合意管轄とは?契約書条項を記載する時の注意点やメリットを弁護士が解説

公開日: 2026.01.15
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契約書を作成する際、合意管轄条項という言葉を目にしたことはありませんか?これは、万が一紛争が合って裁判になった場合に、どの裁判所で審理を行うかを、当事者間で予め管轄裁判所を合意しておくものです。

しかし、意味を理解しないまま契約書に盛り込んでしまうと、後々不利益を被る可能性も否定できません。そこで今回は、合意管轄条項について、その管轄の合意方法やメリット、デメリットを詳しく解説します。条項作成時の注意点についても、弁護士がわかりやすく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

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合意管轄の基本|契約トラブルに備えるための基礎知識

取引において、契約書は非常に重要な役割を担います。しかし、どれほど注意を払っても、契約内容を巡るトラブルが発生し、最終的に裁判に至る可能性は否定できません。そのような万が一の事態に備え、当事者間で「どの裁判所で裁判手続きを行うか」を事前に合意によって定めておくのが「合意管轄」です。

以下の項目では、合意管轄の基本的な概念と、契約書にこの条項を設ける目的について詳しく解説します。

合意管轄とは?万が一の裁判に備える取り決め

合意管轄とは、契約当事者間で将来発生する可能性のある紛争について、第一審の裁判を行う裁判所を、あらかじめ合意によって定めておく取り決めです。合意管轄は、万が一契約に関するトラブルが訴訟に発展した際に、どの裁判所で手続きを進めるかを明確にする目的があります。これにより、紛争が裁判まで発展してしまった際に、遠隔地での訴訟に巻き込まれるリスクを回避できる点が特徴です。

合意管轄条項のメリット

合意管轄条項を契約書に盛り込む主な理由は、以下の点にあります。

まず、将来的に紛争が発生した際に、どの裁判所で審理されるかを事前に明確にできます。これにより、予期せぬ遠隔地での訴訟に巻き込まれるリスクを回避し、契約取引の安定性を確保できます。これにより、地理的に有利な裁判所を管轄として指定することで、訴訟にかかる実務上の負担を軽減できます。具体的には、裁判所への移動時間や交通費を節約できます。また、弁護士に依頼する場合には、遠方への出張に伴う日当の費用も軽減させることも期待できます。 

合意管轄により、相手方にとって地理的に不利な裁判所を管轄とすることで、安易な訴訟提起を抑制する心理的な効果も期待できます。

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「専属的合意管轄」と「付加的合意管轄」の違い

合意管轄には、「専属的合意管轄」と「付加的合意管轄」という、大きく分けて二つの種類があります。

以下の項目では、それぞれの定義や、実務での具体的な使い分けについて解説します。

特定の裁判所に限定する「専属的合意管轄」

専属的合意管轄とは、契約当事者が将来生じうる紛争について、第一審の管轄裁判所を特定の裁判所「のみ」に限定する取り決めを指します。合意管轄条項を設ける場合には、この専属的合意管轄を想定していることが多いでしょう。

この合意を締結した場合、民事訴訟法で定められている他の管轄裁判所(法定管轄)の効力は排除され、原則として、合意した裁判所以外の場所へ訴訟を提起することはできなくなります。万一、専属的合意管轄裁判所以外に訴えが提起された場合でも、その訴えは合意された裁判所へ移送されます。

このように法的効果を持つため、実務上では契約書に「専属的」という文言を明確に記載するのが一般的です。例えば、「○○地方裁判所のみを第一審の専属的合意管轄裁判所とする」のように明記することで、当事者間の意思を明確にし、管轄に関する無用な争いを未然に防ぎます。

これにより、訴訟を行う裁判所が一本化され、裁判地の予測可能性が高まるというメリットがあります。

裁判所の選択肢を増やす「付加的合意管轄」

合意管轄には、専属的合意管轄の他に「付加的合意管轄」があります。付加的合意管轄とは、民事訴訟法に基づく管轄を維持しつつ、当事者が合意した裁判所も管轄裁判所として「追加」する取り決めを指します。

