「無断欠勤が続いている。何日休んだら解雇できるのか」——この相談は非常に多く、そしてほとんどの場合、想定より厳しい答えになります。
ネット上には「2週間の無断欠勤で解雇できる」という説明が溢れていますが、この「2週間」は解雇の有効性の基準ではありません。まったく別の制度の基準が、いつの間にか解雇の要件のように語られているだけです。本記事では、無断欠勤を理由に解雇できるのはどのような場合か、その前に何をすべきかを、企業側の弁護士が整理します。
「何日で解雇できる」という日数基準は、法律のどこにもありません。よく言われる「2週間」は、解雇予告手当を払わずに即日解雇するための除外認定を受けられるかどうかの目安であって、解雇そのものが有効になる基準ではありません。解雇の有効性は労働契約法16条により、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性で判断されます。日数だけを根拠にした解雇は、無効と判断されるリスクが高いといえます。
この記事のポイント
- 「2週間で解雇できる」は誤解。それは解雇予告除外認定の目安であって、解雇の有効性の基準ではない
- 解雇の可否は労働契約法16条で判断される。日数ではなく経緯と手続が見られる
- 就業規則に解雇事由の定めがなければ懲戒解雇はできない
- 無断欠勤の背後にメンタル不調があると、解雇が無効になりやすい
- 出勤の督促を書面で行った記録が、後の有効性判断を大きく左右する
- 解雇より先に、就業規則の退職扱い(自然退職)条項が使えないか検討する
- 解雇が無効になれば解雇日以降の賃金(バックペイ)を支払うことになる
まずここを正確に押さえてください。「2週間以上の無断欠勤」という基準は実在します。ただし、それは解雇の有効性の基準ではありません。
誤よくある理解
- 2週間無断欠勤したら解雇できる
- 日数を満たせば懲戒解雇にしてよい
- 就業規則に「無断欠勤14日で懲戒解雇」と書いてあるから大丈夫
正実際の枠組み
- 「2週間」は解雇予告除外認定(=予告手当を払わずに即日解雇できるか)の行政解釈上の目安
- 解雇が有効か無効かは、労働契約法16条で別に判断される
- 就業規則に定めがあっても、その適用が相当かどうかは裁判所が判断する
2つの制度は目的がまったく違う
- 解雇予告除外認定(労働基準法20条1項但書)|30日前の予告も解雇予告手当も不要にするための手続。労働基準監督署長の認定が必要。行政解釈では「2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」が例として挙げられている
- 解雇権濫用法理(労働契約法16条)|解雇そのものが有効かどうか。客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は無効
①の認定が下りても、②で無効と判断されることはあり得ます。認定は「手当を払わなくてよい」というだけで、「解雇してよい」というお墨付きではありません。
この混同が実害を生むのは、「日数が足りたからもう解雇できる」と考えて手続を省略してしまうときです。裁判で見られるのは日数そのものではなく、会社が本人の状況を確認しようとしたか、出勤を促したか、弁明の機会を与えたかという経緯です。日数だけを根拠にした解雇は、経緯が薄いぶん無効になりやすくなります。
無断欠勤による解雇の有効性は、次の4点で判断されると考えてください。日数はこのうち1要素にすぎません。
| 要素 | 見られる中身 |
|---|---|
| ① 欠勤の期間と回数 | 連続何日か、断続的に何回か。連続2週間以上は一つの目安だが、これだけでは足りない |
| ② 欠勤の理由 | 正当な理由がないか。傷病・メンタル不調・ハラスメントからの回避が背景にあれば、解雇は極めて認められにくい |
| ③ 会社が尽くした手続 | 出勤の督促をしたか、理由を確認しようとしたか、弁明の機会を与えたか。記録が残っているか |
| ④ 業務への支障と過去の処分歴 | 実際に業務に支障が出たか。以前に注意・指導・軽い処分を経ているか |
