就業規則とは?押さえておくべき基礎知識を弁護士が解説

更新日: 2026.09.08
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結論

就業規則とは、職場の労働条件と服務規律を定めた社内のルールブックです。常時10人以上の労働者を使用する事業場には作成と労働基準監督署への届出が義務づけられています(労働基準法89条)。効力の面で重要なのは3つの序列で、法令 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約の順に強く、就業規則を下回る労働条件を定めた個別契約は、その部分が無効となり就業規則の基準に引き上げられます(労働契約法12条)。そして周知して初めて効力が生じます。届出だけでは足りません。作成義務違反には30万円以下の罰金が定められています。

この記事のポイント

  • 就業規則は、労働条件と服務規律を定めた職場のルールブック
  • 常時10人以上の事業場は作成と労働基準監督署への届出が義務(労働基準法89条)
  • 効力の序列は「法令>労働協約>就業規則>労働契約」
  • 就業規則を下回る労働条件の個別契約は、その部分が無効になる(労働契約法12条)
  • 周知して初めて効力が生じる。届出だけでは足りない
  • 作成・届出義務に違反すると30万円以下の罰金(労働基準法120条)
常時10人以上の従業員を雇用する企業では「就業規則」を作成しなければなりません。 就業規則を作成しなかったり労働基準監督署へ届け出なかったりすると、罰則も適用されてしまう可能性があります。 また就業規則は社内でのトラブルを防いだりトラブル解決の指針となったりする役割も果たします。自社の状況やニーズに応じた就業規則を作成しましょう。 この記事では就業規則の基礎知識をご説明します。自社に就業規則のない方、就業規則を改定したい方などはぜひ参考にしてみてください。
この記事のポイント
  • 常時10人以上の従業員を雇用する企業は就業規則の作成・届出が義務付けられている
  • 作成・届出を怠ると30万円以下の罰金刑が科される可能性がある
  • 就業規則は作成するだけでなく、従業員への周知も必要
  • 就業規則は社内秩序の維持やトラブル対応、会社の利益保護に役立つ

1.就業規則とは

就業規則とは、労働者に適用される給与規定や労働時間などの労働条件、労働者が守るべき社内のルールなどをまとめた規則です。 「労働者の就業に関して社内に通用する規定」と考えると良いでしょう。 就業規則には最低限記載しなければならない事項などが法律で決められています。

1-1.就業規則を作成しなければならない場合

以下のような場合、就業規則の作成が義務付けられています。
  • 常時10人以上の従業員を雇用している企業
上記の「従業員」には正社員だけではなく契約社員やアルバイト、パート社員も含まれます。 一方、業務委託の社員や派遣労働者、繁忙期のみ勤務する臨時社員などは含まれません。

1-2.就業規則は事業所ごとに作成する

就業規則は事業所ごとに作成して備え付けなければなりません。 たとえば本社の他にいくつか営業所や支社がある場合、他の営業所や支社にもそれぞれ就業規則を備え付ける必要があります。漏れが生じないように注意しましょう。 また就業規則は、作成するだけではなく労働基準監督署への提出が義務付けられています。 作成するだけでは違法となってしまうので、就業規則を作成したら、すぐに労働基準監督署へ提出しましょう。 (作成及び届出の義務) 労働基準法第89条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。

1-3.就業規則は周知にしなければならない

就業規則を作成して労基署に届け出たら、その就業規則を従業員に周知させなければなりません。 いつでも閲覧できる状態にするか、書面などで交付する必要があります。 具体的には以下のような措置をとると良いでしょう。
  • 従業員の見やすい場所に掲示する
  • 固定の場所に備え付ける
  • 従業員に書面で交付する
  • コンピュータ上などに保存して、従業員がいつでもアクセスできるようにしておく
スマート顧問
項目 内容
作成義務 常時10人以上の労働者を使用する事業所は作成が必要
届出義務 作成後、遅滞なく労働基準監督署へ届け出る
周知義務 掲示・備え付け・書面交付・電子データ共有等で従業員に周知する
違反した場合の罰則 30万円以下の罰金刑の対象となる可能性がある

2.就業規則を作成するメリット

企業が就業規則を作成しておくと、以下のようなメリットがあります。

2-1.社内の秩序を保てる

就業規則は社内に通用するルールです。 就業規則があると従業員も会社側もその内容に従って行動するので、社内の秩序が守られやすくなります。会社としても従業員へ会社のルールを遵守するよう求めやすくなるでしょう。 以上のように就業規則を作成すると、社内の秩序維持につながりやすいメリットがあるといえます。