専属的合意管轄が特定の裁判所「のみ」に管轄を限定するのに対し、付加的合意管轄は法律による管轄裁判所を排除せず、訴訟提起の選択肢を広げる点が大きな違いです。

東京高裁昭和58年1月19日

「カード会社は会社の本支店所在地を管轄する裁判所に訴訟を提起できる」という条項について、競合する法定管轄裁判所のうち一つを特定して管轄裁判所とすることを合意し、そのほかの管轄を排除することが明白である等の特段の事情のないかぎり、当該合意は競合的合意管轄を定めたものと解するのが相当である。

実務上はどちらを選ぶべきか?

実務において合意管轄を定める際、将来発生し得る紛争の解決を見通しやすくするために、訴訟が提起される裁判所を一つに特定する「専属的合意管轄」を選択するのが一般的です。ビジネスにおいて、どちらの裁判所に提起されるか分からないという不確実性を減らすことが重視されるため、特定の裁判所のみに管轄を限定する専属的合意管轄は、紛争解決を効率的に進める上で有効な手段となります。

一方、「付加的合意管轄」が例外的に用いられるケースもあります。これは、当事者間のバランスを調整するために、民事訴訟法で定められた法定管轄の選択肢を維持しつつ、自社にとって有利な裁判所も訴訟提起の選択肢に加えたい場合に有効です。

【例文付き】契約書への合意管轄条項の正しい書き方

以下の項目では、実際に契約書へ合意管轄条項を記載する際の具体的な書き方について解説します。以下で紹介する例文を契約書作成時の参考にしてください。

記載しておくべき項目

合意管轄条項を有効かつ明確にするためには、契約書に記載すべき重要な項目があります。これらの項目を適切に定めることで、専属的合意管轄であるのか付加的合意管轄であるかといった議論を避けることができます。

  • 管轄裁判所の特定
  • 専属的合意であることの明示
  • 第一審であることの明示
  • 対象となる紛争の範囲の特定

特に、大切である項目が専属的合意の明示です。条項に「専属的」という文言を含めることが極めて重要です。この記載がない場合、付加的合意管轄と解釈され、合意した裁判所以外の法定管轄裁判所にも訴えを提起できると判断される可能性があります。また、対象となる紛争の範囲の特定も重要です。「本契約に関する一切の紛争」「本契約および本契約に基づく個別売買契約に関する訴訟」のように、適用対象となる法律関係を明確に定めることが重要です。

本社所在地を管轄裁判所とする記載例

自社にとって有利に訴訟を進めやすいのは、自社の本店所在地を管轄する裁判所を専属的合意管轄裁判所と定める方法です。

また、本店所在地よりも、相手方を担当する事業所の近くの裁判所を管轄裁判所とした方が効率的である場合には、その内容も追記します。具体的な記載例は以下の通りです。自社所在地を管轄とすることで、遠方の裁判所を管轄裁判所とするコストを抑えられます。

①本契約に関する一切の紛争については、甲の本店所在地を管轄する地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

②本契約に関する一切の紛争については、甲の本店所在地または乙を担当する甲の支社もしくは支店所在地を管轄する地方裁判所を第一審の合意管轄裁判所とする。

付加的合意管轄の記載例

契約当事者間の公平性を重視する場合、自社に有利な管轄裁判所に加えて、相手方に有利な管轄裁判所も加えて付加的な合意管轄の条項を設けることもあります。この条項を契約書に盛り込むことで、相手方に対し、自社が公平な取引関係を望んでいるという誠実な姿勢を示すことができ、交渉を円滑に進める上でのビジネス上のメリットも期待できます。

本契約および個別契約に関する訴訟の第一審の合意管轄裁判所は大阪地方裁判所または東京地方裁判所とする。

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合意管轄を定める際の注意点とよくある質問

実務においては見落とされがちな専門的な注意点や、よく寄せられる疑問も存在します。以下の項目では、合意管轄に関する注意点を解説します。

合意できるのは第一審の裁判所だけ

合意管轄を定める際、当事者間の合意によって管轄裁判所を指定できるのは、民事訴訟法第11条の規定によって「第一審」に限られています。

民事訴訟法11条1項

当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。

したがって、契約書で控訴審や上告審の裁判所まで指定しようとしても、その部分は法的に無効です。合意管轄条項を作成する際は、第一審の裁判所のみを明確に記載するようにしてください。

