「やめてほしい社員」にどう対応するべき?経営者が知るべき法的リスクと円満退職へのステップ

公開日: 2025.12.05

社員のパフォーマンスが低い、協調性がないなど、やめてほしいと考える社員への対応は、経営者にとって頭の痛い問題です。感情的な対立を避け、会社全体の利益を守りながら、いかに社員本人の将来にも配慮した解決策を見つけるか。

本記事では、経営者が知っておくべき法的リスクに焦点を当て、具体的なステップを解説します。解雇や退職勧奨を行う前に確認すべき事項、不当解雇とみなされないための注意点、そして円満な退職へと導くための具体的な方法をわかりやすく解説していきます。

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「やめてほしい」と感じる社員の共通点

多くの経営者や管理職の方々が、「やめてほしい」と感じる社員の存在に頭を悩ませているでしょう。以下では、会社側がやめてほしいと感じる問題社員の共通点を紹介します。 

協調性がなく調和を乱す

チームワークが重視されるビジネス環境において、協調性の欠如は深刻な問題です。他者の意見を一方的に否定したり、チームで決定した方針に協調せず独自の行動を取ったりする社員は、周囲の士気を低下させる可能性があります。また、陰口や不平不満を周囲にまき散らす行動は、社内で不必要な対立を生み出し、職場の雰囲気を悪化させる要因となるでしょう。

指示待ちで主体性がない

指示された業務は何とかこなすものの、それ以上の付加価値を生み出そうとしない社員がいます。例えば、自身の担当業務が完了すると、次の指示があるまで積極的に行動を起こさず、時間を持て余しているといった状況です。また、業務上の課題に直面しても、自ら解決策を模索せず、常に上司や同僚に判断を委ねる受け身の姿勢も特徴的です。

このような社員は、自己成長への意欲が欠けており、同じミスを繰り返したり、研修やフィードバックで得た学びを行動に移さなかったりする傾向が見られます。

会社のルールや指示を守らない

勤怠ルール、経費精算など会社にはさまざまなルールが存在します。また、上司からの業務命令を守ることは円滑な業務遂行に不可欠です。しかし、これらの会社のルールや指示を繰り返し守らない、無視をする従業員は、組織に大きな問題を引き起こす可能性があります。

例えば、無断欠勤や遅刻の常態化、社内規定に反した経費精算、あるいは上司の指示を無視して自己流のやり方に固執する行動が挙げられます。

このような行動は、業務の遅延やミスの原因となるだけでなく、他の従業員に余計な負担を課す結果となります。指示に従わないことが常態化すると、組織全体の規律が乱れ、真面目にルールを守っている従業員の不満や士気の低下につながるでしょう。

周囲に不平不満をまき散らす

給与や人事評価への不満を同僚に言いふらしたり、会社の決定事項に常に否定的な態度を取ったり、あるいはSNSで会社を批判したりするなどの言動は、周囲の社員に大きな悪影響を及ぼします。また、仕事に対する不平不満や会社の悪口を周囲に漏らす行動も問題です。

こうしたネガティブな言動は、職場全体のモチベーションや士気を著しく低下させる要因となります。その結果、職場全体の一体感が損なわれ、最終的に組織全体の生産性低下や離職率の上昇といったリスクを伴います。

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問題社員の放置は危険!会社に及ぼす3つの深刻なリスク

問題社員への対応はデリケートなため、後回しにされがちです。しかし、「見て見ぬふり」は、会社にとって最も危険な選択肢となりかねません。問題社員を放置することで会社が直面する具体的なリスクを解説します。

職場全体の生産性低下

問題社員の存在は、職場全体の生産性と雰囲気に深刻な悪影響を及ぼします。

具体的に、提出物の期限が守られない、細かいミスが頻発するといった問題行動は、チーム全体の業務効率が低下し、本来注力すべき業務が滞りがちになります。また、人間関係における悪影響を生じさせます。不平不満をまき散らしたり、非協力的な態度を取る社員がいると、職場内の人間関係が悪化し、チームワークが損なわれることで全体的な生産性が低下します。

他の優秀な社員のモチベーション低下と離職

問題社員の存在は、真面目に働く優秀な社員のモチベーションに深刻な悪影響を及ぼします。問題社員の業務の尻拭いやサポートに費やされることで、周囲の負担は増大し、残業やストレスの原因となるでしょう。問題行動が放置される状況では、優秀な社員は不公平感を抱き、仕事への意欲を失ってしまいます。

