付加金(ふかきん)とは、残業代などの未払いがあった場合に、裁判所が使用者に対して未払額と同じ額までの支払いを命じることができる、制裁的な性質を持つ金銭です(労働基準法114条)。あくまで裁判所の裁量によるもので、判決でのみ命じられ、和解や労働審判では命じられません。会社にとっては未払い分と合わせて最大で「2倍」の負担になり得ますが、判決(正確には事実審の口頭弁論終結)までに未払い分を支払えば、付加金を免れることができます。本記事では、付加金の意味・読み方から、対象・金額・生じる条件・除斥期間、そして会社が付加金を課されないための対応までを、企業経営者の視点で弁護士が解説します。
- 付加金(ふかきん)とは、未払いの残業代等と同額を上限に、裁判所が使用者に支払いを命じる制裁的な金銭(労働基準法114条)。
- 対象は、割増賃金(残業代)・解雇予告手当・休業手当・年次有給休暇中の賃金の未払い。
- 判決でのみ命じられ、和解・労働審判・調停では命じられない。命じるかどうか・その額は裁判所の裁量。
- 裁判例の統計では、付加金が命じられた事件の約6割は満額(未払額と同額)。もっとも、会社が誠実に対応していれば否定・減額される例も多い。
- 判決(事実審の口頭弁論終結)までに未払い分を支払えば、付加金は免れられる(最高裁も明言)。
- 付加金の期限は「除斥期間」で当分の間3年(消滅時効とは別物)。付加金には判決確定翌日から年3%の遅延損害金も付く。
- 付加金(ふかきん)とは?意味と読み方
- 付加金の対象となる未払い
- 付加金の金額 ── 最大でいくら?
- 付加金が命じられる条件(裁判所の裁量・判決のみ)
- 会社が付加金を支払わないための対応
- 付加金が否定・減額されるのはどんな場合か
- 付加金の期限(除斥期間)と遅延損害金
- よくある質問(FAQ)
付加金(ふかきん)とは?意味と読み方
付加金は「ふかきん」と読みます。労働基準法114条にもとづき、使用者が残業代などの支払義務に違反した場合に、裁判所が労働者の請求により、使用者に対して未払額と同じ額までの支払いを命じることができる金銭です。本来支払うべき未払い分に加えて、いわば「制裁」として上乗せされるため、会社にとっては大きな負担になります。
付加金の対象となる未払い
付加金は、どんな未払いにも付くわけではありません。労働基準法114条は、次の4つの支払義務違反を対象としています。
| 対象となる未払い | 根拠 |
|---|---|
| 割増賃金(残業代) | 労働基準法37条(時間外・休日・深夜労働の割増賃金) |
| 解雇予告手当 | 労働基準法20条 |
| 休業手当 | 労働基準法26条 |
| 年次有給休暇中の賃金 | 労働基準法39条9項 |
実務で最も多いのは、残業代(割増賃金)の未払いに付加金が請求されるケースです。なお、付加金の算定は割増部分だけでなく、その計算の基礎となる通常の賃金部分も踏まえて行われます。
付加金の金額 ── 最大でいくら?
