「譴責(けん責)」は、従業員に始末書を提出させて将来を戒める、懲戒処分の中でも軽い部類の処分です。読み方は「けんせき」。よく似た「戒告」との違いや、始末書の扱い・拒否されたときの対応は、実務で迷いやすいポイントです。
譴責の意味と読み方、戒告・訓告との違い、始末書と顛末書の違い、始末書を拒否されたときの対応、譴責が有効となる条件、裁判例、注意点まで、企業側の弁護士がわかりやすく解説します。
譴責(けん責)とは?戒告と何が違いますか?
譴責とは、従業員に始末書を提出させ将来を戒める懲戒処分です。よく似た「戒告」は始末書の提出を伴わず注意にとどまる処分で、「始末書の提出を伴うか」が譴責と戒告の主な違いです。いずれも懲戒処分の中では軽い方ですが、就業規則の定めや適正な手続がなければ無効になる点は重い処分と同じです。
始末書の提出は強制できますか?
強制できません。始末書は反省の意思を表明させるもので、思想・良心の自由(憲法19条)に関わります。不提出を理由に重ねて懲戒することも原則できません。事実の経緯を報告させる「顛末書」なら業務命令として提出を命じられます。
軽い譴責なら手続は省けますか?
いいえ。就業規則の根拠・事由該当・相当性・弁明の機会を欠く譴責は、軽い処分でも懲戒権の濫用として無効になり得ます(労働契約法15条)。譴責でも一事不再理(二重処分の禁止)が適用されます。
- 譴責(けんせき)とは、始末書を提出させて将来を戒める、軽い部類の懲戒処分。
- 戒告との違いは「始末書の有無」。訓告・厳重注意は原則、懲戒処分ではない(事実上の注意・指導)。
- 懲戒の重さは軽い順に 戒告・譴責 → 減給 → 出勤停止 → 降格 → 諭旨解雇 → 懲戒解雇。
- 始末書の提出は強制できない(拒否を理由に重ねて懲戒はできない)。事実報告の「顛末書」は業務命令で提出させられる。
- 軽い処分でも、就業規則の定め・事由該当・相当性・弁明を欠く譴責は無効になり得る(労働契約法15条)。
譴責(けん責)とは?|読み方と意味
譴責(けんせき)とは、問題行為をした従業員に始末書を提出させ、将来を戒める懲戒処分です。懲戒処分の中では軽い部類に位置づけられ、減給のような直接の経済的不利益は生じません。もっとも、就業規則に根拠を置く正式な懲戒処分である点で、事実上の注意にとどまる「訓告」「厳重注意」とは性質が異なります。
譴責・戒告・訓告の違い|懲戒処分の中での位置づけ
譴責・戒告・訓告は、いずれも「将来を戒める」軽い措置ですが、始末書の有無と懲戒処分かどうかで区別されます。
| 種類 | 内容 | 始末書 | 懲戒処分か |
|---|---|---|---|
| 譴責(けん責) | 始末書を提出させ、将来を戒める | あり | 懲戒処分 |
| 戒告 | 口頭・文書で注意し、将来を戒める | なし | 懲戒処分 |
| 訓告・厳重注意 | 注意・指導を行う(事実上の措置) | なし | 原則、懲戒処分ではない |
懲戒処分の重さの順序
懲戒処分は、問題行動の軽重に応じて段階的に定められます。一般に軽い順に、次のように序列が設けられています。
| 軽い ← | 処分 |
|---|---|
| 最も軽い | 戒告・譴責(将来を戒める/譴責は始末書あり) |
| ↓ | 減給(労働基準法91条の上限内で賃金を減額) |
| ↓ | 出勤停止(一定期間の出勤禁止・その間は賃金不支給) |
| ↓ | 降格(役職・職能資格を引き下げる) |
| → 最も重い | 諭旨解雇・懲戒解雇(労働契約を終了させる) |
始末書とは?拒否できる?|顛末書との違いと対応
譴責処分では「始末書」の提出を命じます。この始末書をめぐっては、拒否された場合の対応が実務で問題になります。
始末書と顛末書の違い
- 反省・謝罪の意思を表明する文書
- 本人の内心(良心)に関わる
- 譴責処分に伴って提出させる
- 事実の経緯を報告する文書
- 内心とは関係のない事実の記録
- 調査・記録のために提出させる
始末書の提出を拒否されたら?
始末書は反省の意思を表明させるもので、本人の思想・良心の自由(憲法19条)に関わるため、提出を強制することはできません。したがって、始末書を出さないこと自体を理由に、さらに重ねて懲戒処分をすることは原則としてできないと考えられています。
始末書の書き方(記載例)
※ 記載例です。始末書は本人が自発的に提出するものであり、会社が文面を強制することはできません。日付・氏名・対象行為・反省と再発防止の誓約を柱に、本人の言葉で書いてもらいます。
譴責処分が有効となる条件
軽い譴責でも、懲戒処分の一般的なルールに反すれば無効になります。次の要件を欠くと、懲戒権の濫用として無効と判断され得ます(労働契約法15条)。
- 就業規則に懲戒の種類・事由が定められ、周知されている
- 問題行為が就業規則の懲戒事由に該当する
- 処分の重さが行為に見合う(相当性)
- 弁明の機会を与え、手続が適正である
譴責処分に関する裁判例
軽い譴責でも、事由や相当性を欠けば無効とされます。判断の目安として、裁判例を見てみましょう。
| 裁判例 | 結論 | ポイント |
|---|---|---|
| 大阪地判 令2.1.29 | 譴責有効 | 大学教員が業務命令(授業以外の業務)を拒否。命令は違法とはいえず、譴責は有効とされた。 |
| 東京地判 平25.1.22 | 譴責無効 | 他の非正規社員へ雇止め対応を助言するメールを送った行為。理解できる行動で、社会通念上相当とはいえない。 |
| 名古屋高判 令2.1.23 | 譴責無効 | 教授がハラスメント調査で得た情報を他の教員に知らせた行為。重大な秘密漏洩とはいえず、十分な審議も欠いた。 |
軽い処分でも、「その行為に対して譴責が相当か」「事由を客観的に認定できるか」「手続を尽くしたか」が問われる点は、重い処分と変わりません。
譴責処分をするときの注意点
- 「軽い処分だから」と手続を省かない:就業規則の根拠・弁明の機会を欠く譴責も、無効と判断され得ます。
- 事実と理由を書面で記録する:譴責通知書を交付し、対象行為・根拠条項を明確に残します。
- 段階的な指導の一環として位置づける:譴責を重ねた経緯は、後の重い処分の相当性を支える土台になります。
- 同じ行為を二度罰しない(一事不再理):一つの行為をまず譴責とした後、同じ行為を理由に重ねて別の懲戒処分をすることはできません。
- 始末書の強制はしない:反省を促すのは大切ですが、提出の強制は避け、必要なら顛末書を業務命令で求めます。
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本記事は一般的な情報提供であり、個別の事案の法的判断ではありません。懲戒処分の要否・種類・手続は事案ごとに異なります。最終監修:南 宜孝 弁護士(大阪弁護士会)。