その結果、高いスキルや専門性を持つ貴重な人材の流出を招くリスクが高まります。

顧客や取引先からの信頼失墜

問題社員の不適切な言動や能力の低さは、取引先に様々な悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、問題社員の不適切な対応の例は、クレーム対応の悪さ、納期遅延、メールの誤送信、顧客への失礼な態度などが挙げられます。

このような問題行動は、結果として会社全体の管理体制の問題として認識され、企業の社会的な信用を著しく損なうリスクを高めます。

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やめてほしい社員の解雇は慎重になるべき理由

問題社員への対応を検討する際、経営者が認識すべき点は、「いきなりの解雇は法的に極めてリスクが高い」という点です。以下では、いきなり解雇処分を行うことを避けるべき理由を解説します。

解雇のハードルは高い理由

従業員の解雇は、とてもハードルが高く、解雇に必要な要件を満たすことはそう簡単ではありません。解雇が有効となるためには、以下の二つの要件を満たす必要があります。

  • 客観的に合理的な理由
  • 社会通念上の相当性

これらの要件を欠く解雇は権利の濫用とみなされ、無効と判断されます。

客観的に合理的な理由とは、解雇とするべき十分な理由が客観的な資料により説明できる状況を指します。企業側が主観的に解雇理由があると判断しても、それは不十分となります。

また、解雇となる十分な理由が客観的に認められるとしても、解雇処分が社会通年から見て重すぎる場合には、相当性を欠くものとして、解雇は無効となります。

そのため、解雇処分が有効となるためには、この2つの条件を満たさなければなりません。

不当解雇となった場合のリスク

不当解雇と判断された場合、企業は様々な影響を被ることになります。

まず、解雇処分をした時から解決時までの給与、いわゆるバックペイを支払う必要が生じます。仮に解決までに1年の期間を要したのであれば、年収に相当する金銭的な負担を強いられます。さらに、問題社員の復職を避け、合意退職するために、バックペイとは別に解決金の支払を求められることもあります。解決金はケースバイケースですが、半年から1年分の給与額に相当することが一般的です。

また、経済的な負担に留まらず、問題社員が復職するとなれば、在籍社員のモチベーションが低下しますし、対外的な評判も毀損されるおそれもあります。

さらに、問題社員が解雇処分の効力を争ってきた場合には、解雇無効確認の紛争に巻き込まれることになります。その結果、担当者はこの紛争の準備や対応に時間と労力を割かれることになり、また、弁護士に委任する場合には、その弁護士費用の経済的な負担も生じます。

このように、不当な解雇処分を強行する場合には、企業側には様々な負担を招くことになります。

客観的な証拠の収集と段階的な対応

問題社員への対応において不可欠なのは、「客観的な証拠」と「段階的な対応」です。感情に流されず客観的な事実に基づいて対応することで、不当解雇のリスクを回避し、法的紛争になった際の会社の正当性を裏付けられます。

・勤怠記録
・タイムカード
・業務日報
・業務上のミスや勤務態度に関する記録やメモ
・メールでの指導記録
・面談記録
・警告書の交付と受領確認

また、いきなりの解雇は避け、まずは口頭での注意指導から始めましょう。改善が見られない場合は、書面による厳重注意を行い、それでも改善されなければ、戒告、減給、出勤停止等の懲戒処分を段階的に行います。それでも状況が変わらない場合には、退職勧奨や解雇といった最終手段へと進むプロセスが求められます。

やめて欲しい社員に対する5ステップとは

問題社員を放置することは、他の社員に悪影響を及ぼし、社内秩序を乱す可能性もあるため、早急かつ毅然とした対応が求められます。ただし、感情任せの対応では、法的なリスクを顕在化させてしまいます。そこで、法的なトラブルを回避するための5つのステップを以下で紹介します。

ステップ1:問題行動の事実確認と客観的な記録

問題のある従業員への対応は、客観的な事実を正確に把握し、記録することから始めます。

感情的な判断や憶測に基づく対応は、後のトラブルの原因となる可能性があります。法的な争いになった際に会社の正当性を主張するためにも、客観的な事実に基づいた記録は不可欠となります。