付加金の額は、未払額と同額が上限です。したがって会社は、未払い分(本来支払うべき額)と付加金を合わせて、最大で「2倍」を負担する可能性があります。
たとえば未払いの割増賃金が125万円であれば、使用者は労働者に対し、割増賃金125万円の支払いに加えて、付加金として最大125万円、合計で最大250万円の支払いを命じられることがあります。
ただし、必ず同額が命じられるわけではなく、金額を含めて裁判所の裁量で判断されます。会社の対応次第で否定・減額される場合がある点は、後の見出しで解説します。
付加金が命じられる条件(裁判所の裁量・判決のみ)
労働基準法違反があること
付加金が命じられる前提として、残業代の不払いなどの労働基準法違反があることが必要です。ただし、違反があれば必ず付加金が命じられるわけではありません。付加金を命じるかどうか、またその額は、裁判所の裁量に委ねられています。労働基準法違反の悪質性や、労働者の被った不利益の程度などの事情を踏まえて判断されます。
「判決」でのみ命じられる(和解・労働審判では命じられない)
付加金は、訴訟の判決によってのみ命じられます。裁判上の和解、調停、裁判外の合意では命じられません。また、労働審判でも付加金は命じられません。労働審判は話し合いによる解決を目指す手続で、判決とは性質が異なるためです。この点は、会社側の対応方針を考えるうえで重要なポイントになります。
会社が付加金を支払わないための対応
付加金は会社にとって大きな負担ですが、正しく対応すれば回避できる場合があります。
判決までに未払い分を支払う
最も基本的なのは、裁判所の判決が出るまでに未払いの残業代等を支払うことです。付加金は「支払義務違反」に対する制裁のため、判決までに支払いを済ませれば、付加金を命じることはできないとされています。ここでいう「判決まで」とは、事実審(第二審=控訴審)の口頭弁論が終わるまでを指します。つまり、一審で残業代と付加金の支払いが命じられても、控訴審の口頭弁論終結までに残業代を支払えば、付加金の支払いを免れられます(ただし控訴審は第1回期日で結審することも多いため、対応は早めに)。残業代を請求されたときの初動・対応手順は、残業代請求を受けたときの会社側対応|初動・証拠・反論・解決までの実務フローで詳しく解説しています。
労働者が受け取りを拒否する場合は供託
労働者が付加金の発生をねらって支払いの受け取りを拒否することも考えられます。その場合は、未払いの金額を供託(民法494条)することで、支払ったのと同じ効力が生じ、付加金の発生を防げます。
付加金が否定・減額されるのはどんな場合か(会社の対応がカギ)
付加金を命じるかどうか、いくら命じるかは裁判所の裁量です。裁判所は、労働基準法違反の程度・態様、労働者が受けた不利益の性質・内容、使用者(会社)の対応などの事情を総合して判断します。つまり、付加金は「重大・悪質」と評価される違反に限って命じられる傾向があり、会社が誠実に対応していれば、否定されたり減額されたりすることが少なくありません。
実際の裁判例でも、次のような事情があるケースでは、付加金が否定・減額されています。
| 会社側に有利に働いた事情 | 結果の傾向 |
|---|---|
| 積極的に残業代を払わない対応をしていたわけではなく、一定の時間外賃金相当分を支払っていた | 否定された例 |
| 管理職手当など、毎月一定額を実際に支払っていた | 減額された例 |
| 給与体系が一見して明白に不合理・理不尽とまではいえない | 否定された例 |
裏を返せば、残業代を意図的に払わない、給与体系が明らかに不合理、といった「悪質」な対応は付加金を招きやすいということです。就業規則や賃金制度を適正に整え、残業代に誠実に対応しておくことが、付加金リスクを下げる最大の備えになります。
付加金の期限(除斥期間)と遅延損害金
付加金の期限は「除斥期間」で当分の間3年
付加金には期限があります。賃金の消滅時効が5年(当分の間3年)に伸長されたことに合わせて、付加金の請求期限も原則5年、当分の間は3年とされています。労働者は、この期間内に残業代と一緒に付加金の支払いを求める訴えを起こす必要があります。
付加金のこの期限は「除斥期間」と呼ばれ、時効とは異なる制度です。消滅時効と違って、援用(時効を主張する意思表示)が不要で、一部弁済などによる更新(リセット)もありません。期間が過ぎれば当然に権利が消滅するため、労働者は除斥期間が過ぎる前に訴えを起こす必要があります。
付加金にも遅延損害金が付く
付加金にも遅延損害金が付きます。その起算点は判決確定日の翌日で、利率は民法の法定利率である年3%です。
よくある質問(FAQ)
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残業代請求・付加金のリスクでお困りではありませんか?
残業代請求への初動から、付加金を課されないための対応まで、企業経営者の立場で弁護士がサポートします。
付加金は、未払いの残業代等と同額を上限に、会社に大きな負担を生じさせる制度です。もっとも、判決までに未払い分を支払うなど、正しく対応すれば回避できる場合もあります。残業代を請求された、付加金のリスクが心配、という場合は、早めに弁護士へご相談ください。当事務所では初回相談30分無料でお受けしています。

