出勤停止処分とは?出勤停止をするための3つの条件と停止期間中の給与を解説

出勤停止処分とは、懲戒処分の一つで、一定期間、社員の出勤を禁止する処分です。出勤停止処分は、出勤停止期間中の賃金を支払わない点で労働者に重大な不利益を及ぼします。このようなことから、出勤停止は懲戒処分の中でも懲戒解雇の次に重い処分となるため、出勤停止処分を行うにあたっては、慎重な判断が求められます。

特に、必要以上に出勤停止期間を設けると、労働者に過度な負担を与えるため、処分が無効となるおそれがあります。

出勤停止が無効となれば、停止期間に伴う賃金を払うだけでなく、さまざまな負担を引き起こします。

問題行為を放置することなく適切に問題社員を管理することは大事ですが、無茶な処分を強行すると、かえって大きな不利益を招きます。

本記事では出勤停止の意味と有効となる条件を解説します。

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出勤停止処分とは

出勤停止処分とは、雇用契約を維持しながら、労働者の出勤を一定期間禁止する懲戒処分をいいます。俗に自宅謹慎と言われることもあります。

出勤停止は、労働者本人の責任で課される懲戒処分ですので、出勤停止期間中は給与が支給されないのが通常です。

自宅待機との違い

自宅待機は、出勤停止処分とは異なり、通常、懲戒処分ではありません。

自宅待機は、懲戒処分が決定されるまでの調査、証拠隠滅の防止、職場への悪影響の防止を目的として、一定期間出勤を制限する措置をいいます。

懲戒処分ではない以上、自宅待機中は賃金が支払われます。

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出勤停止処分をするための3つの条件

出勤停止処分が認められる条件は、懲戒事由に該当する問題行為があること、出勤停止を選択したことが重すぎないか、停止期間が長すぎないかの3点です。

懲戒事由にあたる問題行為があること

就業規則等に規定された懲戒事由が存在し、これに当てはまる問題行為が存在することが必要です。

懲戒事由があること

懲戒処分を行うには、あらかじめ就業規則や雇用契約書等に懲戒事由と懲戒処分の種類が規定されていなければなりません。

そのため、規定されていない理由で懲戒処分をすることは認められていませんし、定められていない懲戒処分をすることもできません。

懲戒事由については、具体的な懲戒事由を列記した上で、包括的な懲戒事由を定めることも多いため、懲戒事由が定められていないケースはありません。

懲戒事由にあたる問題行為があること

労働者が懲戒事由に当てはまる非違行為(問題行為)を行ったことが必要です。

仮に、就業規則等で懲戒事由と懲戒処分が定められていたとして、これに該当する行為が存在していることが必要です。

非違行為には次のような行為が挙げられます。

重大なパワハラやセクハラ
・度重なる遅刻や無断欠勤
・重大な業務上のミス
・重大な私生活上の問題行為

そのほかにも、比較的軽微な問題行為であったとしても、何度も厳重注意や懲戒処分を受けながらも改善されない場合にも、出勤停止の対象となることもあります。

使用者は、労働者の問題行為が存在していることを客観的な資料により証明できるようにしておくことが大切です。

問題行為の証拠資料

労働者の問題行為は、客観的にみて存在していることを説明できなければなりません。

使用者側が主観的に判断するだけでは不十分です。そこで、出勤停止の原因となった問題行為が存在していることを裏付けるために、客観的な証拠を確保する必要があります。

業務日報

帳簿

供述調書

メール等の履歴

録音や録画

出勤停止が重すぎない相当な処分であること

社員の非違行為に対して出勤停止の処分が過剰である場合には、不相当な処分として無効になります。

出勤停止は、懲戒処分の中でも懲戒解雇や諭旨解雇等の解雇処分の次に重大な処分とされています。なぜなら、労働者からすれば、就労の場を一時的に剥奪され、賃金の支払いも受けられないため、労働者に与える影響は非常に大きいからです。

