就業規則を変更すべきケースとは?変更の際の注意点も解説

更新日: 2026.09.24
就業規則 変更するべき場合とは
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企業法務/人事労務・就業規則

就業規則は、一度作れば終わりではありません。法改正・賃金や労働時間の変更・新しい労働時間制度の導入・形骸化・経営状況の変化——この5つのタイミングでは、就業規則の変更を検討すべきです。

昔に作った就業規則を放置すると、法令に適合しない状態になったり、現状との乖離からトラブルを招いたりします。一方で、従業員に不利益となる変更は労働契約法により原則禁止で、進め方を誤ると変更が無効になります。変更すべきケースと、変更案の作成から労基署への届出・社内周知までの手続き・注意点を、企業経営者の視点で弁護士が解説します。

まず結論

就業規則は、どんなときに変更すべきですか?

主に5つのタイミングです。①労働法令の改正、②賃金体系や労働時間の変更、③在宅・固定残業代・変形労働時間制など新しい労働時間制度の導入、④現状と合わなくなった就業規則の形骸化、⑤経営状況の変化。数年見直していない場合は、現状との乖離がないか一度点検すべきです。

従業員に不利益な変更は、会社が自由にできますか?

できません。従業員に不利益となる就業規則の変更は、労働契約法で原則禁止です(労契法9条)。例外的に、変更後の就業規則を労働者に周知し、かつ変更に合理性があると認められる場合に限り、同意がなくても有効になります(労契法10条)。給与・退職金・労働時間など生活に直結する変更は、特に高い必要性と緩和措置・丁寧な協議が求められます。

この記事の根拠となる主な条文
  • 労働契約法9条(不利益変更の原則禁止)/10条(周知+合理性による例外)
  • 労働基準法89条(就業規則の作成・届出義務/常時10人以上)/90条(労働者代表の意見聴取)/106条(周知義務)

就業規則とは?(作成・届出の義務)

就業規則とは、会社内のルールを定めた書面で、労働基準法に沿って労働時間・賃金・休日などの労働条件に関する事項を規定します。常時10人以上の労働者(パート・アルバイトを含む)を使用する場合は、事業所ごとに就業規則を作成し、その事業所を管轄する労働基準監督署長に届け出なければなりません(労基法89条)。就業規則は労働者との雇用契約の内容になるため、状況が変われば適宜変更する必要があります。

就業規則を変更すべき5つのタイミング

就業規則を一度作成すれば、その後は変更せず放置してよいわけではありません。次の5つのタイミングでは、変更を検討すべきです。

  • 法改正が行われたとき——労働関係法令が改正され、就業規則が適合しなくなる
  • 賃金体系や労働時間を変更するとき——賃金・始業終業時刻などを変える
  • 新しい労働時間制度を導入するとき——在宅ワーク・固定残業代・変形労働時間制など
  • 現在の就業規則が形骸化しているとき——現状と就業規則が一致していない
  • 経営状況が変化したとき——経営悪化などで労働条件の見直しが必要になる

① 法改正が行われたとき

労働関係法令は頻繁に改正されており、改正されると現在の就業規則が適合しない状態になることがあります。近年ではパートタイム・有期雇用労働法や育児介護休業法などが改正されています。会社経営では、労働関係の法改正に常に気を配り、改正法の内容に合わせて就業規則を改定する必要があります。

平成20年以降の主な労働法改正(一例)

・月60時間超の時間外労働の割増賃金率を5割以上へ引上げ(中小企業は2023年4月から適用)
・有期労働契約の無期転換ルール、雇止め法理の法定化、不合理な労働条件の禁止
・パートタイム労働者の差別的取扱い禁止の対象拡大、雇入時の説明義務
・時間外労働の上限規制(原則 月45時間・年360時間、特別条項でも年720時間・単月100時間未満・罰則付)
・同一労働同一賃金(正社員とパート・有期・派遣の不合理な待遇差の禁止、説明義務の強化、行政ADRの整備)
・中小企業へのパワハラ防止法の適用、出生時育児休業(産後パパ育休)の新設

② 賃金体系や労働時間を変更するとき

社内の賃金体系や始業終業時刻などの労働時間を変更する際は、就業規則を改定し、変更内容を労働基準監督署へ届け出なければなりません。賃金体系や労働時間の変更は従業員の労働条件を不利益に変更する場合が多いため、慎重な対応が必要です。

③ 新しい労働時間制度を導入するとき

在宅ワークや固定残業代(みなし残業代)など、これまでと異なる労働時間制度を導入する場合、就業規則の変更が必要になるケースが多数です。変形労働時間制を採用する場合も同様です。就業規則を改定しないと新しい労働時間制度を従業員に適用できない可能性があるため注意しましょう。これら労働時間制を廃止する場合にも変更が必要です。

④ 現在の就業規則が形骸化している

創業の古い会社では、創業当時に作成したまま改定しておらず、現状と就業規則が一致していないケースが多々あります。就業規則は、法改正内容・時勢・従業員の価値観に合ったものにしなければ価値が半減し、現状との隔たりはトラブルにつながります。長年変更しておらず形骸化している場合は、抜本的な見直しを行うべきです。

⑤ 経営状況が変化したとき

経営状況が悪化し倒産の危機的状況にある場合など、従業員の賃金体系等の労働条件を変更して組織構造を抜本的に変革する必要が生じることがあります。ただし、従業員に不利益となる変更を企業が自由にできるわけではありません。不利益変更には、変更内容を従業員へ周知することと、変更内容が合理的であることが必要です(労契法10条。詳しくは後述)。