簡易裁判所を指定する場合

簡易裁判所を第一審の管轄裁判所とする合意管轄も認められており、請求額が140万円を超える事案でも簡易裁判所を管轄裁判所とすることが認められています。

本来、簡易裁判所は、訴額が140万円を超えない訴訟を取り扱う裁判所であり、140万円を超える訴訟は地方裁判所が扱うことになっています。これを事物管轄(じぶつかんかつ)といいます。しかし、第一審の管轄裁判所を簡易裁判所に指定する合意管轄を締結している場合には、たとえ請求額が140万円を超えたとしても、簡易裁判所に対して訴訟提起することができます。つまり、土地管轄だけでなく事物管轄も合意することが認められています(最高裁平成20年7月18日参照)

最高裁平成20年7月18日

地方裁判所にその管轄区域内の簡易裁判所の管轄に属する訴訟が提起され,被告から同簡易裁判所への移送の申立てがあった場合においても,当該訴訟を簡易裁判所に移送すべきか否かは,訴訟の著しい遅滞を避けるためや,当事者間の衡平を図るという観点(民訴法17条参照)からのみではなく,同法16条2項の規定の趣旨にかんがみ,広く当該事件の事案の内容に照らして地方裁判所における審理及び裁判が相当であるかどうかという観点から判断されるベきものであり,簡易裁判所への移送の申立てを却下する旨の判断は,自庁処理をする旨の判断と同じく,地方裁判所の合理的な裁量にゆだねられており,裁量の逸脱,濫用と認められる特段の事情がある場合を除き,違法ということはできないというべきである。このことは,簡易裁判所の管轄が専属的管轄の合意によって生じた場合であっても異なるところはない(同法16条2項ただし書)。

合意しても裁判が他の裁判所に移送されるケースとは?

専属的合意管轄は、当事者間で定めた裁判所で審理を進めるという、強い効力を持ちます。しかし、この合意が常に絶対的なものとは限りません。例外的に、民事訴訟法の規定に基づき、裁判所の判断で他の裁判所に移送されるケースも存在します。

この例外は、民事訴訟法第17条に規定されており、「訴訟の著しい遅滞を避け、または当事者間の公平を図る必要があると認めるとき」に、裁判所の裁量により移送が認められます。移送の制限を定めた民事訴訟法20条1項かっこ書で管轄合意を除外しているため、管轄合意が締結されている場合でも、移送することが認められています。

民事訴訟法20条1項

前三条の規定は、訴訟がその係属する裁判所の専属管轄(当事者が第11条の規定により合意で定めたものを除く。)に属する場合には、適用しない。

このように、合意管轄は紛争解決の予測可能性を高める上で極めて重要ですが、訴訟全体の公平性や効率性を損なう場合には、例外的に裁判所が他の裁判所に移送する可能性も考慮しておく必要があります。

まとめ:合意管轄を正しく理解し、将来の事業リスクに備えよう

契約トラブルに備えるための合意管轄について、その基礎知識から重要性、「専属的合意管轄」と「付加的合意管轄」の違いまでを詳しく解説してきました。

管轄合意がない場合に遠隔地での訴訟対応を強いられたり、自社に不利な裁判所で審理が行われたりするリスクを回避するためには、契約書作成時における慎重な検討が不可欠です。

今後、新たな契約を締結する際や既存の契約書を再確認する際には、本記事で解説した合意管轄の必須項目や具体的な例文を参考に、自社にとって有利な条件となるよう検討を進めることをお勧めします。

ただし、合意管轄条項の定め方や、相手方から提示される不利な条項への交渉には専門的な知識が求められます。不明な点や不安な点がある場合は、将来のリスクを最小限に抑えるためにも、早期に弁護士などの専門家へ相談することをお勧めします。

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