残業50時間を超えると違法となるのか?罰則、社員や企業のリスクを弁護士が解説

公開日: 2023.12.20

残業50時間が常態化すると、様々な問題を引き起こします。

多額の残業代を負担しなければなりません。仮に、残業代を払わずにサービス残業となっている場合には、労働基準監督署による調査や是正勧告を受ける可能性もあります。遅延損害金や付加金の負担も生じます。

その他に、社員の心身の疾病を招くだけでなく社員のモチベーションを悪化させる要因にもなります。このように長時間の残業を放置することにメリットなどありません。適切に対応しなければ企業の事業運営に重大な悪影響を生じさせます。

本記事では、50時間を超える残業について、企業のリスクや対応策を弁護士が解説します。

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残業50時間は平均値を大幅に超える

厚生労働省の調査によると、一般労働者の1ヶ月の残業時間の平均は、12.7時間とされています(毎月勤労統計調査 令和5年8月分結果確報

この平均時間を踏まえると、50時間の残業は、平均値の4倍程の数値であり、いかに長時間労働であることが分かるかと思います。

50時間を超える残業が常態化すると、残業代の経済的負担が増えるだけでなく、社員の心身の健康状態を著しく悪くさせます。

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残業50時間が違法になる場合とは

使用者が従業員に50時間以上の残業をさせることは基本的に違法となります。残業50時間が違法になる理由を次のとおりです。ただ、例外的に違法にならないケースもあります。

36協定がない

そもそも、企業は、法定労働時間である1日8時間、週40時間を超えて残業をさせることは認められていません。

ただ、例外的に、36協定(サブロク協定)を締結し、これを労働基準監督署に届け出る場合には、残業をさせることが認められます。

この36協定とは、労働者に法定労働時間を超えて労働させたり、休日労働をさせる場合に労働者と結ぶ取り決めのことをいいます。

そのため、36協定を結んでいなければ、50時間はおろか1時間でも労働基準法に違反することになります。

なお、36協定を締結したとしても、残業時間に対応する割増賃金は当然ながら支払う必要はあります。

上限規制に反する

36協定が締結されていたとしても、残業時間は無制約ではありません。残業時間の上限は、毎月45時間、年間360時間とされています。

そのため、1ヶ月50時間の残業は、残業時間の上限規制に違反し違法となります。

特別条項があってもこれに反している

36協定に、臨時的な特別な事情があることを条件とする特別条項がある場合には、月45時間を超える残業も適法になる場合があります。

ただ、特別の事情があっても、以下を守る必要があります。

1. 時間外労働が年720時間以内

2. 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満

3. 時間外労働と休日労働の合計について、「2か月平均」「3か月平均」「4か月平均」「5か月平均」「6か月平均」が全て1月当たり80時間以内

4. 時間外労働が月45時間を超えることができるのは年6か月が限度

これらに反する場合には、月50時間の残業は違法となります。

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残業代が対象外のケース

残業50時間をしたとしても、残業代を支払う必要がないケースがあります。

管理監督者

労働者が労働基準法の管理監督者に当たる場合には、使用者は残業代を支払う必要がなくなります。

ただ、管理職一般が労基法の管理監督者に該当するわけではありません。管理職の中でも、経営者と一体的な立場といえるだけの権限や裁量が与えられており、出退勤の自由があり、管理監督者に相応しい待遇であることが必要となります。

取締役等の役員

取締役等の役員も従業員ではないため、残業代を支払う必要はありません。取締役等の役員は、企業と労働契約ではなく委任契約を締結します。

ただ、役員であっても、使用人兼務取締役のように、従業員としての立場も兼ね備えている場合には、残業代の支払いが必要となる可能性があります。

長時間労働による社員への悪影響

月50時間を超える長時間が常態化すると、社員の心身に重大な悪影響を生じさせるおそれがあります。

脳心臓疾患のリスク

まず、月50時間の残業が続くと、社員の身体に重大な負担を生じさせ、脳心臓疾患を引き起こすリスクがあります。

確かに、いわゆる過労死基準となる労働時間は月100時間、2~6ヶ月の平均が80時間以上です。これに至らない月50時間の残業も長期間にわたり続けば、脳疾患、心臓疾患のリスクを高めます。

精神疾患のリスク

過労死基準に達しない残業時間であっても、長時間労働が続けば、労働者の心理的な負荷を大きくさせます。残業の抑制などの適切な対応を取らずに放置すると、うつ病等の精神疾患を引き起こします。

