出勤停止処分(しゅっきんていししょぶん)とは、問題行為をした社員に対して、雇用契約を維持したまま一定期間の就労を禁止する懲戒処分です。停止期間中は賃金を支給しないのが通例で、法律上の期間の上限はありませんが、実務では7労働日程度の例が多く、長くても1か月以内が無難とされます。なお、調査のための「自宅待機命令」は懲戒処分ではなく、原則として賃金の支払いが必要な点で異なります。
出勤停止処分とは、懲戒処分の一つで、一定期間、社員の出勤を禁止する処分です。出勤停止処分は、出勤停止期間中の賃金を支払わない点で労働者に重大な不利益を及ぼします。このようなことから、出勤停止は懲戒処分の中でも懲戒解雇の次に重い処分となるため、出勤停止処分を行うにあたっては、慎重な判断が求められます。
特に、必要以上に出勤停止期間を設けると、労働者に過度な負担を与えるため、処分が無効となるおそれがあります。出勤停止が無効となれば、停止期間に伴う賃金を払うだけでなく、さまざまな負担を引き起こします。
問題行為を放置することなく適切に問題社員を管理することは大事ですが、無茶な処分を強行すると、かえって大きな不利益を招きます。本記事では出勤停止の意味と有効となる条件を解説します。
この記事でわかること
- 出勤停止処分の意味と、自宅待機命令との違い
- 出勤停止処分の理由となる問題行為と、処分が有効となる3つの条件
- 停止期間の目安、期間中の給与の扱い、処分の進め方と通知書の書き方
出勤停止処分とは
出勤停止処分とは、雇用契約を維持しながら、労働者の出勤を一定期間禁止する懲戒処分をいいます。俗に自宅謹慎と言われることもあります。
出勤停止は、労働者本人の責任で課される懲戒処分ですので、出勤停止期間中は給与が支給されないのが通常です。
自宅待機との違い
自宅待機は、出勤停止処分とは異なり、通常、懲戒処分ではありません。
自宅待機は、懲戒処分が決定されるまでの調査、証拠隠滅の防止、職場への悪影響の防止を目的として、一定期間出勤を制限する措置をいいます。懲戒処分ではない以上、自宅待機中は原則として賃金が支払われます。
ここで注意したいのが賃金の扱いです。有給での自宅待機であれば原則として問題ありませんが、無給の自宅待機は、事故の再発や不正行為の再発、証拠隠滅の危険など、労働者の就労を拒む正当な理由がない限り、民法536条2項により会社は賃金の支払義務を免れません。そのため、調査目的で待機させる場面では、まずは有給での自宅待機とするのが安全です。
また、有給で自宅待機させた期間を、後になって遡って懲戒処分としての出勤停止(無給)に振り替えることはできません。すでに経過した期間を対象に出勤停止処分を行うことはできないと解されています(医療法人光愛会事件・大阪地判平成20年11月6日労判979号44頁)。
| 出勤停止処分 | 自宅待機命令 | |
|---|---|---|
| 性質 | 制裁としての懲戒処分 | 調査等のための業務命令(懲戒処分ではない) |
| 目的 | 問題行為への制裁・反省 | 事実調査、証拠隠滅や職場への悪影響の防止 |
| 期間中の賃金 | 支給しないのが通例 | 原則として支払いが必要(無給は正当理由が必要) |
| 就業規則の根拠 | 懲戒規定として必要 | 業務命令として可能(規定があればより明確) |
出勤停止を含む懲戒処分の全体像(7種類の重さの序列・処分が有効となる条件・進め方の流れ)は、懲戒処分とは?種類・重さの一覧と流れ・厳重注意との違いで体系的に解説しています。

出勤停止処分をするための3つの条件
出勤停止処分が認められる条件は、懲戒事由に該当する問題行為があること、出勤停止を選択したことが重すぎないか、停止期間が長すぎないかの3点です。
出勤停止処分の理由となる問題行為があること
就業規則等に規定された懲戒事由が存在し、これに当てはまる問題行為が存在することが必要です。
懲戒事由があること
懲戒処分を行うには、あらかじめ就業規則や雇用契約書等に懲戒事由と懲戒処分の種類が規定されていなければなりません。
そのため、規定されていない理由で懲戒処分をすることは認められていませんし、定められていない懲戒処分をすることもできません。懲戒事由については、具体的な懲戒事由を列記した上で、包括的な懲戒事由を定めることも多いため、懲戒事由が定められていないケースはありません。