2-2.トラブルが起きても対処できる

就業規則は、労使間で実際にトラブルが起こった場合にも役立ちます。 たとえば以下のような場合にも、就業規則があると解決しやすくなります。
  • 規律違反行為をした従業員を解雇する
  • 転勤を拒否する従業員がいる場合の対応
  • 虚偽の経歴を申告していた従業員の解雇
  • 著しく遅刻や欠勤を続ける社員を懲戒する
転勤命令を拒否された場合の対応は「転勤を拒否した社員の対応は?解雇する前に確認しておきべき注意点を弁護士が解説」、経歴詐称が発覚した場合の解雇可否は「経歴詐称を理由に解雇することができるか?事例別に解説します」で詳しく解説しています。 たとえば懲戒解雇するには、就業規則内に懲戒解雇に関する規定をおいておく必要があります。就業規則内に解雇基準が明確に定められていれば、従業員に問題行動があっても規定をもとに対応を進められます。 就業規則を作成しておくと、従業員と会社のトラブル解決の指針になるメリットがあるといえるでしょう。 懲戒解雇を行う際に必要となる手続きについては「弁明の機会の付与とは?懲戒処分で必須?企業が知るべき手順と注意点」もあわせてご確認ください。

2-3.会社の利益を守りやすい

就業規則を作成しておくと、企業の利益も守りやすくなります。 たとえば自社の従業員が転職する際「顧客情報をはじめとした機密事項を漏洩してはいけない」と定めておくと、従業員が情報持ち出しなどをしにくくなります。 万一持ち出されてしまった場合にも損害賠償請求や差止請求をしやすくなるでしょう。 また就業規則に休職規定をおくと、メンタルヘルスなどの問題を抱えた従業員に対しても適切に対応できます。

2-4.法令遵守しやすくなる

労働関係法令により、現在の企業には数々の措置をとるよう要求されます。 たとえばセクハラやパワハラについては一定の対策をしなければなりません。 あらかじめ法律上の義務について就業規則内に規定しておけば、法令遵守につながります。 就業規則を充実させると、企業が適切に法律を守って運営できるメリットもあるといえるでしょう。 セクハラが発生した際に会社が取るべき具体的な対応は「セクハラ発生時の会社が取るべき対応とは?正しい手順と法的義務、再発防止策まで徹底解説」で解説しています。
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3.就業規則を作成、届出なかった場合の罰則

就業規則の作成義務のある会社が作成や労基署への届出を怠ると、罰則も適用されます。 具体的には30万円以下の罰金刑が科される可能性があります。 就業規則の作成だけではなく、変更した際にも同様に備えつけや労基署への届出が必要になります。届出を怠らないように注意しましょう。

就業規則に関するよくある質問

Q. 従業員が10人未満の会社でも就業規則は作成すべきですか?

法律上の作成義務はありませんが、任意で作成することは可能です。労使トラブルの予防やルールの明確化に役立つため、10人未満の企業でも作成しておくことをおすすめします。

Q. 就業規則を変更する場合も労基署への届出は必要ですか?

必要です。就業規則を変更した場合も、作成時と同様に労働基準監督署への届出と従業員への周知が義務付けられています。

Q. 就業規則の内容が労働基準法に違反していた場合はどうなりますか?

労働基準法などの法律で定める基準を下回る部分は無効となり、その部分には法律上の基準が適用されます。作成・変更の際には最新の法令に沿っているか確認しましょう。 難波みなみ法律事務所では、企業の抱える労働問題解決に力を入れています。就業規則の作成や改定をご検討の場合には、お気軽にご相談ください。

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就業規則の基礎知識に関するよくある質問(FAQ)

就業規則とは何ですか?

職場における労働条件と服務規律を定めた社内のルールブックです。始業終業の時刻、休日、賃金の支払方法、退職や解雇の事由、懲戒の種類などを定めます。個々の労働契約の内容を補い、職場全体に統一的なルールを及ぼす役割を持ちます。

誰に作成義務がありますか?

常時10人以上の労働者を使用する使用者です(労働基準法89条)。人数は企業単位ではなく事業場単位で数え、パートやアルバイトも含みます。10人未満に作成義務はありませんが、懲戒処分が行えないなどの不利益があるため、作成しておくのが実務上は安全です。

労働契約や労働協約との関係はどうなりますか?

効力には序列があります。法令 > 労働協約 > 就業規則 > 労働契約の順です。就業規則は法令や労働協約に反してはならず、反する部分は無効になります。逆に、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定めた労働契約は、その部分が無効となり、就業規則の基準まで引き上げられます(労働契約法12条)。

届け出れば効力が生じますか?

生じません。労働者への周知が必要です。周知の方法は、常時各作業場の見やすい場所への掲示・備付け、書面の交付、社内システムでの閲覧などです(労働基準法106条1項)。「作って届け出たが社内の誰も内容を知らない」状態では、いざというときに効力を主張できません。

何を書かなければなりませんか?

必ず記載する絶対的必要記載事項は、①労働時間関係(始業終業の時刻、休憩、休日、休暇、交替制の就業時転換)②賃金関係(決定・計算・支払の方法、締切りと支払の時期、昇給)③退職関係(解雇の事由を含む)です。加えて、退職金・賞与・表彰と制裁などは、制度を設けるのであれば必ず記載しなければなりません。

作らないと罰則はありますか?

あります。作成義務のある事業場が作成・届出を怠った場合、30万円以下の罰金が定められています(労働基準法120条)。ただし実務上より深刻なのは罰則より、懲戒処分ができない、解雇の根拠を示せない、労働条件が口約束になるといった不利益のほうです。

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