テレワークの労務管理|労働時間・費用負担・就業規則(規程)の作り方を弁護士が解説

公開日: 2026.11.03
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企業法務・労務管理

テレワーク(在宅勤務)は柔軟な働き方として定着しましたが、「出社しないから労働時間の管理は不要」「残業代は発生しない」といった誤解からトラブルになる例が少なくありません。テレワーク中でも労働基準法をはじめとする労働関係法令はそのまま適用され、労働時間の把握義務や割増賃金の支払義務も変わりません。本記事では、厚生労働省「テレワークガイドライン」を踏まえ、労働時間の管理方法、費用負担、長時間労働対策、テレワーク勤務規程の作り方を、企業法務に携わる弁護士がわかりやすく整理します。

まず結論

Q. テレワークでも労働基準法は適用される?

はい。在宅勤務でも労働基準法・最低賃金法・労働安全衛生法・労災保険法などが通常どおり適用されます。労働時間の把握義務や割増賃金の支払義務もなくなりません。

Q. 労働時間はどう管理すればよい?

パソコンの使用記録などの客観的な記録、または自己申告によって始業・終業時刻を把握します。自己申告の場合は、実態と大きくかけ離れないよう確認し、申告を妨げる取扱いをしないことが必要です。

Q. 通信費などの費用は会社負担?

法律上の一律の定めはありませんが、業務と私用の切り分けが難しい通信費等は、一定額を会社が負担するか実費を合理的に按分する例が一般的です。負担ルールは就業規則(テレワーク勤務規程)に定めておくことが望ましいとされています。

テレワークとは|3つの形態と法令の適用

テレワークとは、情報通信技術(ICT)を活用した場所にとらわれない柔軟な働き方の総称で、厚生労働省のガイドラインでは次の3つの形態が示されています。

  • 在宅勤務:自宅を就業場所とする
  • サテライトオフィス勤務:シェアオフィスやコワーキングスペース等を利用する
  • モバイル勤務:移動中や顧客先など場所を固定せず働く

いずれの形態でも、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労働者災害補償保険法などの労働関係法令はそのまま適用されます。労働時間制度も通常勤務と同じものを使えるため、導入前の制度を維持できます。ただし、勤務場所を労働契約や就業規則の範囲を超えて変更する場合には、労働者本人の合意が必要です。

労働時間の管理方法と「中抜け時間」

テレワークでも使用者には労働時間を適正に把握する義務があります。把握の方法は大きく2つです。

方法内容・留意点
客観的な記録パソコンの使用時間の記録、システムへのログイン・ログアウト記録、入退場記録などで始業・終業時刻を確認する
自己申告労働者の申告による。実態と著しく乖離する場合は補正し、申告できる時間に上限を設けるなど適正な申告を妨げる措置はとらない

中抜け時間の扱い

テレワークでは、就業時間中に一時的に業務から離れる「中抜け時間」が生じやすくなります。ガイドラインは次の2つの扱いを示しています。

  • 把握する方法:中抜け時間を休憩時間として扱い終業時刻を繰り下げる、または時間単位の年次有給休暇として処理する(時間単位年休とするには労使協定が必要)
  • 把握しない方法:始業から終業までの時間を通して労働時間として扱う

いずれの方法をとるかは、あらかじめ就業規則等で明確にしておくことがトラブル防止につながります。

事業場外みなし労働時間制は使える?

テレワークでも、一定の要件を満たせば「事業場外みなし労働時間制」(労働時間を実測せず、あらかじめ定めた時間を働いたとみなす制度)を適用できる場合があります。ただし要件は厳格で、次の2つをいずれも満たす必要があります。

  1. 情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態に置かれていないこと
  2. 随時、使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

「スマホやPCを持たせている=みなしOK」ではありません

情報通信機器を所持しているだけで直ちに制度が使えなくなるわけではありませんが、逆に常に即レスを求める・細かく業務指示をするといった運用では要件を満たさず、みなしが無効になり実際の労働時間に応じた割増賃金が必要になります。みなし労働時間が法定8時間を超える設定なら、その分の残業代も発生します。あわせて裁量労働制とは|専門型・企画型の違いと2024年改正もご覧ください。

費用負担(通信費・機器・光熱費)

テレワークでは、通信費・パソコン等の情報通信機器・自宅の電気代などの費用が発生します。これらの負担について法律上の一律のルールはありませんが、業務と私用の切り分けが難しい費用は、一定額を会社が負担する、または実費を業務分として合理的に計算して支給する方法が一般的です。

費用負担は就業規則(規程)に明記を

労働者に費用を負担させる場合は、労働基準法89条5号により就業規則への記載が必要です。負担の範囲・金額・支給方法を労使で話し合い、テレワーク勤務規程に定めておくことで、後々の争いを防げます。なお、これまで会社が負担していた費用を新たに従業員負担とする場合は、就業規則の不利益変更にあたり得るため、変更の必要性・相当性や代償措置(在宅勤務手当など)を検討する必要があります(労働契約法10条)。在宅勤務手当を支給する企業も増えていますが、手当の設計によって割増賃金の扱いが変わる点に注意が必要です。使った分の有無にかかわらず毎月定額を渡し切る手当は、賃金として割増賃金の算定基礎に算入しなければなりません。一方、業務使用分の実費を特定して精算する形(合理的・客観的な計算方法を就業規則等に明示)であれば、実費弁償として算定基礎から除外できます(厚労省通達)。

