懲戒解雇と失業保険|懲戒解雇の条件や懲戒解雇をした時の失業保険の手続きを弁護士が解説

公開日: 2023.11.28

「従業員を懲戒解雇した場合、失業保険はどうなるのだろうか」と気になりませんか。

結論から言えば、従業員を懲戒解雇したとしても、受給資格を満たしている従業員に関しては、一定期間を経れば失業保険は支給されます。

この記事を読むことで、従業員を懲戒解雇した場合の失業保険の手続きについて理解することができます。

懲戒解雇時の失業保険について気になっている方はぜひ、最後まで読んでください。

失業保険とは

失業保険とは、一定の労働時間以上働く従業員が失業した場合に、一定期間お金を雇用保険から受け取ることができる保険制度のことを指します。

失業保険の手続きや、受給条件に関しては、以下の通りです。

・失業保険の基本的な手続き

・特定受給資格者とは

・給付金の計算方法

・受給の条件と期間

それぞれについて解説します。

失業保険の基本的な手続き

従業員を解雇する際の失業保険の基本的な手続きとして、経営者や人事部は資格喪失の手続きを行う必要があります。

まず、雇用保険喪失のための必要書類として、離職票、雇用保険の資格喪失届、雇用保険被保険者離職証明書を作成します。

これらの書類はハローワークに提出します。従業員を解雇する場合、必ず雇用保険被保険者離職証明書を作成するよう留意してください。

従業員が退職届を提出していない場合、ハローワークは雇用保険被保険者離職証明書がなければ書類を受け付けません。同時に、関連する添付書類としては、出勤簿やタイムカード、賃金台帳(給与明細)が必要です。

これらの手続きを遵守することで、スムーズに雇用保険の喪失手続きを進めることができます。

特定受給資格者と特定理由離職者

特定受給資格者とは、主に会社の倒産や解雇によって退職する従業員を指します。通常の離職よりも受給条件において優遇されており、通常は最低1年間の加入期間が必要な失業保険が、この特定受給資格者に対しては6ヶ月の加入期間で支給され、基本手当の支給日数も手厚くなる傾向があります。これは、会社都合での解雇が予測できない状況で退職するため、自己都合退職よりも支援が充実していることを反映しています。

これに対して、特定理由離職者とは、特定受給資格者以外の者であって、期間の定めのある労働契約が更新されなかったことや正当な理由で自己都合で離職した者を言います。自主退職した者は特定理由離職者に当たります。

給付金の計算方法

給付金の計算方法は、以下の通りです。

・賃金日額=退職する前の6ヶ月間の給与総額(賞与は除きます)÷180

・基本手当日額=賃金日額×45%から80%(賃金日額や受給時の年齢により異なります)

・基本手当の総額=基本手当の日額×所定給付日数(離職理由により変動します)

・1ヶ月に振り込まれるのは基本手当の日額を28日間分です。

基本手当日額は毎年8月1日に改定が行われるため、変動する可能性があります。

受給の条件と期間

失業保険の受給にあたっては、自己都合退職の場合は離職する前の2年間の間に、12ヶ月以上の加入期間が必要であり、一方で会社都合離職の場合は離職前の1年間の間に6ヶ月以上の加入期間が必要となります。また、受給期間は原則として離職日の翌日から1年間に限られています。

解雇と特定受給資格者

解雇は、会社都合による離職であり、特定受給資格者に当たるのが原則です。

しかし、解雇の中でも、労働者側の責任が重い場合(重責解雇)には、自己都合離職となるため、失業保険を受給できる条件や内容が変わります。ただ、労働者の問題行為を理由とする懲戒解雇の全てが重責解雇に当たるわけではありませんので、注意が必要です。

懲戒解雇とは

懲戒解雇とは、企業が従業員との労働契約を取り消すことを指します。懲戒解雇の条件は、就業規則に明記された条件を満たすかどうかが検討され、それに基づいて懲戒解雇の可否が決定されます。ただし、解雇の理由には労働契約法19条の規定があり、客観的に見て社会通念上相当でない場合、訴訟等において解雇が無効とされる可能性があります。

重責解雇と懲戒解雇との違い

懲戒解雇と重責解雇の違いは、懲戒解雇が労働契約法上の概念であるのに対し、重責解雇は雇用保険(失業保険)上の概念であることです。会社の就業規則に基づく判断による懲戒解雇と、雇用保険上の重責解雇では判断が異なります。

そのため、懲戒解雇を行ったとしても、重責解雇となるかどうかは別の問題となります。重責解雇は失業保険の受給日数や、受給に必要な加入期間に大きな影響を与えます。通常の解雇や懲戒解雇よりも、より厳しい制裁が課せられるということです。

重責解雇となる条件

重責解雇となる条件として、以下の条件があります。

https://www.mhlw.go.jp/content/001151898.pdf

➀職務に関連する犯罪行為があった場合

例えば、バスの運転手やタクシーの運転手などが飲酒運転をして有罪判決を受け、解雇されるケースが考えられます。ただし、逮捕されただけの場合や、訴追されている状態などで刑が確定していない場合には、重責解雇とはなりません。判決で刑罰が確定してはじめて適用するかどうかを考えることになります。

②故意または重過失により設備や器具を破壊した場合

経営者に対して故意または重過失で設備や器具を破壊して損害を与えて解雇された場合が該当する可能性があります。

③故意または重過失によって事業所の信用を失墜させた場合

従業員の言動によって、経営者に対して物質的な損害を与えた場合や、顧客の減少などが起こってしまったことが原因で従業員が解雇された場合、重責解雇に該当する可能性があります。

