協調性がない人にどう対処するべきか?原因や放置した時のリスクを弁護士が解説

公開日: 2025.12.27
協調性のない社員の対応 どうする?

職場内に協調性がない人がいるにもかかわらず、このような状態を漫然と放置すると、職場内外で悪影響を生じさせます。しかしながら、協調性が欠けるという理由で安易に社員を解雇すると、不当解雇となり、多くの経済的な負担を強いられることにもなりかねません。そのため、協調性がない社員がいたとしても、計画的に対応することが重要です。特に、協調性を欠く社員は、能力的に高いことも少なくなく、弁も立つことから、それを踏まえながら対応を精査することが求められます。

この記事では、弁護士の視点から、協調性の欠如がもたらすリスクや、具体的な対処法を解説します。

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協調性のない社員が職場に与える影響

「協調性がない」と感じる社員への対応は、多くの管理職が共通して直面する課題の一つです。個人の特性と捉えて安易に放置すると、その影響は一人の問題に留まらないでしょう。組織全体に深刻な悪影響を及ぼし、企業活動そのものを揺るがしかねません。

この項目では、協調性のない社員を放置することが職場にもたらす具体的なリスクについて解説します。

職場全体の生産性低下

協調性のない社員がいると、情報共有が滞ったり、自分の担当範囲外の業務に対して非協力的な態度を取ったりすることで、業務連携が著しく阻害されます。その結果、作業の遅延、重複、ミスの発生といった問題が多発し、チーム全体の生産性が低下するリスクが生じます。 

また、他の社員への配慮に欠ける言動や非協力的な態度は、職場内に不信感や緊張感を生じさせ、職場全体の雰囲気が悪化します。

他の従業員のモチベーション低下と離職

協調性のない社員が職場にいると、業務負荷の偏りが生じてしまい、業務量の不公平感が生まれやすくなります。また、協調性のない社員とのコミュニケーションは、他の従業員にとって大きな心理的ストレスとなることもあるでしょう。その結果として仕事への意欲が著しく低下するおそれがあります。こうした劣悪な職場環境に耐えかねた優秀な人材は、より良い環境を求めて転職を決意する可能性があります。

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協調性のない行動の背景にある3つの原因

一見すると協調性がないと判断されがちな行動の裏には、本人の性格や意欲だけでなく、様々な原因が潜んでいるケースが少なくありません。

協調性の欠如する社員に対する効果的な対処法を見つけるためには、まずその行動の真の理由を深く理解することが、何よりも重要な第一歩となります。

仕事の価値観の相違

協調性が低い社員の行動の背景には、仕事に対する価値観やスタンスの相違が見られます。

例えば、個人の成果を最大化することを最優先したいと考える社員は、チーム内の細かな情報共有や協力体制を非効率と捉え、軽視しがちかもしれません。

また、社員本人は、自身の行動が正しいものと信じて、情報共有を怠ったり、他の社員の意見に耳を傾けなかったり、社内ルールを守らなかったりすることがあります。

このような仕事に対する価値観の違いは、働き方やコミュニケーションに対する考え方のギャップによって顕在化することもあるでしょう。結果として、本人は組織に貢献しているつもりであるため、周囲から「協調性がない」と指摘されても納得できないがために、組織内の対立を生んでしまう問題につながることがあります。

過剰な自信・プライド

過去の成功体験や技能を理由に社員が過剰な自信を持つことで、自分自身の考え方を曲げようとはせず、その結果として、他の社員との対立を招いてしまうことがあります。

具体的には、会議で他者の発言を遮ったり、指示や業務命令を無視する、あるいは、業務内容や方法の変更・修正に強く反対したりする行動が挙げられるでしょう。

社員自身は最善を尽くしていると信じていますが、過剰な自信やプライドが邪魔をして、組織内の不和を引き起こしてしまいます。

円滑なコミュニケーションへの苦手意識

社員間のコミュニケーションに対して苦手意識を持っていることが協調性に欠ける言動の背景となっている場合があります。このようなコミュニケーションの苦手意識から他者との対話を避けてしまうことで、意見交換ができなかったり、スムーズな報連相ができないなどの問題を引き起こしてしまいます。

さらに、本人に悪意がなくても、表現が不器用なために冷たい、あるいは攻撃的な印象を与えてしまい、人間関係に不要な溝を作ってしまうケースも少なくありません。

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協調性のない社員に対して必要となる対応

これまでに協調性のない部下へのタイプ別対処法を解説しましたが、どのようなタイプの部下にも共通して有効な指導の基本的な流れがあります。以下の項目では、それぞれのステップについて詳しく見ていきます。

