「接待も残業?」と社員に聞かれたら?企業が知るべき労働時間の判断基準と労務管理のポイント

公開日: 2025.09.13
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近年、働き方改革が推進される中で、社員から「接待も残業になるのでしょうか?」といった質問を受けることもあるかもしれません。業務時間外の「接待」への参加は、一見すると業務と直接関係がないように思えるため、労働時間には当たらないと考えるかもしれません。

しかし、会社の指示による参加や、業務遂行上不可欠な「接待」である場合、労働時間とみなされるケースがあります。本記事では、企業が知っておくべき労働時間の判断基準と、適切な労務管理を行うためのポイントを解説します。従業員が安心して働ける環境を作るために、ぜひ参考にしてください。

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接待残業をめぐる労務トラブルと企業が負うリスク

接待が労働時間と判断された場合、企業は多様な労務トラブルに直面する可能性があります。その中でも直接的なリスクとして、従業員からの未払い残業代請求が挙げられます。

そこで、以下では接待に関する労働時間の判断基準を解説した上で、残業代の問題を放置することで生じるリスクを解説します。

まず押さえたい「労働時間」の法的な定義とは

接待が労働時間に該当するかを判断する前に、まず労働時間の法的な定義を正しく理解しておく必要があります。

労働基準法には「労働時間とは何か」を直接定義した条文は存在しません。しかし、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と解釈されています。これは、労働者が会社の明示または黙示の指示のもとで業務に従事する時間を指します。

この「使用者の指揮命令下」にあるかどうかが、労働時間性を判断する上での最も重要な基準となります。労働時間に該当するか否かは、雇用契約や就業規則上の名称や形式によって決まるものではなく、個々の労働者の行為が客観的に見て使用者の指揮命令下に置かれていると評価できるか否かによって判断されるかが重要です。たとえ業務外と明記されていても、実態が伴わなければ労働時間とみなされる可能性があります。

労働基準法における労働時間の考え方

労働基準法第32条では、労働者に対し、休憩時間を除き、1日8時間、1週間40時間を超えて労働させてはならないと定めています。これは、長時間労働を抑制し、労働者の健康と安全を確保することを目的とした、労働条件の最低ラインに位置づけられるものです。

例えば、実作業に従事していない時間帯であっても、来客や電話などに即座に対応する義務があるようなケースでは、使用者の指揮命令下にあると判断されることからも理解できるでしょう。

したがって、労働契約や就業規則で定められた「所定労働時間」と、実際に労働した「実労働時間」は必ずしも一致するとは限りません。たとえ所定労働時間が短く設定されていても、法的な判断においては、使用者の指揮命令下で拘束され、業務に従事した実態があれば労働時間と判断されます。

ポイントは「使用者の指揮命令下」にあるかどうか

労働時間と認められるかどうかの最も重要な判断基準は、「使用者の指揮命令下」に置かれていると客観的に評価できるかという点です。

「指揮命令」は、単に上司からの明確な指示のみに限られず、黙示的な指示も含まれます。たとえば、時間外労働をしていることを知りながら黙認していた場合や所定労働時間内で終わらない業務量を与えている場合、参加しなければ職務上の不利益が生じると示唆する場合などには、「黙示の指示」に該当する可能性があります。就業規則上で業務外とされていても、実態として会社からの強い影響下にある場合は、労働時間とみなされることがあるのです。

接待が労働時間になるか?判断を分ける3つの基準

接待が労働時間と認められるかどうかは、一律のルールで判断できるものではなく、個々の実態に即して判断される非常に複雑な問題です。

接待の場合も、その参加が「使用者の指揮命令下」にあったと評価できるかが、労働時間とみなされるか否かの重要な焦点となるでしょう。ただし、接待の多くは、業務遂行において必ずしも必要とまではいえないことから、労働時間性が否定されるケースが多いのが実情です。

以下では、接待が労働時間に該当するかを3つの基準に沿って検討します。

基準1:参加が義務付けられ、または余儀なくされているか

接待への参加が、上司からの明確な業務命令や指示によって行われた場合、労働時間と判断される可能性があります。特に、会社や上司が接待への参加を積極的に命じている場合には、後述する業務上の高い必要性が認められれば、接待も労働時間に該当する可能性があります。