②の見落としが最も危険です。無断欠勤の背景にうつ病などの精神疾患があった場合、本人は連絡を取ること自体が困難な状態にあります。この状況で解雇すると、「療養が必要な状態であることを会社が確認しないまま解雇した」と評価され、無効となる可能性が高くなります。とくに長時間労働やハラスメントが疑われる事案では、会社側の安全配慮義務違反が同時に問題になります。連絡が取れない社員に対しては、解雇の検討より先に受診勧奨や休職制度の適用を検討してください。
無断欠勤を理由とする解雇には2つの道があります。実務では普通解雇のほうが選ばれることが多いのですが、その理由を理解しておく必要があります。
普普通解雇
- 労務提供ができないこと自体を理由とする
- 就業規則の解雇事由に該当することが前提
- 解雇予告または解雇予告手当が必要
- 退職金は原則として支給する
- 懲戒解雇より有効と認められやすい
懲懲戒解雇
- 企業秩序違反に対する制裁として行う
- 就業規則に懲戒事由と種類の定めがなければできない
- 除外認定を受ければ予告手当は不要だが、認定は容易ではない
- 退職金の不支給・減額と結びつくことが多い
- 要件が厳格で、無効とされるリスクが高い
懲戒解雇を選ぶ前に確認すべきこと
- 就業規則に懲戒の種類と事由が定められ、周知されているか。定めがなければ懲戒処分そのものができません
- 弁明の機会を与えたか。手続的な瑕疵は、それだけで無効事由になり得ます
- より軽い処分を検討したか。いきなり最も重い処分に飛ぶと相当性を欠くと判断されやすくなります
- 過去の同種事案と処分が均衡しているか。同じ行為に軽い処分で済ませた前例があると不公平と評価されます
※ 懲戒解雇が有効であっても、退職金の全額不支給が当然に認められるわけではありません。退職金には賃金の後払い的な性格があるため、これまでの勤続の功を抹消するほどの著しい背信性が必要とされます。無断欠勤のみを理由とする全額不支給は、争われる可能性があります。
裁判で会社の対応が評価されるのは、まさにこの部分です。手順を踏んだ記録があるかどうかで、結論が変わります。
無断欠勤が始まってからの流れ
- 初日〜3日目:連絡を試みる。電話・メール・SNSなど複数の手段で。試みた日時と手段を記録する
- 3日〜1週間:緊急連絡先へ連絡。家族・親族に安否を確認する
- 1週間前後:出勤督促状を書面で送付。配達証明付き内容証明郵便が望ましい。期限と、応じない場合の措置を明記する
- 並行して:理由の確認と受診勧奨。傷病が疑われる場合は休職制度の案内を行う
- 2週間前後:再度の督促と弁明の機会の付与。書面で行い、返答期限を切る
- それでも応答がない場合:退職扱い条項の適用可否を検討(後述)
- 最終手段として解雇。解雇通知書を作成し、到達を確保する
出勤督促状に入れるべき5項目
- 欠勤している期間の特定(「令和◯年◯月◯日から本日まで」)
- 会社が連絡を試みた経緯(いつ、どの手段で連絡したか)
- 出勤または連絡を求める旨と、その期限
- 欠勤の理由を申し出るよう求める旨(傷病であれば診断書の提出を求める)
- 期限までに応じない場合に会社が取り得る措置(退職扱い、解雇の検討など)
「解雇する」と断定して書かないでください。まだ理由の確認ができていない段階で結論を通告すると、その後に事情が判明したときに撤回できず、かえって不利になります。
送付先の住所が古いままになっていないか確認してください。書類が届いていなければ、督促した事実そのものが認められません。住民票の取得も検討します。なお、そもそも本人と連絡が取れず所在も分からない場合は、解雇の意思表示をどう到達させるかという別の問題が生じます。この場面の手順は無断欠勤で連絡が取れない社員への対応で詳しく解説しています。
多くの就業規則には、「無断欠勤が◯日以上続いた場合は、その日をもって退職したものとみなす」という趣旨の規定(退職扱い条項、自然退職条項)が置かれています。
この規定が使えるなら、解雇ではないため解雇権濫用法理の適用を受けず、解雇予告手当も不要です。実務上、まず検討すべき選択肢といえます。
退職扱い条項を使うための前提
- 就業規則に明確な定めがあり、周知されていること
- 定められた日数を実際に満たしていること
- 会社が連絡・督促を尽くしたこと。何もせずに日数の経過だけで適用すると争われます