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残業50時間を超える場合の使用者側のリスク

50時間の残業が常態化すると、使用者側にも様々な負担を招きます。

残業代の高額化

残業をさせれば、使用者は労働者に対して割増賃金を支払わなければなりません。万が一、残業代を支払わずにいると、遅延損害金が発生します。退職するまでであれば年3%、退職後であれば年14.6%の遅延損害金が発生します。残業をしている社員が1人ではなく複数人いる場合には、その分、残業代の負担は大きくなります。

残業代の消滅時効が伸長した

かつて残業代の時効は2年でした。しかし、民法改正に伴い残業代の時効は当面の間3年になりました。そして、近い将来、この3年の消滅時効は5年に伸長されることが予定されています。

残業代の時効が伸びれば、その分企業側の負担する残業代も増大します。なお、本来であれば、消滅時効に関わらず残業代の全てについて、企業には支払義務があることを付言しておきます。

損害賠償請求を受ける

使用者側が長時間に及ぶ残業を漫然と放置したことで、労働者が脳心臓疾患に罹患したり精神疾患を患った場合には、使用者は労働者から損害賠償の請求を受けます。

社員のモチベーションを低下させ離職を招く

長時間労働が常態化すると、社員のモチベーションを低下させます。適切な対応をしない企業に対する不満を募らせていき、結果として社員の離職を引き起こします。

企業の社会的評価が悪化する

長時間労働を放置させたことで、社員の離職を招いたり、心身の疾患を発症させることで企業の社会的評価を低下させます。離職した社員や不満を持つ社員が、SNSや掲示板を通じて、企業の悪評を拡散させることがあります。

悪評が拡散されると、新規の人材の確保が難しくなったり、新たな取引の障害になる可能性があります。

罰則を受ける

 使用者側が、労基法に違反して労働者に月50時間の残業をさせた場合には、刑事罰を受ける可能性があります。具体的には、労働基準法に基づき、「6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」を科される可能性があります(労働基準法119条1号)。

また、労働基準監督署から是正勧告や指導を何度も受けているにもかかわらず、改善しない場合には、先ほどの罰則に加え企業名の公表を受ける可能性もあります。

50時間の固定残業代は無効になる可能性

不必要な残業を抑制するため、固定残業代を導入することがあります。

固定残業代制を導入する場合、固定残業代が対象とする残業時間をあらかじめ設定しておく必要があります。

固定残業代で想定する残業時間があまりにも長時間である場合、固定残業代の合意が無効と判断される可能性があります。

残業時間の上限が月45時間とされていることから、固定残業で組み込む残業時間は45時間を目安とするのが望ましいと考えられます。

そのため、45時間を超える50時間を残業時間として組み込む固定残業代制は無効となる可能性があります。

50時間の残業代の計算方法

残業代を計算する方法を解説します。

計算方法

残業代は、時給換算した賃金額に残業時間を掛けた上で、割増賃金率を掛けることで算出されます。

残業代(時間外手当)

=1時間当たり賃金×時間外労働時間数×1.25

1時間あたりの賃金

1時間あたりの賃金は、月給制であれば月給額を所定労働時間で割ることで算出します。

この月給額には、支給される賃金の全てが含まれるわけではありません。次の賃金は基礎賃金から除外することができます。

家族手当

通勤手当

住宅手当

臨時に支払われた賃金

賞与

月給30万円の場合

月給30万円で、残業時間が50時間である場合、割増賃金の金額は106250円になると想定されます。

具体的には、月就労日数を22日、1日あたりの所定労働時間を8時間とする場合(月所定労働時間176時間を前提)、時給換算の賃金が約1700円となります。そのため、月50時間の残業をした場合には、106,250円程の割増賃金が発生することになります。

月給50万円の場合

月給50万円の場合、先ほどと同じ条件であれば、1時間あたりの賃金が2840円となるため、残業50時間の残業代は177,500円となります。

会社側の取るべき対応

社員の残業に対して使用者側が取るべき対応を解説します。

特別条項付の36協定を届け出る

長時間の残業は、できる限り抑えるべきですが、時期や取引量によっては残業を回避できないこともあります。そこで、45時間を超える残業が違法にならないよう、特別条項を付けた36協定を締結して、労基署に届け出るようにしましょう。