接待への参加については、明示的な命令だけでなく、事実上の強制も含まれる点です。例えば、以下のような黙示的な強制も、実質的な業務命令とみなされることがあります。

  • 参加しないことで人事評価に不利益が生じる
  • 低評価につながる
  • 上司から嫌味を言われる

一方、社員が自身の意思で自由に不参加を決定でき、それによる就業規則上の制裁や人事評価上の不利益が一切ない場合は、労働時間には該当しにくいと考えられます。このようなケースでは、会社から独立した自主的な活動とみなされるためです。

基準2:接待が業務上必要か

接待が労働時間と判断されるかどうかの重要な基準として、「接待の内容に業務性があるか」という点が挙げられます。つまり、接待の主目的が会社の業務と直接関連しているかどうかが判断のポイントとなります。業務性が認められる接待は、例えば商談、交渉、新製品の説明、業務上必要な情報収集などを目的として行われているものです。

他方で、接待の場で商談や交渉が行われているものの、飲食や飲酒の時間と混在しているような場合には、労働時間として認められないことが多いでしょう。また、参加者同士の親睦を深めることが主目的の慰労会や懇親会など、業務に関する話題が中心でない場合は、業務性が低いと判断されます。

基準3:会社が時間や場所を管理・拘束しているか

接待が労働時間と判断されるか否かを判断する3つ目の基準は、会社が接待の場所、時間、進行などをどの程度管理・拘束しているかという点です。接待の開催場所、開始・終了時刻、進行内容が会社の管理下にある場合、労働時間と判断される可能性が高まります。これは、労働者が「使用者の指揮命令下」に置かれていると客観的に評価されるためです。

一方で、社員に接待する店舗の選定や時間の調整がある程度任され、個人の裁量が大きく認められている場合は、会社による拘束が軽微であるとされ、労働時間には該当しにくい傾向があります。このようなケースでは、参加が個人の意思に基づく自由な活動と捉えられるためです。

前橋地判昭和50年6月24日高崎労基署長事件

親睦目的の出席が、単に事業主の通常の命令によってなされ、あるいは出席費用が、事業主より、出張旅費として支払われる等の事情があるのみではたりず、右出席が、事業運営上緊要なものと認められ、かつ事業主の積極的特命によってなされたと認められるものでなければならない。

大阪地方裁判所平成23年10月26日

顧客等との接待は、顧客との良好な関係を築く手段として行われており,本件会社もその必要性から,の業務性を承認して亡Aの数量に任せて行わせていたこと、亡Aが大阪事務所長として必要と判断したものであって、本件会社にとって有益で必要な業務の一部であったこと、全体の保全会議では議題にしにくい個別の技術的な問題点をより具体的に議論する場であったこと、関係者にとって技術的に詳しい亡Aから本音で込み入った技術的な話を聞く場として,会議終了後の会合を位置付けていたことなどの事実を踏まえると、関係者等との飲食は、そのほとんどの部分が業務の延長であったと推認できる。

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休日のゴルフ接待は労働時間か?

休日のゴルフ接待は、業務との関連性が分かりにくいため、一般に労働時間とは認められにくい傾向にあります。たとえ、会社がゴルフの費用負担していたとしても、それだけをもって会社の業務として休日のゴルフ接待が行われたと即断することは難しいものと考えます。

ただ、中には接待ゴルフであっても労働時間が認められるケースも存在します。ゴルフ接待の参加が強制させられており、参加しなければマイナスの勤怠評価を受け、顧客との商談を行うよう、上司から具体的な指示を受けているような場合には、労働時間として一部認定される可能性はあります。また、上司の業務命令により、ゴルフコンペの準備・進行・送迎等に従事し、ゴルフのプレイをしていないような場合には、接待時間の一部が労働時間に該当する可能性があります。

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接待残業の問題は難波みなみ法律事務所へ

接待が労働時間と判断されるか否かは、「使用者の指揮命令下にあるか」が最も重要な判断基準となり、形式的な取り決めだけでなく、その実態が重視されます。

曖昧なまま社員の接待を放置することは、企業にとってリスクを伴います。具体的には、従業員からの未払い残業代請求や、長時間労働による安全配慮義務違反を問われるといった労務トラブルに発展する可能性があります。このような接待をはじめとする過重労働によって生じる様々な労務トラブルを予防するため、弁護士に相談することを検討してください。

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