要です。

9. 退職勧奨は弁護士に相談を

以上、退職勧奨について解説しました。

退職勧奨をすることは、解雇による法的なリスクを避けるために有効な方法です。しかしながら、退職勧奨にもリスクがないわけではありません。

従業員にとっては重大なことですので、進め方や段取りについて、予めきちんと整理しておき、慎重な対応をするように心がけましょう。

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