そのため、問題行為に対して、非違行為に対して、注意や警告、軽微な懲戒処分をすることもなく、いきなり出勤停止処分とすることは重すぎるといえます。特に、軽微な問題行為については、十分に改善の機会を付与していることが必要です。

停止期間が長すぎないこと

出勤停止期間が長すぎる場合、出勤停止が無効になる可能性があります。

出勤停止期間が長すぎると、その間、労働者は賃金を受け取ることができず、労働者には大きな不利益が生じます。

法律上、出勤停止期間の定めはありません。ただ、戦前の工場法の名残から、出勤停止期間が7日とされていることが多いです。労働者の不利益を考えると、出勤停止期間は1か月を限度とするのが無難でしょう。

セクハラを理由とする出勤停止

男性管理職2名が、複数の女性従業員に対して、セクハラをしたことを理由に10日と30日の出勤停止とされた事案です。

セクハラ発言が女性従業員に対して強い不快感・嫌悪感・屈辱感を与えるもので極めて不適切な言動であることを理由に出勤停止処分を有効としました。

運営方針に従わないことを理由とする出勤停止

内科医長が運営方針に従わなかったり、検査室を私的利用したことを理由に3か月の停職処分とした事案です。

前回の懲戒処分(訓告)がなされてから4〜5年後になされたものであること、患者に対して直接損害を与えるものではないことなどに照らせば,3か月間にもわたる停職処分をもって対応したことは重すぎる処分として無効と判断されました。

出勤停止が無効となる場合の会社の不利益

出勤停止の懲戒処分が無効となる場合、会社にはさまざまな不利益・負担が生じます。

賃金を支払う経済的な負担

出勤停止が無効となれば、出勤停止期間の賃金を支払う必要があります。

出勤停止期間が長期にわたるような場合や、出勤停止とするだけの十分な理由が存在しやい場合には、出勤停止処分は無効となります。

出勤停止が無効となれば、使用者の責任で労働者は出勤できなかったことになるため、民法536条2項により、労働者は企業に対して出勤停止期間中の賃金を請求することができます。

労働紛争に対応するための負担

出勤停止処分に関する労働紛争に対して、様々な対応を強いられることで企業側に負担が生じます。

出勤停止処分に関する労働審判や労働訴訟の手続きが着手されると、否が応でも企業側はその対応のため経済的・事務的な負担を強いられます。

通史うん、労働紛争に至れば、弁護士に依頼する必要が生じ、弁護士費用などの経済的な負担が生じます。また、弁護士に一任しても丸投げすることはできません。企業側担当者も事情の聞き取りや労働審判への同行といった負担を求められます。

このように、賃金の支払いといった経済的な負担に限らず、それ以外のさまざまな負担を招くことになります。

社員のモチベーションが低下する

懲戒処分に関する労働紛争が起きると、内部の従業員のモチベーションが低下するおそれがあります。

企業の行った出勤停止処分が、紛争化し裁判所などで争われると、従業員の不安を招き企業秩序を不安定にさせてしまいます。

企業秩序が乱れることで、社員の愛社心が低下しモチベーションの低下を招きます。

モチベーションの低下を放置することで、社員の離職や企業の評判の悪化を引き起こします。

給与は支払う必要はない

出勤停止期間中、企業は労働者に対して給与を支払う必要はありません。

出勤停止により、労働者は出勤を禁じられ労務を提供することができません。いわゆるノーワークノーペイの原則のとおり、仕事をしない以上、その対価である賃金を支払う必要がありません。

ただし、労働者に対する不利益の大きさを考えると、就業規則では、『出勤停止期間の賃金は支払わない。』と定めておくべきでしょう。

出勤停止処分の問題は弁護士に相談を

問題社員を放置することは、企業内の秩序を乱すことになるため、適切に対処する必要があります。しかし、本来は減給や降格といった軽めの処分で十分であるのに、それよりも重い処分である出勤停止をすると無効になる可能性があります。

出勤停止処分を行うにあたっては、それに値する十分な理由があるのか、出勤停止期間は長すぎないかを弁護士に相談するなどして慎重に進めていきましょう。