助成金を申請するときも変更が必要になる

助成金を申請する際、就業規則の添付が必須となるケースがよくあります。その場合、助成制度の要件に沿って就業規則を変更しなければならない可能性があります。助成金は返済不要で大きなメリットがあるため、自社に適用できる助成金を調べたうえで、必要に応じて就業規則を変更し申請するとよいでしょう。

就業規則の提出が必要な主な助成金:キャリアアップ助成金(正社員化/諸手当制度共通化/健康診断制度/賃金規定等共通化 各コース)、働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進/職場意識改善特例/勤務間インターバル導入/テレワーク 各コース)、人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)、両立支援等助成金(出生時両立支援/介護離職防止支援/育児休業等支援/再雇用者評価処遇 各コース)など。

就業規則がない場合の3つの問題

常時10人未満で作成義務がない場合でも、次のリスクがあるため就業規則は作成しておくべきです。

① 懲戒できない

懲戒処分には、対象となる非違行為と処分内容(戒告・減給・降格・解雇等)を就業規則で定めておく必要があります。規定がなければ問題社員を懲戒できず、放置は他社員の士気低下や損害賠償リスクを招きます。

② 欠勤控除が不明瞭

欠勤・遅刻・早退した時間分の給与は支払い不要(ノーワーク・ノーペイ)ですが、控除の計算方法に法令上の定めはありません。就業規則で計算方法を明示しないと従業員と対立するリスクがあります。

③ ルールが不明瞭

就業規則は労働条件全般の社内ルールです。就業規則がないと社内ルールが明確でなくなり、労使間のさまざまな場面でトラブルを招きます。

就業規則を変更するときの注意点・手続き

不利益になる変更は原則禁止(労働契約法)

従業員に不利益となる就業規則の変更は、労働契約法により原則禁止です。従業員の同意を得られない場合、一方的な不利益変更はできないと考えましょう。ただし、労働者全員の合意がなくても、合理的な範囲の変更であれば認められるケースもあります。

労働契約法10条(要旨):使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、変更が、労働者の受ける不利益の程度・変更の必要性・変更後の内容の相当性・労働組合等との交渉状況その他の事情に照らして合理的であるときは、労働条件は変更後の就業規則によるものとする。

不利益の程度が大きいほど、変更の必要性が高いことが求められます。特に給与の減額、退職金の減額・不支給、労働時間の変更は生活に直結する重大な労働条件のため、高い必要性に加えて緩和措置や、従業員への十分な説明・協議が重要です。

実際の変更は、次の手順で進めます。

  1. ① 就業規則の変更案を作成する会社の実態に応じ、従業員の受ける不利益の程度を十分に踏まえて変更案を練ります。作成には専門知識を要するため、弁護士や社会保険労務士に相談しましょう。
  2. ② 事業場ごとに変更届を作成する就業規則は「事業場ごと」に作成するため、複数事業所がある場合はすべての事業所で変更し、それぞれ管轄の労働基準監督署へ「変更届」を提出します。法改正対応など全事業場で同内容の変更なら「本社一括届出制度」を利用できます。
  3. ③ 労働者の意見を聴取する労働者の過半数で組織する労働組合(ない場合は民主的に選ばれた過半数代表者)から意見を聴取し、「意見書」にまとめて労働基準監督署へ提出します(労基法90条)。
  4. ④ 所轄の労働基準監督署に届け出る変更案・変更届・意見書を準備し、所轄の労基署へ提出します。方法は①窓口申請、②電子申請(単一事業場届出/本社一括届出)。電子申請は郵送・窓口のコストを削減でき、時間外でもe-Gov(電子政府の総合窓口)のアカウントで届出できます。
  5. ⑤ 変更内容を社内に周知する変更後の内容は社内に周知しなければなりません。周知していない就業規則は無効です(労基法106条)。掲示・書面配布・デジタルデータの記録など、各従業員が確認できる状態にします。

よくある質問(FAQ)

就業規則はどのくらいの頻度で見直すべきですか?
決まった頻度はありませんが、法改正が行われたタイミングや、賃金体系・労働時間制度を変更するタイミングで見直すのが基本です。数年以上見直しをしていない場合は、現状との乖離がないか一度点検することをおすすめします。
就業規則の変更に従業員全員の同意が必要ですか?
不利益変更の場合、原則として同意が必要ですが、変更の必要性や合理性が認められれば、全員の同意がなくても有効となる場合があります。ただし、丁寧な説明と協議のプロセスを経ることが重要です。
就業規則を変更したら必ず労働基準監督署に届け出る必要がありますか?
常時10人以上の従業員を使用する事業場では、就業規則を変更するたびに、意見書とあわせて所轄の労働基準監督署への変更届の提出が必要です。

就業規則の変更・作成は弁護士にご相談ください

就業規則が古いまま放置されていると、法令不適合や現状との乖離でさまざまな不利益が生じます。会社の実態に沿った改訂、不利益変更の合理性の検討、変更届・意見書の作成から電子申請の代行まで、企業経営者の立場で弁護士がサポートします。大阪・なんば/心斎橋の難波みなみ法律事務所へ。初回相談30分無料・来所不要・zoom/電話対応。

※本記事は一般的な解説であり、個別の事案では変更の要否・手続きは具体的な事情により異なります。就業規則の変更・作成、不利益変更の合理性の検討については、監修弁護士(難波みなみ法律事務所 代表弁護士 南 宜孝/大阪弁護士会)にご相談ください。

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