業務効率を改善する

残業時間を短くして、残業を抑制することは、労働者の心身の負担を軽くするだけでなく企業の負担も軽減させます。

残業時間を抑制するためには、業務効率を改善することが考えられます。例えば、作業内容にバラツキがある場合には、作業の標準化を進めて非効率な作業を無くします。また、整理整頓を進めるなど5Sの徹底を図ることも一つです。

残業を禁止する

使用者が社員に対して残業を禁止することを明確にアナウンスすることです。定期的に告知し、残業禁止に違反する場合には、懲戒処分も辞さない態度を示します。それでもなお、残業せざるを得ない状況であれば、管理監督者に残務を引き継ぐ等するようにします。

残業を許可制にする

管理監督者への引き継ぎもできない場合には、残業することも致し方ないでしょう。ただ、無制限に残業することを抑制するために、残業を許可制にするようにします。許可制を採用することで、残業時間を管理しやくなります。また、残業に対する心理的な負担を生じさせ残業を抑制することが期待できます。

固定残業代を採用する

固定残業代制を採用することも残業を抑制する1つです。固定残業代は、残業する・しないに関わらず支給されるものです。そうすると、残業をすることなく定時に帰宅しながら固定残業代をもらう方がお得です。そのため、社員に残業しないように業務効率を上げようとするモチベーションが生じます。

残業代を請求される場合の手続き

残業代の請求は、労働者またはその代理人弁護士を通じて行われています。退職後に請求することも多いですが、在職中の社員から請求されることもたります。

残業代請求のプロセスには次の方法があります。

残業代請求のプロセス

  • 交渉
  • 労働審判
  • 訴訟手続
  • あっせん手続

交渉を進める

社員やその代理人弁護士との間で残業代に関する問題を交渉することがあります。

代理人弁護士が就いている場合、使用者宛に内容証明による通知書が送達されます。

通知書には、残業代の支払いを求める内容に加えて、タイムカード、賃金台帳、業務日報、就業規則といった労働時間に関する資料の開示を求める内容も含まれていることもあります。

資料の開示を含めて、労働者側と交渉による解決の余地があるのかを精査します。

交渉の結果、残業代の金額や支払時期、その他の条件について合意できれば、合意書を作成します。合意に至らない場合には交渉を断念せざるを得なくなります。

労働審判の申立て

労働審判とは、地方裁判所の裁判官と労働審判委員(2人)で構成される審判委員会が、残業代等の労働紛争を解決させる裁判手続きです。

労働審判の回数は3回に制限されているため、通常の訴訟手続きと比べると圧倒的に早いプロセスになります。ただ、迅速な手続きであるために、慎重な審理を行うことが困難といえます。そのため、労働者だけでなく使用者側においても、大幅な譲歩を求められることもよくあります。解決までの期間としては3か月から6か月が平均的です。

労働審判は、話し合いによる解決を基調としていますが、裁判所による仲裁を経ても合意に至らない場合には、裁判所から労働審判が下されます。審判の言い渡しを受けてから2週間以内に異議を申し出なければ、その審判が確定します。他方で異議を申し出れば訴訟手続に移行することになります。

訴訟手続

訴訟手続きでは、原告と被告が互いに主張と反論を繰り返して争点に関する審理を進めていきます。訴訟手続では、回数の制限はなく、解決までの期間は1年以上を要します。

当事者による主張立証が尽くされた段階で、裁判所から和解の提案が行われます。和解の協議の末、合意に至れば解決となります。和解協議を経ても合意に至らない場合には、当事者尋問を実施した上で判決手続となります。

判決の言い渡しを受けてから2週間以内に控訴しなければ判決は確定します。

あっせん手続

あっせん手続とは、労働局や都道府県の労働委員会が仲裁をするプロセスです。

あっせん手続きにおいては、解決までの期間が1か月前後である点で迅速なプロセスと言えます。ただ、使用者側は、あっせん手続きを拒否することができるため、解決率は高くはありません。

残業代の問題は弁護士に相談を

50時間を超える残業時間が常態化している場合、数々の問題を招きます。問題が顕在化する前に残業を抑制するための事前策を講じる必要があります。長時間の残業が常態化している場合には、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。

まずは、弁護士に相談した上で、計画的に進めていきましょう。初回相談30分を無料で実施しています。面談方法は、ご来所、zoom等、お電話による方法でお受けしています。