懲戒事由にあたる問題行為があること
労働者が懲戒事由に当てはまる非違行為(問題行為)を行ったことが必要です。仮に、就業規則等で懲戒事由と懲戒処分が定められていたとして、これに該当する行為が存在していることが必要です。
出勤停止処分の理由となる非違行為には次のような行為が挙げられます。
・重大なパワハラやセクハラ
・度重なる遅刻や無断欠勤
・重大な業務上のミス
・重大な私生活上の問題行為
そのほかにも、比較的軽微な問題行為であったとしても、何度も厳重注意や懲戒処分を受けながらも改善されない場合にも、出勤停止の対象となることもあります。
使用者は、労働者の問題行為が存在していることを客観的な資料により証明できるようにしておくことが大切です。
問題行為の証拠資料
労働者の問題行為は、客観的にみて存在していることを説明できなければなりません。使用者側が主観的に判断するだけでは不十分です。そこで、出勤停止の原因となった問題行為が存在していることを裏付けるために、客観的な証拠を確保する必要があります。
- 業務日報
- 帳簿
- 供述調書
- メール等の履歴
- 録音や録画
出勤停止が重すぎない相当な処分であること
社員の非違行為に対して出勤停止の処分が過剰である場合には、不相当な処分として無効になります。
出勤停止は、懲戒処分の中でも懲戒解雇や諭旨解雇等の解雇処分の次に重大な処分とされ、減給処分よりもさらに重い処分と位置づけられています。なぜなら、労働者からすれば、就労の場を一時的に剥奪され、賃金の支払いも受けられないため、労働者に与える影響は非常に大きいからです。
そのため、問題行為に対して、注意や警告、軽微な懲戒処分をすることもなく、いきなり出勤停止処分とすることは重すぎるといえます。特に、軽微な問題行為については、十分に改善の機会を付与していることが必要です。
停止期間が長すぎないこと
出勤停止期間が長すぎる場合、出勤停止が無効になる可能性があります。
出勤停止期間が長すぎると、その間、労働者は賃金を受け取ることができず、労働者には大きな不利益が生じます。
法律上、出勤停止期間の上限を定めた規定はありません。もっとも、行政解釈でも「公序良俗の見地より当該事犯の情状の程度等により制限のあるべきことは当然である」とされており(昭和23年7月3日基収2177号)、事案の重さに比べて相当な期間を超える出勤停止は、民法90条の公序良俗違反として無効となり得ます。
実務では、戦前の工場法が出勤停止を7労働日と規定していた名残から、就業規則で「7労働日以内」と定める例が多くみられます。ある調査(労政時報3949号)でも、出勤停止日数の定めがある企業のうち「7日」と「10日」がそれぞれ31.6%で最も多いと報告されています。労働者の不利益を考えると、出勤停止期間は1か月以内を限度とするのが無難でしょう。なお、業務命令拒否を理由とする20日間の出勤停止を「社会通念上相当として是認でき、権利の濫用とはいえない」とした最高裁判例もあり(ダイハツ工業事件・最判昭和58年9月16日労判415号16頁)、情状の程度によっては最長で1か月程度まで認められる余地があると考えられます。
なお、出勤停止の日数は、暦日ではなく出勤日で数えるのが原則です。たとえば土日が休みの会社で月曜日から7日間の出勤停止を命じる場合、土日をはさんで翌週の火曜日までが出勤停止となります(パワーテクノロジー事件・東京地判平成15年7月25日労判862号58頁)。
出勤停止処分が有効とされた裁判例
比較的短期の出勤停止で、非違行為の内容に照らして相当と判断された裁判例には次のものがあります。
・上司への暴行を理由とする出勤停止3日(東京地判平成23年11月9日)/人事考課の面談中に上司の首をつかみ、メガネを取り上げて投げるなどの暴行を加えた事例
・出張命令の拒否を理由とする出勤停止9日(静岡地判昭和46年8月31日)/工場勤務者が3か月間の応援出張命令を拒否した事例
・職務の放棄を理由とする出勤停止7日(パワーテクノロジー事件・東京地判平成15年7月25日)/顧客先に常駐する業務で、勤務先に相談せず顧客に作業終了を伝えて契約を打ち切られた事例