協調性欠如の調査を実施する

協調性の欠如する社員に対して、面談を実施したり、配置転換や懲戒処分を実施するにしても、何らの具体的な根拠もなく、協調性の欠如を指摘しても、対象社員から反発を受ける可能性があります。

そこで、対象社員が納得を得られるようにするためにも、問題が生じた段階で十分に調査を実施して、関係者からのヒアリングに加えて、録音やメッセージなどの客観的な証拠の保全を行いましょう。

面談を実施して注意・指導する

協調性に欠ける行動が見られる部下への指導は、まず本人との対話の場を設けることから始めます。大勢の前で指摘すると、本人のプライドを傷つけ、かえって反発を招く可能性があるため、安心して本音を話せる環境を整えることが必要です。

対話の際は、「協調性がない」といった抽象的・感情的な言葉ではなく、客観的な事実に基づきながら、どの言動が問題となっているのか、どのように改善するべきかを具体的に指摘することが必要となります。

一方的に非難するのではなく、「なぜその行動を取ったのか」「どのような考えがあったのか」と、本人の意図を尋ねる傾聴の姿勢が不可欠です。

社員本人とのヒアリングを通じて、協調性を欠く言動が確認できれば、その内容や程度に応じて、比較的軽微なものであれば、口頭による厳重注意を行います。他方で、内容が軽微とは言えない、あるいは、軽微ではないものの繰り返し行われている場合には、社員に対して注意書を交付したり、勤務態度の改善を約束する誓約書の提出を求めます。万が一、対象社員が、注意書の受領を拒否したり、誓約書の提出を拒否する場合には、これを業務報告書などの形式で記録に残しておくことが肝要です。

配置転換の検討と人事考課

協調性を欠く社員に対する対応として、配置転換の実施が挙げられます。

協調性の欠く言動は他の社員とのコミュニケーションに際して生じることが多く、他の社員の士気に大きな影響を及ぼします。そこで、他の社員との接触の少ない職種や業務への配置転換を行うことが考えられます。ただし、社員を辞めさせることを目的に、いわゆる追い出し部屋への配置転換を命じることは人事権の濫用になり得るため注意しなければなりません。

また、協調性を欠く言動によって、業務上の支障が生じているのであれば、人事考課においても、これを考慮した評価をすることも検討します。

段階的に懲戒処分を行う

一度指導しただけで部下の行動がすぐに変わるわけではありません。そのため、継続的なフォローアップが非常に重要です。

それでもなお、問題社員が協調性を欠く言動を止めない場合には、けん責や減給といった懲戒処分を行う必要があります。これらの懲戒処分を付してもなお、改善が見られない場合には、さらに重い懲戒処分である停職処分の実施も検討します。ただし、懲戒処分を行なう場合でも、並行して社員との面談を実施し、問題点の指摘とその改善を求めるように努めてください。

退職勧奨を行う

企業から対象社員に対する面談、厳重注意及び懲戒処分を重ねても、協調性を欠く言動が止まない場合には、退職勧奨を試みます。後述するとおり、協調性欠如を理由とした解雇処分には慎重にならざるを得ないため、安易に解雇することは回避します。

退職勧奨にあたっては、無計画に退職勧奨を実施することは避けて、事前に対象社員の反論なども踏まえた面談シナリオを作成して、ロールプレイを実施することが望ましいでしょう。また、退職勧奨に応じやすくするために、複数の退職条件を検討しておくことも必要となります。

また、退職勧奨の面談においては、退職強要となるような威迫的な言動をしたり、長時間・大人数による面談方法は、違法な退職強要と指摘されるおそれがあるため、注意しましょう。

退職勧奨を行った結果、対象社員が退職に応じる場合には、退職後に退職条件に関するトラブルを避けるために必ず退職合意書を作成します。

協調性のない社員に対する間違った対応

協調性に欠ける部下への対応は、企業にとって大きな課題です。しかし、焦りや感情的な判断から、意図せず状況を悪化させてしまう「間違った対応」をしてしまうケースも少なくありません。

以下では、協調性の欠く社員に対する間違った対応を紹介します。

大勢の前で叱責したり人格を否定したりする

協調性に課題がある部下への指導であったとしても、大勢の前で叱責する行為は決して行うべきではありません。こうした行為は、部下の羞恥心を煽り、反発心を招くため、指導内容を素直に受け入れる姿勢を阻害し、かえって逆効果となります。それだけでなく、このような行為は、パワーハラスメントと認定される可能性もあります。