具体的に記録すべき項目は「5W1H」を基本とします。その上で、問題行為の記録は、個人の憶測や感情を排除して、客観的な事実のみを淡々と記載することが重要です。問題の発生の都度、速やかに特定の書式に統一して記録し、時系列で整理・保管するようにします。

ステップ2:改善を促すための面談と指導の実施

問題社員への指導面談は、叱責を目的とするものではなく、社員の改善と成長をサポートする機会として実施します。

面談では、まず「いつ、どこで、何が起こったか」といった具体的な事実を客観的に伝えます。その後、本人の言い分や考えを丁寧に聞き取り、一方的に決めつけることなく双方向の対話を促すことが不可欠です。

次に、改善してほしい具体的な行動や状況を明確に指摘し、「いつまでに」「何を」「どのように」改善するのか、具体的な目標と期限を設定します。この際、企業側が一方的に目標を提示するのではなく、部下が自ら解決策を考えられるように促すことが効果的です。その上で、定期的にフィードバックの面談を実施し、目標の達成度を共有するようにしましょう。

面談内容は、必ず書面に残し、双方で内容を確認した上で、可能であれば社員の署名や捺印を求めるようにしましょう。

ステップ3:配置転換や職務変更で環境を変える

面談や指導を重ねても問題行動の改善が見られない場合、その原因は社員本人の能力や意欲だけでなく、現在の職務内容や職場環境とのミスマッチにある可能性もあります。このような状況では、配置転換や職務変更が有効な解決策となることがあります。

配置転換は、単に部署を異動させるだけでなく、社員が能力を発揮できるような環境を提供し、再起を促す目的で行われます。 

ただし、配置転換を実施する場合でも、就業規則等に異動命令に関する規定があることを前提とし、社員の能力や適性を再評価することが重要です。また、退職に追い込むことを目的としたあからさまな降格やいわゆる追い出し部屋への異動は、パワーハラスメントや不当な配置転換とされる法的リスクを伴います。

配置転換は、あくまで再起を促す前向きな措置であることを、社員本人に丁寧に説明し、理解を得る努力が求められます。

ステップ4:改善が見られない場合の「退職勧奨」

これまでの面談、指導、配置転換といった改善に向けた努力を尽くしても、問題行動の改善が見られない場合、次の選択肢として「退職勧奨」を検討します。

退職勧奨とは、会社が従業員に対して「合意による退職」を促す行為であり、解雇のような会社からの一方的な意思表示とは本質的に異なります。あくまで従業員の自由な意思を尊重する「お願い」の性質を持つものであり、強制的に退職させるものではないことを明確に理解しておく必要があります。

この段階で退職勧奨を行う主な目的は、最終手段である「解雇」を回避し、法的紛争リスクを低減させつつ、会社と従業員双方にとって円満な解決を目指すことです。退職勧奨による合意退職は、事後的なトラブルを回避できるという大きなメリットをもたらします。しかし、その進め方次第では違法と判断され、損害賠償請求や退職の無効、賃金支払いの義務を負うリスクも生じかねません。

ステップ5:最終手段としての解雇

ステップ1から4までのあらゆる手段を尽くしてもなお、問題行動の改善が見られない場合、最終的な選択肢として解雇を検討します。解雇の中でも普通解雇は、労働者の能力不足、勤務態度不良、度重なる業務命令違反といった事由により、労働契約の継続が客観的に困難と判断される場合に行われる解雇方法です。しかし、労働法では解雇が厳しく制限されており、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」がなければ不当解雇とされるリスクがあります。

このため、これまでの指導記録、面談記録、改善指示に関する書面など、問題行動の事実と改善努力の経緯を示す客観的な証拠が非常に重要です。ただ、解雇が無効になると、会社には様々な不利益が生じるため、この段階に至った際は、独断で進めることは避け、必ず弁護士などの労働問題に詳しい専門家へ相談し、慎重に判断を進めることを強くお勧めします。

円満な合意退職を目指す「退職勧奨」の進め方

退職勧奨が合意に至れば、不当解雇のリスクを回避し、事後的な法的紛争を防ぐという大きなメリットがあります。しかし、その進め方次第では、違法と判断され、損害賠償請求や退職の無効、賃金支払いの義務を負うリスクも生じかねません。