セクハラを理由とする出勤停止
男性管理職2名が、複数の女性従業員に対して、セクハラをしたことを理由に10日と30日の出勤停止とされた事案です。セクハラ発言が女性従業員に対して強い不快感・嫌悪感・屈辱感を与えるもので極めて不適切な言動であることを理由に出勤停止処分を有効としました。
出勤停止処分が無効とされた裁判例
他方、非違行為の程度に比べて出勤停止が重すぎる場合には、裁量権を逸脱した処分として無効と判断されます。
・園外保育中に園児2名を一時見失ったことを理由とする出勤停止7日は「重きに失する」「裁量権を逸脱し無効」とされた(社会福祉法人七葉会事件・横浜地判平成10年11月17日労判754号22頁)
運営方針に従わないことを理由とする出勤停止
内科医長が運営方針に従わなかったり、検査室を私的利用したことを理由に3か月の停職処分とした事案です。前回の懲戒処分(訓告)がなされてから4〜5年後になされたものであること、患者に対して直接損害を与えるものではないことなどに照らせば、3か月間にもわたる停職処分をもって対応したことは重すぎる処分として無効と判断されました。
これらの裁判例からわかるとおり、同じ日数でも、非違行為の内容や悪質性によって有効・無効の判断は分かれます。処分の相当性は、行為の重さと期間のバランスで慎重に判断する必要があります。
出勤停止処分の進め方と通知書の書き方
出勤停止処分は、次の手順で進めます。①問題行為の調査(証拠の収集・関係者からの聴き取り)、②本人への弁明の機会の付与、③処分内容の決定(就業規則の手続き規定があればそれに従う)、④処分の通知です。調査のために出勤を止める必要があるときは、前述のとおり、まずは有給での自宅待機とするのが安全です。
処分の通知は、口頭ではなく出勤停止処分通知書(懲戒処分通知書)を交付して行います。通知書には次の事項を記載します。
✔ 出勤停止処分通知書の記載事項
・処分の対象となる問題行為(日時・内容を具体的に)
・処分の内容(出勤停止)と停止期間(開始日・終了日)
・適用する就業規則の条文
・停止期間中の賃金を支給しない旨
・停止期間満了後の出勤に関する指示
交付の際は、通知書の写しに受領の署名をもらい、記録として残しておきます。
出勤停止が無効となる場合の会社の不利益
出勤停止の懲戒処分が無効となる場合、会社にはさまざまな不利益・負担が生じます。
賃金を支払う経済的な負担
出勤停止が無効となれば、出勤停止期間の賃金を支払う必要があります。
出勤停止期間が長期にわたるような場合や、出勤停止とするだけの十分な理由が存在しない場合には、出勤停止処分は無効となります。出勤停止が無効となれば、使用者の責任で労働者は出勤できなかったことになるため、民法536条2項により、労働者は企業に対して出勤停止期間中の賃金を請求することができます。
労働紛争に対応するための負担
出勤停止処分に関する労働紛争に対して、様々な対応を強いられることで企業側に負担が生じます。出勤停止処分に関する労働審判や労働訴訟の手続きが着手されると、否が応でも企業側はその対応のため経済的・事務的な負担を強いられます。
通常、労働紛争に至れば、弁護士に依頼する必要が生じ、弁護士費用などの経済的な負担が生じます。また、弁護士に一任しても丸投げすることはできません。企業側担当者も事情の聞き取りや労働審判への同行といった負担を求められます。このように、賃金の支払いといった経済的な負担に限らず、それ以外のさまざまな負担を招くことになります。
社員のモチベーションが低下する
懲戒処分に関する労働紛争が起きると、内部の従業員のモチベーションが低下するおそれがあります。
企業の行った出勤停止処分が、紛争化し裁判所などで争われると、従業員の不安を招き企業秩序を不安定にさせてしまいます。企業秩序が乱れることで、社員の愛社心が低下しモチベーションの低下を招きます。モチベーションの低下を放置することで、社員の離職や企業の評判の悪化を引き起こします。
出勤停止期間中の給与は支払う必要はない
出勤停止期間中、企業は労働者に対して給与を支払う必要はありません。