- 欠勤に正当な理由がないこと。傷病であれば休職制度が優先されます
退職扱い条項は万能ではありません。裁判例では、実質的に解雇と同じ効果を持つ規定について解雇に準じた慎重な判断がなされることがあります。「規定があるから自動的に退職」と考えず、督促の記録を残したうえで適用してください。また、本人が後から「病気で連絡できなかった」と主張してくることは珍しくありません。理由の確認を尽くしたという証拠が必要です。
相談として多いのは、実は長期の連続欠勤よりも、断続的な無断欠勤や当日欠勤の繰り返しです。1回ごとは1日や2日なので処分に踏み切れず、気づけば数年経っている——という状態です。
繰り返し型で押さえるべき3点
- 連続日数で判断しない。「2週間」という目安は連続欠勤を前提にしたものです。断続型は累積の回数・頻度・業務への支障で評価します
- 段階を踏んだ記録が生命線。口頭注意 → 書面による注意 → 譴責などの軽い懲戒 → より重い処分、という順序を経ているかが決定的に効きます
- 放置した期間は会社に不利に働く。長年黙認していた行為を突然重く処分すると、「会社が容認していた」と評価され、処分の相当性が否定されます
当日欠勤そのものは、年次有給休暇の事後申請を認める運用をしている会社では無断欠勤に当たらないこともあります。まず自社の運用を確認してください。「当日の朝に連絡すれば有給扱い」という慣行があるなら、それを無断欠勤として処分するのは困難です。
指導の記録がない状態から、いきなり解雇には進めません。繰り返し型で解雇まで到達するには、「注意したが改善しなかった」という経過を客観的な記録で示す必要があります。面談記録、注意書、始末書、勤怠データを揃えることが、解雇の可否を検討する前提になります。逆にいえば、記録さえ積み上がっていれば、連続2週間に満たなくても解雇が有効と判断される余地が出てきます。
無断欠勤という「明らかに社員側に非がある」場面でも、解雇が無効と判断されることはあります。そのときの負担を具体的に見ておいてください。
解雇無効の場合に生じること
- 労働契約が続いていたことになる。解雇の日に遡って地位が回復する
- バックペイの支払い。解雇日から判決までの賃金を支払う。1年争えば1年分です
- 復職への対応。実際に戻ってくる場合の受入れか、あらためての退職合意の交渉が必要になる
- 手続に強い違法性があれば慰謝料が認められることもある
バックペイについては、労働者が他で就労して収入を得ていた場合、その中間収入のうち平均賃金の6割を超える部分を控除できます。裏を返せば、平均賃金の6割は控除できず、必ず支払うことになります。
皮肉なことに、無断欠勤の事案ほど「会社は怒っている」ぶん手続が雑になりがちです。督促もせず、理由も確かめず、いきなり懲戒解雇を通知する——という対応が、最も高くつきます。感情的に納得がいかない事案こそ、手順を踏んだ記録が会社を守ります。
無断欠勤は何日続いたら解雇できますか?
法律に日数の基準はありません。よく言われる「2週間」は、解雇予告手当を支払わずに即日解雇するための解雇予告除外認定について、行政解釈が「2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」を例として挙げていることに由来します。これは予告手当の要否の話であって、解雇そのものが有効になる基準ではありません。解雇の有効性は労働契約法16条により、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性で判断されます。日数のみを根拠にした解雇は無効とされるリスクが高いといえます。
就業規則に「無断欠勤14日で懲戒解雇」と書いてあれば解雇できますか?
規定があることは前提条件にすぎず、それだけで解雇が有効になるわけではありません。裁判所は、その規定を当該事案に適用することが相当かどうかを別途判断します。欠勤の理由、会社が出勤を督促したか、弁明の機会を与えたか、より軽い処分を検討したか、過去の同種事案との均衡が取れているかといった事情が見られます。とくに、欠勤の背景に傷病やハラスメントがあった場合には、規定どおりの適用が相当でないと判断されやすくなります。
無断欠勤の理由がうつ病だった場合はどうなりますか?