④重大な就業規則違反をした場合

就業規則又は、労働協約を締結している場合にはその労働協約を従業員が破って解雇された場合に、重責解雇に該当する可能性があります。ただし、軽微な場合には該当しない可能性があります。例えば、極めて軽微なものを除き、会社内で窃盗や横領、傷害刑事犯に該当する場合や、賭け事や風紀を乱す行為、長期間の無断欠勤に対して出勤を促しても出勤しない場合、出勤不良で出欠常ならず、数回注意を受けたけれど改善されない場合などが該当します。

⑤会社の機密を漏洩した場合

会社の機密を漏洩し、それで解雇された場合、重責解雇に該当する可能性があります。機密にあたるものとして、原料や機械器具、製品、技術等の秘密や、経営に関する資産状況や経営状況の漏洩も含まれます。

⑥会社の名前を騙り、不正を働いた場合

会社の名前を騙って自己の利益を得ようとする行為を行うなど、不正を働いた場合は重責解雇に該当する可能性があります。

⑦経歴を詐称していた場合

雇用保険の被保険者(従業員)が他人の経歴を盗用した場合や、経歴を詐称して会社に入社をし、解雇された場合は重責解雇に該当する可能性があります。

重責解雇の場合の失業保険

重責解雇の場合、失業保険を受給するための条件は、自己都合の場合と同じになります。通常の自己都合離職と同様に、失業保険を受けるためには、1年間以上の加入期間が必要であり、失業保険の給付を受けるまでの待期期間は2ヶ月と7日です。また、給付日数は最大150日となり、通常の会社都合退職の場合にもらえる最大給付日数の330日ではありません。

失業保険のための手続き

失業保険のための手続きとして、以下の手続きがあります。

・離職票の作成

・求職の申込(ハローワーク)

・雇用保険説明会

・失業認定

・失業保険の受給

それぞれについて解説します。

離職票の作成

失業保険を受け取るためには必ず離職票が必要となります。解雇を行う場合は離職票に元従業員のサインは不要なため、会社単独で喪失手続きが可能です。

求職の申込(ハローワーク)

離職票を受け取った元従業員は、ハローワークに離職票と雇用保険受給者資格者証、顔写真(各ハローワークがサイズを指定したもの)2枚、マイナンバーカードや運転免許証の写しを持参し、ハローワークに求職の申し込みを行います。このとき配布される失業給付受給のためのしおりを紛失しないように留意してください。

雇用保険説明会

求職の申し込みをした元従業員は、申込時に案内された日時にハローワークの雇用保険説明会に参加します。

雇用保険説明会では、不正受給となる行為や失業保険を受け取る上で重要な説明が行われます。この日には、雇用保険受給者資格者証と失業認定申告書が配布されます。求職の申し込み時には、配布されたしおりと引き換えに書類を受け取ることになります。

失業認定

4週間に1度、失業認定の日が設定されており、この日には必ずハローワークに出向く必要があります。ただし、病気や予定の重なりなど特別な事情がない限り、失業認定日を変更することはできません。無断で欠席すると失業認定が取り消され、失業保険の給付が受けられなくなるため、出頭できない場合は必ず相談するようにしましょう。

失業保険の受給

失業保険は、1ヶ月分の支給が28日分ずつ行われます。初回の給付については、待期期間の関係で、28日分未満になる可能性が高いです。また、初回の支給後も、4週間ごとに失業認定を受ける必要があります。もし就職などが決まった場合は、ハローワークに連絡し、その旨を伝えるようにしましょう。就職が決まらない場合は、失業保険の給付日数の限度まで失業認定と受給を繰り返し、日数がなくなるまで続けます。

懲戒解雇が有効となるためには

懲戒解雇が有効となるための条件を補足して説明します。

懲戒解雇は、社員の非違行為(問題行為)を理由に雇用契約を一方的に終了させる懲戒処分です。

懲戒処分の中では最も重大な処分ですので、懲戒解雇が有効となるためには、厳格な条件を満たす必要があります。

1. 客観的に解雇とする合理的な理由があること

2. 解雇とすることが重すぎないこと(社会通念上相当であること)

3. 告知聴聞の機会(言い分を述べる機会)

4. 就業規則等に懲戒事由と懲戒解雇が規定されていること

解雇の理由

解雇は重大な処分ですから、主観的な理由で解雇することはできません。解雇できるだけの理由が客観的な証拠から説明できることが必要です。

社会通念上の相当性

処分歴がないこと、勤務態度、会社への貢献度、解雇理由の重大さ、本人の反省の有無等を踏まえて、解雇処分が重すぎないことが必要です。

告知聴聞の機会

労働者に対して、予定している処分の内容を告知した上で、言い分を述べる機会を与えなければなりません。いきなり解雇処分をすることは避けなければなりません。

就業規則の定め

懲戒解雇を含め懲戒処分をするためには、就業規則上に懲戒処分の対象となる懲戒事由を定めるとともに、懲戒解雇が懲戒処分の一つとして規定されていることが必要です。

懲戒解雇の問題は弁護士に相談を

今回は、懲戒解雇と失業保険について解説しました。特に注目して欲しい点としては、懲戒解雇をしたとしても、重責解雇に該当するとは限らないということです。

重責解雇は従業員の失業保険受給に大きな影響を及ぼすため、慎重に判断しましょう。