そこで以下では、トラブルを回避し、円満な合意退職を実現するための具体的な進め方を解説します。

伝える内容と落としどころを事前に整理する

退職勧奨を円滑に進めるためには、事前の準備が不可欠です。感情的な対立を避け、冷静かつ合理的に進めることが、その後の法的トラブルを回避する上で重要となります。

まず、退職勧奨に至った客観的な理由を、具体的な事実に即して整理しましょう。その上で、面談日当日のシナリオを作ります。シナリオでは、対象社員から想定される反論や質問を予測し、それに対する回答も準備します。その上で、何度かシナリオに沿った練習を行い、改善点があればシナリオの改善を行います。

次に、面談の最終目標となる合意退職の条件を具体的に設定しましょう。希望する退職日や退職日までの労働義務、提示する特別退職金の額、有給休暇の消化方法など、会社として譲歩できる範囲を含め、複数の選択肢や代替案を用意しておくことが望ましいです。これにより交渉の幅が広がり、円満な合意形成につながりやすくなります。

面談の実施と注意点

退職勧奨の面談では、他の社員に知られず、プライバシーが確保された会議室や応接室など威圧感のない場所を選びましょう。

会社側の面談参加者は1名ではなく、人事担当者や直属の上司など2名で臨むのが望ましいです。会社側の人数が多すぎると、心理的圧迫を与え、退職強要と受け取られるリスクもあるため、大人数での対応は控えるべきです。

また、面談では、事前に整理した客観的な事実に基づき、なぜ退職勧奨に至ったのかを落ち着いて明確に伝えるべきです。別の環境で活躍してもらいたいといったように、あくまでも社員の能力を立てる姿勢を崩さないようにしましょう。また、相手の意見や感情を丁寧に傾聴する姿勢を示すべきです。その場で即決を迫らず、「今日は突然のことで難しいと思いますので、数週間程度の期間を空けて、次回面談までにゆっくり考えてみてほしい」と伝え、考える時間を与えることが必要です。

一方で、「退職届を出さなければ解雇する」といった強要と受け取られるような発言や従業員の名誉を不当に害するような発言は絶対に避けなければなりません。

退職条件の話し合い:退職日や金銭的条件を協議する

退職勧奨の面談では、退職日の設定や金銭的条件について具体的に協議を進めます。

まず、最終出社日や業務引き継ぎに必要な期間を考慮し、双方にとって現実的な退職日を設定することが重要です。また、最終出社日までの出社を免除するのかも併せて協議しましょう。

金銭的条件としては、通常の退職金に上乗せして「特別退職金」や「解決金」を提示することが一般的です。これらの解決金の相場は、月給の3ヶ月分から6ヶ月分程度が目安とされています。未消化の有給休暇の買い取りも交渉の対象となるでしょう。

さらに、離職票に記載する退職理由を「会社都合」とするか「自己都合」とするかも重要な協議ポイントです。ただ、本来退職勧奨による離職は会社都合の離職であることは留意しましょう。

これらの話し合いで合意に至った内容は、必ず「退職合意書」として書面に残すことが不可欠です。退職合意書には、以下の項目を明確に記載しましょう。書面に残すことで、口約束による後のトラブルを防ぎ、双方の権利と義務を明確にできます。

・合意した退職日
・金銭的条件(特別退職金、解決金、有給休暇買い取りなど)
・退職日までの出勤の要否
・守秘義務
・貸与物の返却
・その他、双方の権利と義務に関する取り決め

問題社員対応は弁護士への相談が解決の近道

問題社員への対応は、法的な知識や交渉のノウハウが求められる非常にデリケートな問題です。特に、解雇や退職勧奨といった最終手段を検討する際には、わずかな手続きの不備や伝え方の違いが、不当解雇として法的紛争に発展する大きなリスクを伴う可能性があります。

経営者や人事担当者がこれらの問題を一人で抱え込んでしまうと、感情的な対立に発展しやすくなるだけでなく、関連法規を見落としてしまうおそれがあります。その結果、会社が多大な金銭的、社会的な損失を被る事態に陥りかねません。

そこで、労働問題に精通した弁護士の知見を活用することが重要です。問題が深刻化し、取り返しのつかない事態になる前に、早期に弁護士へ相談し、法的リスクを回避しながら円満な解決を目指しましょう。

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