加えて、「君はダメなんだ」「役立たず」「馬鹿」といった人格を否定する発言は、パワハラとなる可能性が高いだけでなく、うつ病などの精神的な不調を引き起こすとともに、不法行為による損害賠償責任を負うなど、重大な法的リスクを伴うことになります。また、こうした不適切な指導は、その他の従業員をも萎縮させ、モチベーションの低下にもつながります。

問題行動を見て見ぬふりをして放置する

協調性に欠ける社員の問題行動を見て見ぬふりをして放置することは、一時的な解決策どころか、状況をさらに悪化させる恐れがあります。

その他の従業員は、問題社員を放置する会社の対応に強い不満や不信感を抱くようになり、会社に対する忠誠心が著しく低下するでしょう。その結果、職場全体の規律が乱れ、「ルールを守らなくても許される」という雰囲気が蔓延し、他の従業員の士気も低下します。結果として、優秀な社員の離職を引き起こすことになり、全社的な生産性の低下を招きます。

このような事態を避けるためにも、問題社員を放置することなく、早期に適切な対応をとることが、組織の健全性を保つ上で極めて重要です。

いきなり解雇処分をする

「協調性がない」という理由のみで社員をいきなり解雇することは、労働契約法第16条で定められている「解雇権濫用の法理」に抵触するなど、法的リスクが非常に高い対応です。解雇は、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない場合は無効と判断されるためです。単に協調性が欠如しているという抽象的・主観的な理由だけでは、この解雇の要件を満たすのは難しく、不当解雇と判断される可能性が高いでしょう。

そのため、企業側は、従業員を解雇するまでに、解雇を回避するための努力を尽くすことが不可欠です。

具体的には、以下の段階的な対応が求められます。

・十分な指導や教育
・業務内容の変更や配置転換
・問題行動に対する複数回の注意指導
・文書による警告
・必要に応じた懲戒処分

これらの手順を踏まず、改善の機会を与えずに解雇した場合、不当解雇と判断される可能性が非常に高まります。

不当解雇と判断された場合、解雇処分から解決するまでの給与の合計額に加えて、合意退職するための解決金や慰謝料といった経済的な負担が生じるリスクがあります。また、労働審判や労働訴訟に巻き込まれることに伴う時間的・労力的な負担が生じるだけでなく、弁護士費用の負担も生じることもあるでしょう。さらには、不当解雇をしたことで企業のイメージ低下や社会的な信頼失墜にもつながりかねません。

そのため、解雇は従業員への最終手段として、あらゆる法的側面を考慮し、極めて慎重な判断が求められる対応です。

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協調性がないことを理由に解雇できるのか?

先ほども解説したように「協調性がない」という主観的抽象的な理由だけで従業員を解雇することは、不当解雇と判断されるリスクが極めて高いといえるでしょう。

解雇における「客観的に合理的な理由」とは、労働契約を解除するに値する具体的な労働契約違反が存在することを指します。また、「社会通念上の相当性」とは、解雇処分が、その具体的な状況に照らして重すぎないといえるかを判断する基準となります。

協調性の欠如を理由に解雇する場合には、会社側が再三にわたる指導や注意、配置転換といった改善努力を尽くしたにもかかわらず、全く改善が見られなかったという状況が必要となります。そのためには、協調性欠如を裏付ける客観的な資料の確保が極めて重要です。

  • 注意書
  • 誓約書
  • 懲戒処分通知書
  • 面談記録
  • 業務日報

これらの解雇回避の努力を怠った解雇は不当解雇と判断され、労働者から地位確認や未払賃金、慰謝料請求といった訴訟を起こされるリスクに直面します。解雇は労働者にとって最も重い処分であるため、専門家である弁護士に事前に相談し、慎重な対応を心がけましょう。

まとめ:粘り強いコミュニケーションで、社員と組織の成長を促そう

本記事では、協調性に課題を持つ社員が組織に与える影響、その行動の背景にある原因、そして具体的な対処法について解説しました。協調性の欠如は、放置すればチーム全体の生産性低下や従業員のモチベーションダウン、さらには離職リスクへと繋がりかねません。

そのため、協調性が欠如する問題社員を放置することはせずに、計画的な視点を持った対応を心がけることが求められます。他方で、解雇回避の努力を尽くすことなく早計に解雇処分をすることは控えなくてはなりません。

協調性に課題を持つ社員を抱えている場合には、管理職が1人で抱え込むのではなく、専門家である弁護士に相談することも考えてみてください。

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