長時間労働対策(残業代・深夜・休日)

テレワークは上司の目が届きにくく、かえって長時間労働を招きやすい面があります。テレワークでも時間外・休日・深夜労働には割増賃金が必要で、三六協定(36協定)の締結・届出も通常どおり必要です。ガイドラインは、長時間労働を防ぐ手段として次のような方法を挙げています。

  • 深夜・休日のメールやチャットの送付を抑制するルールづくり
  • 深夜・休日の社内システムへのアクセス制限
  • 時間外・休日・深夜労働を行う際の事前申請・許可制
  • 長時間労働者への注意喚起・面接指導の実施

「在宅だから残業代は不要」は誤りです

テレワークでも、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせれば時間外割増(25%以上)、深夜(22時〜翌5時)に働けば深夜割増(25%以上)、法定休日に働けば休日割増(35%以上)の支払いが必要です。労働時間を把握していないと、未払い残業代を遡って請求されるリスクがあります。

安全衛生・労災

使用者はテレワーク中の労働者に対しても安全配慮義務を負います。自宅の作業環境についてチェックリストで確認・改善を促す、健康相談の体制を整える、孤独感を防ぐコミュニケーションを工夫する、といった対応が求められます。

また、テレワーク中に業務が原因で負傷した場合は労災保険の給付対象になります。ただし、私的な行為が原因の負傷(業務と関係のない家事の最中のケガなど)は対象外です。業務と私的行為の区別が問題になりやすいため、勤務時間や業務内容の記録を残しておくことが重要です。

テレワーク勤務規程に定める5つのポイント

  1. 対象者・対象業務テレワークを認める従業員の範囲や対象業務、申請・許可の手続を定めます。
  2. 労働時間・中抜け適用する労働時間制度、始業終業時刻の把握方法、中抜け時間の扱い、時間外労働の申請方法を定めます。
  3. 費用負担通信費・機器・光熱費などの負担区分、在宅勤務手当の有無・金額を明記します(就業規則記載事項)。
  4. 安全衛生・情報セキュリティ作業環境の確認、健康管理、情報の持ち出し・保管ルールを定めます。
  5. 服務規律・連絡体制勤務中の連絡方法、報告のルール、服務規律を整備します。

既存の就業規則の見直しもあわせて

テレワークを本格導入する際は、就業規則本体との整合も確認が必要です。就業規則の変更手続については就業規則を変更すべきケースとは?も参考になります。

よくある質問(FAQ)

テレワークなら残業代を払わなくてよいですか?

いいえ。テレワークでも法定労働時間を超えれば時間外割増、深夜・休日に働けば深夜・休日割増の支払いが必要です。労働時間を把握していないと未払い残業代のリスクがあります。

在宅勤務の労働時間はどうやって把握しますか?

パソコンの使用記録やシステムのログイン記録などの客観的な記録、または自己申告で把握します。自己申告の場合は実態と大きくかけ離れないよう確認し、申告を妨げる取扱いをしないことが必要です。

テレワークに事業場外みなし労働時間制は使えますか?

常時通信可能な状態に置かれておらず、随時具体的な指示を受けていない場合に限り適用できます。常に即レスを求めるなど実態が伴わなければ無効となり、実労働時間に応じた割増賃金が必要です。

中抜け時間はどう扱えばよいですか?

中抜け時間を休憩や時間単位の年次有給休暇として処理する方法と、把握せず始業から終業までを労働時間として扱う方法があります。あらかじめ就業規則で明確にしておきます。

通信費や電気代は会社が負担すべきですか?

法律上の一律の定めはありませんが、切り分けが難しい費用は一定額の会社負担や実費按分が一般的です。労働者に負担させる場合は就業規則への記載が必要です。

テレワーク中のケガは労災になりますか?

業務が原因の負傷であれば労災保険の対象になります。業務と関係のない私的行為による負傷は対象外です。業務との関連を示すため、勤務時間や業務内容の記録を残しておくことが重要です。

テレワークを始めるには就業規則の変更が必要ですか?

労働時間や費用負担などテレワーク特有のルールを定めるため、テレワーク勤務規程の整備(就業規則の変更)が必要になるのが通常です。費用負担を定める場合は就業規則への記載が法律上求められます。

※本記事は2026年10月時点の法令・厚生労働省の公表資料(テレワークガイドライン)に基づく一般的な解説です。具体的な制度設計・運用は企業の実態により異なります。個別の事案は弁護士にご相談ください。

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難波みなみ法律事務所では、テレワーク勤務規程の作成・就業規則の見直し、労働時間管理や費用負担のルール設計、未払い残業代リスクの診断まで、企業法務の視点でサポートします。

難波みなみ法律事務所(大阪なんば・心斎橋)/代表弁護士・中小企業診断士 南 宜孝

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