出勤停止により、労働者は出勤を禁じられ労務を提供することができません。いわゆるノーワークノーペイの原則のとおり、仕事をしない以上、その対価である賃金を支払う必要がありません。また、この労務の不提供は労働者側の責めに帰すべき事由によるものですので、危険負担(民法536条2項)の問題も生じません。
ただし、労働者に対する不利益の大きさを考えると、就業規則では、『出勤停止期間の賃金は支払わない。』と定めておくべきでしょう。特に完全月給制を採用している会社では、この規定がないと賃金控除の可否をめぐって理論上の争いが生じ得るため、明記しておくことが重要です。
なお、出勤停止に伴う賃金の不支給は、労働基準法91条が定める減給の制裁の上限(1回につき平均賃金の半日分まで)の適用を受けないと解されています。賃金の不支給は制裁としての出勤停止に当然に伴う結果であり、労務の提供を受領しながらその賃金を減額するもの(減給)とは性質が異なるからです(パワーテクノロジー事件・東京地判平成15年7月25日労判862号58頁)。そのため、期間中の無給額が平均賃金の半日分を超えても91条違反にはなりませんが、その分、労働者の不利益は処分自体の相当性(期間が長すぎないか)の判断で厳しく考慮されます。制裁として賃金を差し引く減給処分の上限については、減給処分とは?労基法91条の上限・計算例で詳しく解説しています。
出勤停止処分の後に退職勧奨はできるか
出勤停止処分をしても問題行為が改善されない場合、退職勧奨を検討することがあります。退職勧奨は懲戒処分ではないため、出勤停止処分をした後に退職勧奨を行うこと自体は、同じ行為を二重に処分すること(一事不再理違反)には当たりません。
ただし、注意点が2つあります。第一に、出勤停止を退職に追い込むための手段として使うこと(実質的な退職強要)は違法と評価されるリスクがあります。第二に、退職勧奨はあくまで本人の自由な意思による退職を促すものであり、拒否された場合に無理に続けることはできません。適法な進め方は退職勧奨とは?退職勧奨の注意点を弁護士が解説しますで詳しく解説しています。
よくある質問
Q. 出勤停止の期間中、給与は支払う必要がありますか?
懲戒処分としての出勤停止では、ノーワーク・ノーペイの原則により停止期間中の賃金を支給しないのが通例です。ただし、就業規則に「出勤停止期間中の賃金は支払わない」旨を定めておくべきです。
Q. 出勤停止と自宅待機命令はどう違いますか?
出勤停止は制裁としての懲戒処分ですが、自宅待機命令は調査などのための業務命令であり懲戒処分ではありません。自宅待機の場合は原則として賃金の支払いが必要で、無給とするには就労を拒む正当な理由が必要です。
Q. 出勤停止の期間に上限はありますか?
法律上の上限を定めた規定はありませんが、実務では7労働日程度とする例が多く、長くても1か月以内が無難です。問題行為の重さに比べて長すぎる出勤停止は、公序良俗(民法90条)に反し相当性を欠くとして無効と判断されるリスクがあります。
Q. 出勤停止処分の後に退職勧奨をしてもよいですか?
退職勧奨は懲戒処分ではないため、出勤停止処分の後に行うこと自体は二重処分には当たりません。ただし、出勤停止を退職強要の手段とすることは違法となるリスクがあるため、本人の自由な意思を尊重した適法な進め方が必要です。
出勤停止処分の問題は弁護士に相談を
問題社員を放置することは、企業内の秩序を乱すことになるため、適切に対処する必要があります。しかし、本来は減給や降格といった軽めの処分で十分であるのに、それよりも重い処分である出勤停止をすると無効になる可能性があります。
出勤停止処分を行うにあたっては、それに値する十分な理由があるのか、出勤停止期間は長すぎないかを弁護士に相談するなどして慎重に進めていきましょう。
「この行為に出勤停止は重すぎないか」——処分の選択と期間の設計をサポートします
出勤停止は解雇に次ぐ重い処分です。処分の相当性、停止期間の設定、通知書の作成、処分後の対応(改善指導・退職勧奨の検討)まで、中小企業診断士の資格を持つ弁護士が貴社の就業規則に即して助言します。初回相談30分無料。年中無休・来所不要、電話・LINE・ウェブ面談に対応しています。
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