解雇は極めて認められにくくなります。精神疾患により連絡を取ること自体が困難な状態であった場合、それは「正当な理由のない無断欠勤」とは評価されません。会社が本人の状況を確認しないまま解雇すれば、療養が必要な状態を看過したものとして無効と判断される可能性が高くなります。長時間労働やハラスメントが背景にある場合には、会社の安全配慮義務違反も同時に問題になります。解雇を検討する前に、受診勧奨と休職制度の適用を検討してください。
普通解雇と懲戒解雇のどちらを選ぶべきですか?
実務では普通解雇が選ばれることが多くなります。懲戒解雇は企業秩序違反に対する制裁であるため、就業規則に懲戒の種類と事由の定めがあり周知されていること、弁明の機会を与えたこと、より軽い処分を検討したこと、過去の事案と均衡が取れていることといった要件を満たす必要があり、無効とされるリスクが高いためです。なお懲戒解雇が有効であっても、退職金の全額不支給が当然に認められるわけではなく、これまでの勤続の功を抹消するほどの著しい背信性が求められます。
出勤督促状はどのように送ればよいですか?
配達証明付きの内容証明郵便で送るのが確実です。記載すべきは、欠勤している期間の特定、会社が連絡を試みた経緯、出勤または連絡を求める旨とその期限、欠勤の理由の申出(傷病であれば診断書の提出)を求める旨、そして期限までに応じない場合に会社が取り得る措置です。この段階で「解雇する」と断定して書くのは避けてください。理由の確認ができていない状態で結論を通告すると、後から事情が判明したときに撤回できず不利になります。送付先の住所が古くなっていないかも必ず確認してください。
当日欠勤を繰り返す社員も解雇できますか?
連続欠勤とは判断枠組みが異なります。「2週間」という目安は連続欠勤を前提にしたものなので、断続型は累積の回数・頻度・業務への支障で評価されます。重要なのは段階を踏んだ記録で、口頭注意、書面による注意、譴責などの軽い懲戒を経て、それでも改善しなかったという経過を客観的に示す必要があります。逆に長年黙認していた場合は「会社が容認していた」と評価され、突然重い処分をしても相当性が否定されます。なお、当日の朝に連絡すれば有給扱いとする運用がある会社では、そもそも無断欠勤に当たらない可能性があります。
就業規則の「退職扱い」条項を使えば解雇より安全ですか?
解雇ではないため解雇権濫用法理の適用を受けず、解雇予告手当も不要になるという点で有利です。ただし万能ではありません。規定が周知されていること、定められた日数を実際に満たしていること、会社が連絡と督促を尽くしたこと、欠勤に正当な理由がないことが前提になります。裁判例では、実質的に解雇と同じ効果を持つ規定について解雇に準じた慎重な判断がなされることがあります。日数の経過だけで自動的に適用できると考えず、督促と理由確認の記録を残してください。
解雇が無効になると、どのくらいの負担が生じますか?
労働契約が解雇の日に遡って続いていたことになるため、解雇日から判決までの賃金(バックペイ)を支払うことになります。1年争えば1年分です。労働者が他で就労して収入を得ていた場合、その中間収入のうち平均賃金の6割を超える部分は控除できますが、平均賃金の6割は控除できず必ず支払うことになります。加えて、復職への対応や、あらためての退職合意の交渉が必要になり、手続に強い違法性があれば慰謝料が認められることもあります。
無断欠勤への対応は、解雇を決める前にご相談ください
無断欠勤の事案は「明らかに社員側が悪い」と見えるぶん、手続が省略されがちで、結果として解雇が無効とされる例が少なくありません。督促の方法、退職扱い条項が使えるか、普通解雇と懲戒解雇のどちらを選ぶか、通知書に何を書くか——初動の設計が結論を左右します。難波みなみ法律事務所は、大阪の中小企業の顧問弁護士として、問題社員対応を企業側の立場でサポートします。
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主な参考資料
- 労働契約法16条(解雇権濫用法理)、5条(安全配慮義務)
- 労働基準法20条1項但書・3項(解雇予告除外認定)、89条(就業規則の記載事項)
- 解雇予告除外認定に関する行政解釈(2週間以上の無断欠勤で出勤の督促に応じない場合等)
※本記事は2026年8月時点の法令・裁判例にもとづく一般的な解説です。個別の事案で解雇が有効となるかは、欠勤の経緯や会社の対応により異なります。具体的な対応は弁護士にご相談ください。

